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第105話 契約完了

「おい! あの女、教祖様の女だぞ」


 教祖様の女?!


「教祖って、何処の宗教団体よ」

「さあ? 聞いたことない名前だった」

「胡散臭いわね。大丈夫なの?」

「教祖様の女なんだから、信者から巻き上げた金をたんまり持ってるだろ」

「バカッ、聞こえたらどうするの!」


 聞こえていません、聞いていません。


「大丈夫だって」


 大丈夫じゃありませんっ。


「それに契約が終われば俺たちには関係の無い話だ」

「そうだけど。でもそういうことなら法人契約なんじゃない?」

「なるほど! そうか」


 だ、大丈夫なのかな。お義姉ちゃんのアイコンは口パクだけで表情に変化が無いから不安になるわ。

 というか、教祖って誰なのかしら。やっぱりエイルさん?


「お待たせしました。法人契約ということで宜しいでしょうか」

『個人契約よ』

「個人契約でお願いします」

「個人! ですか……少々お待ちください」


 またぁ?!


「法人じゃなくて個人だって!」

「一々報告に来ないで!」

「だってよ」

「いいから仕事に専念して」

「はぁ……」


 お願いだから聞こえないように話して。


「お待たせしました。こちらが審査書類になります」

「はい」

「こちら、私が丸で囲ったところにご記入下さい」

「はい」


 囲ったところね。……どうやって書くのかしら。これ、紙じゃないわよね。


『お義姉ちゃん』

『時子さんは書く振りをして下さい。後は私がなんとかします』

『はい』


 えっと、書く振り? 書くもの書くもの……ないんだけど。


『指で書く振りをして!』

『はいっ!』


 指で? 指で書くの、まだ慣れていないのよね。


「えっ?」


 なんか店員さんが驚いているんですけど。書き方間違えているのかな。うう……


『いいわよ。提出して』

「書き終わりました」

「はい……ありがとう……ございます……」


 やっぱりなんか不信感をもたれている気がするわ。


「それでは審査致しますので、少々お待ち下さい」


 首をひねりながら作業しないで。

 心配だな……

 お姉ちゃんに聞きたいのに話しかけられないみたいだし……待つしかないけど、居心地が悪いわ。


「お待たせ致しました。審査は問題なく通りました」


 ほっ。よかった。


「こちらが契約書になります。私が線を引きながら読み上げますので、一緒にご確認下さい」

「はい」

「それでは…………」


 結構面倒くさいのね。

 あのときこんなことしていたかな。もう覚えていないや。


「……以上となります。ご不明な点はございますか」


 ほぼ全部です! とは言えないわよねぇ。


「はい、大丈夫……だと思います」

「ありがとうございます。端末はこちらで宜しいでしょうか。傷なども無いかご確認下さい」

「はい」


 傷……なさそうね。


「はい、大丈夫です」

「ありがとうございます。それでは………………お支払いをお願い致します」


 なんか、凄く緊張されているみたい。緊張したいのは私の方よ。


「はい」


 支払いといっても……どうすればいいのかな。


『掌を上にして相手に見せて』


 身分証のときと一緒か。なんか手相占いをしてもらっている気分だわ。

 でも幾らなんだろう。えーと、一、十、百、千、万、十万……百……万?!

 こんな大金何処にあるっていうのよっ!


「うわ……マジで払えるんだ」


 それ、目の前で言う?!

 というか、ちゃんと払えたんだ。


「あっ、大変失礼致しました。えーと……い、以上で御契約完了となります。そのままお持ちしますか?」

「はい」

「では箱などは袋に入れてお渡しします。本日はありがとうございました」

「ありがとうございました。失礼します」

「おい! 本当に契約しやがったぞ」

「ウソ! 払えたの?!」


 だから本人に聞こえないようにやってよ。私が立ち上がった瞬間に後ろへ振り向いて叫ぶなんて……

 聞こえない振りをする私の身にもなってよ。はぁ……

 でも、なんとかなったみたいね。

 それにしてもあんな大金……何処にあったのかしら。まさかみんなで貯めた積立金に手を付けたんじゃ……んー、減ってないみたいね。


『安心して。積立金に手を付けるようなバカしないわよ』

『じゃあ何処からこんな大金を?』

『造幣局にクラッキング(融資)して頂きました』

『融資?』

『時子さんが気にすることではありません』

『……借金とかじゃ』

『ありませんので、心配ご無用です』

『そ、そうなんだ。ふーん?』


 融資って、なんの?

 しかも銀行じゃなくて造幣局?


『それではトラップを仕掛けてきますので、しばらく留守にします。ご用の際はお呼び下さい』

『私はなにをしていればいいの?』

『そうですね。捕まらないように隠れていて下さい』

『ええっ?!』

『それでは』

『待って! 捕まらないようにって……』


 また[出張中]の看板が出ているわ。

 これじゃ呼んでも来ないんじゃない?

 はぁ……どうしていようかな。

 ……お腹空いたな。

次回、当然こいつのターンになるわけで……

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