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第110話 よく覚えておきなさい

 男の名前なんて今はどうでもいいのよ。

 そもそも無意識を意識することと悔やむことに繋がりなんかないわ。


「なんの話よ」

「もう分かってるんだろ」


 なにを分かっているっていうの。なにも分からないわよ。


「目を背けるな。現実を受け止めろ」

「やめてよ。そんな、まるで私があの男を殺したみたいなこと言わないで」


 無意識に暴発した魔法であの男を私が? そう言いたいの?


那夜(なよ)


 やめて! そんな目で見ないでっ。

 ……薄々は分かっていたわ。ううん、最初から分かっていた。

 あれだけ無意識に魔法を使いまくっていたのよ。こんな大きな魔法に気づけないはずが無い。

 でも気づいていて、気づいていない振りをしていた。だって、気づいてしまったらまた使えなくなるかもしれないから。だから気づかない振りをしていた。

 その結果、ひとりの人を殺してしまった。

 認めたくなかった。認識したくなかった。

 私が……この手で……直接……人を……うっ。


「泣いてる暇は無い。それに目の前を見ろ。あの男は生きている。問題ない」

「なっ、泣いてなんか……」

「まぁいい。それを早く自覚するんだな。出来るようになれば、暴発もしなくなる」


 自覚する?

 なにを?


「なにをゴチャゴチャ話してるのです」

「別に。貴方は死んでいない。そういうこと?」

「貴方、やはりおつむが足りないようですね。目の前の私が死んでるように見えるのです?」


 落ち着け、私。一々腹を立てるような相手じゃない。殺す価値も無い男だ。

 平常心……平常心……深呼吸、深呼吸。お腹と胸を大きく膨らませて……ゆっくりと吐き出す……よし。


「そうね。生きているわね。なら早く足りない物を寄越しなさい」

「それは貴方のおつむ――」

「以外の話よ」


 すぅー…………はぁー…………。


「……仕方ないですね」


 男はゆっくり歩き出して作業台に近づくと、無造作に置かれた蓋のない小箱から小さな石を取り出し、私に放り投げて寄越した。

 これ……まだ血が付いている。作業台でバラバラにされた物から取り出したヤツかしら。

 ん? 何処かで見たような鉱石ね。ああ、デニスさんに頂いた物に似ているわ。あれよりは小さいけれど、同じ物かしら。


「残りは自分で見つけるのです」

「他の物も寄越しなさい」

「貴方……やはりおつむが弱いのです。ここには無いと私は言ったのです」

「あっそ。ならちょっとこの端末借りるわよ」

「無駄です。それは私以外には――」

「使えないんでしょ。問題ないわ。使えているから」

「?! 何故です! 何故使えるのです! 部屋の扉もそうなのです。貴方……一体何者なのです」

「ふふっ、貴方の足りないおつむで考えたらどうなのです?」

「な、な、な……」

「あっはははは、ありがとう。足りない物が分かったわ」

「答えるのです」

「あら、貴方の言う探究って、本人に聞くことなのかしら。自分で調べて突き止めるものではないのね」

「本人に聞くことも立派な調査なのです」

「あっそ。ここのセキュリティがザルだからよ」

「どういうことです」

「ふっ。お邪魔したわ。さようなら」

「待つのです!」


 もう待つ必要なんて無い。


「そうそう。その端末、私以外は使えないから気をつけてね」

「なんです?! ああっ! どういうことです!」


 ふふっ、いい気味。

 後で元に戻してあげるから、今はそれで遊んでいなさい。


「戻るのか?」

「ええ。もうここに用はないわ」

「そうか」

「帰るの?」

「だそうだ」

「モタモタしてたら置いていくわよ」

「…………」

「父さん?」

「いや。よく覚えておきなさい」

「……ええ。あの2人を殺さないよう気をつけるわ」

「……そうだな」


 なんか煮え切らない感じね。

 それもそうか。〝今は殺さない〟というだけで、明日明後日には……

 考えるだけ無駄ね。

 さっさと外に出ましょう。残りの部品を探さなくちゃ。

 ………………

 …………

 ……



「嘘……このアクセスの仕方……お姉様……なの?」

次回、最初から?!

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