表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/193

第131話 お(義)姉ちゃんの代わりに?

「な、なにあれ!」


 扉が開くと丸くてブヨブヨした物が居た。何処かで見たような……


「スライム……でしょうか」

「あ、もしかして……あれがエイルさん?」

「まさか!」

「でもデイビーさんはああなってたでしょ。だったらエイルさんだって……」

「それはそうかもしれませんが。ルイエさん、聞こえますか? ルイエさん! ……返事がありません。ここに居ないのでしょうか」

「エイルさんがこんななのに、ルイエさんがこっちに来るかな」

「なおさら来ると思いますよ。その気持ち、私には分かります。時子さんには分かりませんか?」

「私は……」


 先輩の顔をした原初を見たとき、私には絶望と拒絶しかなかった。

 あれが先輩だなんて受け入れられなかった。信じたくなかった。

 先輩だと思っていたモナカも拒絶してしまった。


「私には……分からないのかも知れない」

「そうですか。私はマスターがあんな姿になっても、一緒に居たいです。時子は違うんですね」

「そう……なのかな。分からないよ」

「時子さん、避けて!」

「えっ、きゃっ」


 なに、触手? 私を捕まえようとしたの?


「ねぇお義姉ちゃん。あのスライムの中にあるの、服かな」

「ボロボロですが、そのようですね。小さな白い物は骨なのでは?」

「捕まったらヤバい……よね」

「そうですね。捕まらないで下さい」

「燃やしたら……マズいかな」

「エイルさんを……ですか?」

「スライム!」

「ですから、エイルさんですよね」

「本当にエイルさんなの? エイルさんが誰かを食べちゃったってこと?」

「……かも知れません」

「誰かって誰かな。まさか……」

「……え? 嘘……ですよね」

「でも、モナカもここに居るはずよね。そこにこんな姿になったエイ――」

「違いますっ! これはエイルさんじゃありませんっ!」

「さっきと言っていることが違う!」

「エイルさんがマスターを食べるわけないじゃ……」

「お義姉ちゃん?」


 アイコンの表情が変わるなんて珍しい。

 眉をひそめて凄く目に力が入っているわ。

 口元もキュッとしていて歯を食いしばっているみたい。


「自分だけの物にするために……血肉と同化するために……2人のDNAを混ぜて子を生すために?! こんな姿になってまでマスターを欲しがったの?」

「お、お義姉ちゃん? 落ち着いて」

「これが落ち着いてられますか! ああ、マスター! 変わり果てた姿になってしまって」

「まだそうと決まったわけじゃ……」

「いいえ、そうに決まってますっ。なんて羨ましい……じゃなくて、なんて淫靡(いんび)なことをしているんですかっ」


 どう見ても淫靡(いんび)なことをしているようには見えないけど……それが羨ましい?


「そこを替わり……じゃなくて、えーと、えーと……」

「だから落ち着いて。ね?」

「私、どうしたら……あああああ、マスター…………変わり果てた姿になってしまって…………ね、時子さん。私、どうしたらいいんですか?」

「え?」

「エイルさんを殺せばいいんですか?」

「ええっ?!」

「でも、あの中にはマスターのDNAが混ざっていて……でも復元は無理で……でも新たな個体として産まれてくればそれはマスターの子ということで……でもそれはエイルさんとの子であって時子さんとの子じゃなくて……」

「なんで私?!」

「エイルさんに先を越されて悔しくないんですか? どうしてあの日の夜、子作りしておかなかったんですかっ!」

()めてーっ! 思い出したくないっ!」


 うう、恥ずかしいよぉ。


「エイルさんに先を越されたんですよ。恥ずかしいとか言ってる場合じゃないんですよっ。今からでも遅くないわ。時子さん、DNAを採取しましょう」

「ど、どういう意味?」

「エイルさん……いいえ、あのスライムをぶっ倒してマスターのDNAを取り返して、時子さんに着床させましょう」

「なに言っているの?!」

「私の代わりにマスターの子を生して下さいって言ってるんですっ」


 お義姉ちゃんの代わりに?! それはお姉ちゃんの代わりって事でもあるの?

 代わりなんかじゃなくても、私は……


「焼き殺してはいけません。マスターの子種まで死滅してしまいますから」

「もう死滅しているわよっ」

「問題ありません。DNAさえ採取できれば精子くらい再生できます。幸い、スライムは大人しくしています。採取は容易です」


 容易って……確かにスライムは最初に襲って以来、ずっと大人しくしていて動きが無いわ。だからといってこっちから仕掛けたら襲ってくるんじゃないの?


「そうだ。着床できなかったときのために冷凍保存しましょう。それがいい。さあ時子さん、やっておしまいっ!」


 ダメだ。完全に我を見失っている。

 そもそも本当にエイルさん?

 本当にモナカは食べられちゃったの?

 どうやって確認すればいいのよっ!

次回、チュウチュウとカサカサ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ