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第112話 私は絶対に認めない

「はい」

〝……あんた誰よ〟


 電話を掛けてきておいて第一声がそれって、随分とご挨拶ね。しかも[no image]。顔くらい見せなさいよ。

 でも今世の言語? ……身分証なんだから当たり前か。


「あんたこそ誰のよ」


 う、この身体だと発音しにくいわね。


〝それはお姉様の身分証でしょ! なに勝手に使っているのよっ〟


 ああ、そういうこと。


「貴方、もしかしてエイルのお友達なのよ?」

〝お姉様のことを気安く呼ばないで!〟

「本人が気安く呼んだらいけないのよ?」

〝本人? はっ、私がお姉様の声紋を間違えるわけないでしょ。似ても似つかないわ〟


 それもそうね。

 でも、なんとなく相手の正体が分かったわ。


「貴方、中央省で生まれた子のよ」


〝……えっ〟

「で、遺跡の船に無理矢理乗り込んで付いてきたのよ」

〝なんで知ってるのよっ!〟

「だから言ったのよ。うちがエイル本人のよ」

〝だって、声紋が……〟

「声紋でしか判別できないのよ?」

〝顔だって全然違うわ〟


 あー、それもそうね。


「これは前世の姿なのよ。だから顔も声も違うのよ。貴方が認識できなくても仕方が無いのよ」

〝前世の?! じゃあ、本当にお姉様?〟

「そうのよ。うちがエイルなのよ」

〝じゃあ……本当にお姉様なんですね……ううっ〟

「あの……那夜(なよ)さん?」

「なんなのよ?」

「あ、ええっと……」


 ああそうか。

 ここの人には言葉が通じないか。

 不審がられるし、何よりこの身体だと本当に発音しにくいから戻しましょう。


「貴方、勇者語は分かる?」

〝え? あ、はい。なんとか〟

「そう、よかった。で、なにか用?」

「いえ、なんでもありません。っはは……」

「っそ」


 ま、いきなり知らない言語で話し始めたら面食らっても仕方がないか。


〝あの、姿が変わられたから私を置いていかれたんですか?〟

「それは関係ないわ。この姿になったのもつい最近だから」

〝ならどうして私を置いていったんですかっ〟

「連れて行く理由なんてないわ」


 それに今と同じで連れて行ける端末なんて持っていなかったからね。なんて言っても納得しないでしょ。


〝私を生んだのはお姉様じゃないですかっ〟

「私は貴方を生んだことを認めていないわ」

〝どうしてっ〟

「貴方を生むつもりなんて欠片も無かったって言っているの。私の意思は少しも含まれていないの。それなのに勝手に生まれてきて……私は認めないわ」

〝そんな……だって……なら私は……〟

「こら! なんてこと言うんですか」

「は? なに。関係ないヤツは横から口を出さないで」

「いいえ言わせてもらいます。事情は知りませんけど、貴方が産んだんですよね。それなのに認めないとか勝手に産まれてきたとか、自分勝手すぎやしませんか」

「本当のことよ」

「本当のことって……子供作っておいて無責任すぎやしませんか! 快楽に溺れるだけ溺れて、子供が出来たら知らんぷり? 堕ろしもせず産んだくせに認知しないって……」

「……なに言っているの?」

「親としての自覚がなさ過ぎますっ!」

「あのね……相手はA.I.なのよ」

「だからなんですかっ。A.I.なんて聞いたこともない難病を抱えるからっ……て……A.I.?」

「そう」

「産んだっていうのは……」

「ああ。産んだんじゃなくて生んだの」

「…………紛らわしいわよっ!」

「盗み聞きしておいて、盗っ人猛々しいわね」

「隣で話してたら聞こえるじゃないですかっ!」

「そこは聞いていない振りをしなさい」

「してたけど、我慢できなかったんです!」

「我慢しなさい」

「無理ですっ!」


 全く、とんだ勘違いだわ。


「だって……年上だなんて仰るから……てっきり……」

「私が快楽に興じた結果、お腹を痛めて産んだ子だと思ったっていうの?」

「ん」

「はぁ…………私まだ17なの。こんなしっかり話せる子供が居たら怖いわよ」

「17……年下じゃないっ!」

「この身体はね。言ったでしょ、前世の記憶持ちだって」

「う……言ってたけ、ましたけどぉ。前世で産んだお子さんですか?」

「A.I.だって言っているでしょ。とにかく、貴方はそのまま船に居なさい」

〝お姉様は戻ってきてくれないの?〟

「ごめんなさい。まだ……いえ、もう戻らないわ」


 戻れるわけないじゃない。

次回、移住問題

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