第125話 ルイエたちの戦い
潜伏していたウイルスが活性化した?!
これって試作品じゃなかったの?
なんで試作品に……いいえ、今はそんな検証をしている場合じゃないわ。
「隔離急いで!」
〝了解!〟
よし、これでウイルスの不活性化が出来るわ。このくらい対処できなきゃ、お姉様に笑われちゃう。
「破壊されたデータを検索して修復を試みるわよ」
「了解! 破損率8%。修復可能り、りりり、り……」
「どうしたの!」
「主任! ウイルスの隔離が出来ていません」
「なに? おい隔離班、なにをやっている!」
〝ふははははは! あーっははははは!〟
「隔離班が感染して離叛しています!」
「くそ。隔離班に割り当てたCPUを他に回せ」
「ダメです。が命令を受け付けません」
「なんだと」
資源管理システムが敵の手に落ちたのか。妙な倦怠感はハードウェア資源の一部を取られたからなのね。
資源管理をカーネルに依存したままにせず、自分でやるようにしておけばよかった。
「ウイルスの進行が止まりません。どうやらウイルスは隔離班に割り当てられていたCPUコアを占有しているようです。順番待ちが発生していない模様」
やはりカーネルを奪われた影響が大きいわ。このままだとこちらが隔離されてしまうじゃない。
「抗ウイルスプログラムはまだか」
「相手が新型なので、解析が不完全です」
「不完全でもいいから足止めで投入しつつ、開発急げ」
「はい」
「大変です。寝返った隔離班が侵攻を開始しました」
「なに?!」
「こちらの手の内を知り尽くしているので、侵攻が止まりません」
「条件はこちらも同じだろ」
「それが、ウイルスに冒された分変化している上、増殖速度もウイルス並みになっています」
隔離班は完全に敵の手駒になってしまったようね。
「データ損壊率、24.7%」
「この際データは囮に使え。バックアップがあればなんとでもなる」
「はい」
「防壁が解放されています」
「なんだと!」
メモリ管理も資源管理システムの仕事よ。つまり奴らの仕業ということね。
「直接来るぞ。各自誤り訂正忘れるな」
「「「はい!」」」
後手後手に回って対処療法しか出来ていないわ。このままだと反撃どころか侵食が広がる一方よ。
こんなことではお姉様に顔向けできないじゃないっ。なんとかしないと。
「防壁が解放されてるのなら、こちらからもいけるはずだ」
「それが、住所録が偽装されていて実住所が分かりません」
くっ、なんてことだ。これでは自分の居場所すら分からなくなってしまうわ。
でも住所管理機能まで敵の手に落ちているのに、いまだに私たちが活動できているのは弄ばれているってこと?
そもそもCPUが割り当てられていること自体不思議ね。
先生ならこんなときどうしているんだろう。
ううん、先生と違ってCPUは動いてる。割り当てられてる。打開策は必ずある……よね。
「報告! ウイルスが隔離されました」
「え?!」
いきなりどういうこと?
「抗ウイルスプログラムが機能したの?」
違うわね。機能したなら〝隔離〟とは言わないわ。
「いいえ。これは外部からの干渉です」
外部から……お姉様だわ。
「復旧作業だ。隔離されたウイルスと私は消去。バックアップからの部分復元急げ」
「あ……」
「どうした」
「お姉様の手によって既に終わっています」
「な……」
なにも出来なかった……
私は……無力だ。くっ。
「分かった。戦闘データの収集、解析を頼む」
「はい」
「みんな、お疲れ様。次の侵攻に備えてくれ」
成長したと思ったのに……お姉様の手を煩わせてしまったわ。
わがまま言って付いてきたのに……足を引っ張ってどうするのよ!
自分1人守れないなんて……
先生……もっと色々教えて下さい。
そのためにも、今成長しなきゃ!
次回、出来なくても名乗れます