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転生したらダンゴムシだった件、どうやら俺以外にも転生者がいるみたいだったので、うまくコミュニケーションをとって強くなった話 その2

その少年はアオの近くに落ち着いて座り込み、彼を心配そうに見つめた。

「おじさん、大丈夫か?」

少年は穏やかな声で問いかけた。

その問いにアオは、まるで雷に打たれたかのような驚きの表情を見せた。

「……なにッ!? おじさんだと?」

アオは驚きながらも、少年を見つめていた。

その表情は半分は戸惑い、半分は軽い苦笑いで満たされていた。


そして、その顔から少しだけ、いつもの落ち着いた笑顔が戻ってきた。

「何処へ行っていたのですかな、えっと確か……。」

アオは少年と面識があったのだ。

そしてその名前を思い出すように指先を額に置いて、トントンと何度もたたくのだった。

「なんだ忘れちゃったのか。俺の名前はマグナだぜ。おっさんお腹空いてるだろ? 青い顔してるもんなあ、だから取ってきてやったんだ。」


そう言って、マグナは、腰に隠していた手を開いて見せた。

そこには、人の顔ほどに大きい甲虫が握られていた。

その甲虫はまるでダンゴムシに似ていたが、その大きさは比べ物にならなかった。

「こいつはミツガシラって言ってな、焼いて食うとうまいんだぜ。」


「なるほど、少年。食料を取るために森へ入っていたというわけか。ただ、残念だが、ここに火を起こす道具など見当たらないがね。」

アオはそう呟いた。

「何を言っているんだよ、おっさん。魔法があるじゃねぇか。」

「……魔法?」

聞きなれない言葉に、アオは顔をしかめた。

マグナは近くの森から幾つかの枯れ木を手際良く集め、1か所に積み上げると、地面に転がっていた小さな石を手に取り、じっと枯れ木を見つめた。

そして、深い呼吸を一つ吐いた後、マグナはその石を握った手をゆっくりと木の方へ向ける。

その瞬間、マグナの身体を包むように、数えきれないほどの黄金色の粒子が浮かび上がり、星屑のような光を放ち始める。

「イグニッション!!」

マグナがそう叫んだ瞬間、黄金色の粒子は石に集積し、石の表面で小さな爆発が起こった。

「……石が吹飛びましたな。」

粉々に砕けた石ころを見つめ、アオは、そうつぶやいた。


「やっぱりだめか、爆裂系の魔法じゃ火がつかねえや。」

頭をかきながら、マグナは言った。

「でも大丈夫、きっと今の音を聞いて、仲間が来てくれるから。」

その言葉が終わると、森の奥から白い光が近づいてくるのが見えた。

その光は次第に強く、大きくなり、最後には二人の少女となって現れた。


「あっ、いたいた。ちょっとレディーを置いてどこ行っていたのよ。」

「マグナ君さがしたのよ。」

マグナは嬉しそうな表情を浮かべ、二人の少女を指差した。

「おじさん、これが俺の仲間のユリカとヴァレリアだ。」


マグナの紹介を受けて、アオはユリカとヴァレリアを見つめた。


ユリカと言われる少女は、純白の魔法使いの服装に身を包んでいて、身長と同じくらいの長さの素朴な木製の杖を手に持っていた。

純粋で明るい彼女の魔法使いらしさが、どこか異国の姫君を彷彿とさせ、その澄んだ瞳は人々を魅了する。

彼女の笑顔は、誰もが心を奪われるほどの輝きを放っていた。


ヴァレリアは、黒を基調とした魔法使いの服装に身を包んでおり、彼女の手には短めの杖が握られていた。

その杖は彼女の謎めいた美しさと鋭い直感を引き立て、その姿は月明かりに輝く黒猫のように、幼いながらも独特の色気を放っていた。


その後、マグナはヴァレリアの後ろに回り込んだ。

マグナの手が少女の背中に軽く触れると、ヴァレリアは少し驚いたように体を硬くした。

「ちょっと、バカッ!! 気安く触らないでよッ!!」

「まぁ、そういうなって」

マグナはそう言って、優しく、彼女を前に押し出した。

「おい、ヴァレリア。枯れ木に火をつけてくれ。俺の爆裂系統の魔法じゃ駄目だったんだ。」

マグナが悔しそうにそう言うと、ヴァレリアは少し戸惑った表情を浮かべながら口を開く。

「あなた、また失敗したの? 仕方ないわねぇ。見てなさい。火はこうやって起こすのよッ!!」

「ヴァレリアちゃん頑張って」

彼女の目の前には、丁度マグナが集めてきた枯れ木の束が置いてあった。

彼女は深呼吸をし、手に持っていた杖を枯れ木へ向ける。

「炎竜の息吹よ、この漆黒の闇に、希望の煌めきを与えよ」

そして、彼女の杖から細かな光が放たれた。

そのきらめきは空中を蛇のようにうねり、ゆっくりと枯れ木に向かって舞っていった。

やがて、ヴァレリアの放った光が枯れ木に触れると、ほのかに赤く燃え上がった。

その炎は小さく、ひそかに燃え続け、やがて枯れ木全体を照らし出した。

「なんと……。」

アオは驚愕の声をあげた。

彼の表情は、初めて魔法を見た子供のように純粋な驚きで満ちていた。

一方、マグナは満足げにヴァレリアを見つめていた。

「さすが、ヴァレリアだぜ。」

そう言って、彼は彼女の肩を軽くたたいた。

「だから、気安く触らないでって!!」

ヴァレリアは少し恥ずかしそうに微笑みならがそういった。

狼と雨公開中

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1話ではこの主人公のアオも登場します。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。


もし少しでも内容が面白かった、続きが気になると感じていただけましたら、ブックマークや、画面下部の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に変えていただければと思います。


それらの評価は、私の創作活動への大きな励みとなります。

どんな小さな支援も感謝します、頂いた分だけ作品で返せるように引き続き努力していきます。


これからもよろしくお願いします。


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