転生したらダンゴムシだった件、どうやら俺以外にも転生者がいるみたいだったので、うまくコミュニケーションをとって強くなった話 その7
飛んできたミツガシラに押し飛ばされたユリカが倒れ、詠唱は中断された。
彼女は意識が朦朧となりながらも、激痛に耐えていた。
マグナはその光景に激怒し、瞳が赤く光る。
マグナはユリカを何としても助けるという強い決意を胸に、力を身体の奥底から呼び起こす。
その時、マグナの身体から黄金色の粒子が湧き上がり始めた。
それらの粒子は、まるでマグナの怒りを形にしたかのように、輝きを増し、彼の手に持つナイフへ集まり始めた。
「お前がユリカを傷つけたのかッ!!」
怒りに打ち震えるマグナの声が火炎と戦慄が混ざり合う森を埋め尽くした。
その声の力強さが、ナイフに集結した黄金色の粒子をさらに強く輝かせた。
刹那、マグナはナイフを振りかぶった。
その刃は闇夜を切り裂き、暗闇を貫くような輝きを放った。
彼は全てをナイフに託し、その刃をユリカの上で蠢くミツガシラに向けて振り下ろした。
「イグニッション!!」
マグナは割れるような声で叫んだ。
その言葉と共に、ミツガシラの体表と接触したナイフの切っ先がナイフから黄金色の粒子が広がり空間を埋め尽くした。
瞬間、ミツガシラの表面で巨大な爆発が生じた。
爆発の熱波は四方八方に広がり、その強さが周囲の空間を揺るがせるほどだった。
しかしその強大な力に、マグナのナイフは耐えきれず、刃が2つに折れ、折れた刃の破片がマグナの足元に散らばった。
一方、衝撃によりミツガシラもよろめいていた。
その堅い殻には明らかにひびが入っており、動きが一瞬遅くなっていた。
――ギチギチ
見るからに耐えきれないほどの衝撃に、ユリカを覆い隠していたミツガシラが弱々しい鳴き声を上げた。
「こいつらの殻どうなっているんな。分厚すぎるだろ。ユリカからどけッ!!」
その言葉が喉から絞り出されるように放たれた後、マグナは自らの拳を振り上げた。
しかしながら、ミツガシラは自身の身を守るために俊敏に後ろへと跳び退いた。
その動きは、ただ身を守るだけでなく、次の攻撃への布石のように感じられた。
「マグナ、落ち着いて。私たちの力じゃ、あの怪物たちに勝てないわ。あなたは早くユリカを抱えて。」
普段より冷静さを増したヴァレリアの声が、マグナの意識を現実へと引き戻す。
「安心して、目くらましくらいなら打ってあげるから。逃げるわよッ――」
それは、マグナ達を勇気づけるために発したヴァレリアの言葉だった。
そして、その言葉の後、ヴァレリアの杖が風を切り裂く音と共に高く舞い上がった。
しかしその瞬間を狙いすましたように、上空から突如として、3匹目のミツガシラが落ちてきたのだ。
まるで闇夜から突然現れた猛禽の如く、狡猾にヴァレリアを狙ったその一撃は緻密に計算された罠のようだった。
「ヴァレリアッ!!」
――ギーギ ギ ギーギーギ ギギギギ ギ ギーギーギー ギー
「……この、……なんてことを。」
悔しさに声を滲ませマグナが呟く。
それにこたえるようにミツガシラ達が不穏な鳴き声をあげた。
――ギギーギギ ギ ギー ギギギ,ギギーギギ ギ ギー ギーギ ギーギー ギギーギギギ
――ギ ギー,ギ ギギーギギ ギギーギギ,ギーギー ギーギ ギー,ギ ギー ギー ギ ギギーギギ ギーギ
そして一斉にマグナへと襲い掛かった。
彼らの動きは恐ろしいほどに協調しており、それはまるで一体の生物が3つの分身を操っているかのようだった。
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