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海岸、カシオペア、地底より来たりし鍵徒  作者: ビートたかし(TAKASH)
6/6

ONE MORE EXTRA STAGE


「あれ以来脳が2つに千切れちまってな。左目(左脳)で見るスクラッチには左半身では反応できなくなったんだ」

「で、それから一体どうなったんだ?」

凶橋キョウバシは答える。

「左脳が司るは右半身。スクラッチは右手で取るしかない、ってことだ」

「なるほど・・・ね。」

「ずいぶん昔の話だがな」




―――必死に筐体を見ながら考える。


気づいたことは3つ。


1つ、俺は1Pのプレイヤーだ。当然皿は譜面の一番左のレーンに降ってくる。

しかし左にノーツが来ると勝手に右手が皿を取ろうと反応してしまう。


2つ、左右の目は全く独立に譜面を見ている。

つまりリズムの異なる皿複合も左右で釣られることなく叩ける、ということだ。


3つ、自分の脳みそを次第にコントロールしつつあった俺が最後に気付いた点。

それは、 脳が"2つ"あることで俺自身の情報処理速度が格段に早くなっているということだった。

ノーツが降ってくるのがどんどんとスローに感じられた。



・・・俺は生まれ変わった。

さっそくのデビュー戦といこうか。



「「おい、そこの金髪ゴリラ、聞いてるか?いつも野次ばっかり飛ばしてるがテメェの実力なんざ本当は大したこと無いんだろ?」」

『ああン!?このジャガー様に音専スクール出身の雑魚が喧嘩を売ろうってのかァ!?』

「ここは暗黒殿。俺とビートで勝負バトルしろ」

『ヒャッハッハ!音専の落ちこぼれなんざに俺様が負けるかよ!!』


突然のビートバトルに盛り上がるオーディエンス達。俺は目を閉じ、筐体のパネルの上に足をしっかりと付けた。

心臓が筐体の振動に合わせて鼓動していた。

(これからこのジャガーとかいう男とその取り巻きを二度と見ないで済むかと思うと清清するぜ。)

心からそう思った。

俺は灼熱を選び、ジャガーは冥を選んだ。



1曲目の灼熱はジャガーにとってプロ時代から得意にしていた楽曲だ。

"3547"にとって音専時代は決して得意とは言えない曲だったが、、、。


ジャガーは突然のビートバトルにも全く動じずピカグレを重ねる。

(素人は俺のことを"八百長のジャガー"と呼ぶが・・・俺は勝ちを金で買ったことはない。勝ちが欲しい貧弱連中(スクールあがり)に星を売ってやって何が悪い?!)


だがしかし、反対の筐体を見た時には驚きを隠せなかった。


(コイツ・・・!右手でスクラッチ!?いつからこんな技を!?!しかもあの緑数字の速さは!!??)


「右手でスクラッチを、左手で鍵盤を。クロス・スクラッチとでもいえばいいのか?

生憎、俺はダブルプレイの経験はないが、一人和尚と呼んでくれても構わない。」



ジャガーの灼熱はAAA(3086)、3100に迫る高スコアと言えよう。

対する"3547"のスコアは・・・


「「「3307!!!???」」」


突然の大台スコアに騒然となるオーディエンス!


(ありえねえ、何が起きてやがる・・・!?)



続く冥はジャガー自身決して得意にしていた曲ではないが"3547"を動揺させるために選んだ曲だ。

(何年やってもアイツは鳥すら出せなかった楽曲・・・これでヤツの心を摘む・・・!)

ジャガーは3700overを叩き出す3714!ジャガー自身のアベレージを大きく上回る出来だったが・・・


"3547"は――― その日、"3872"となった。



―――俺は人生で初めて穴冥AAAを叩き出した。いや、3872を叩き出したのだ。自己ベストを伸ばしたのは3年ぶりのことだった。

『なッ・・・ こんなバカな・・・ 音専の落ちこぼれの癖に・・・』

「俺はもうかつての俺じゃない、ということだな」

『くッ、クソッ!覚えてやがれッ!!』


獲得デラーは6ケタに及んでいた。



皮肉な話だ。何年音専に居てもこれっぽっちも上達しなかった・・・

ビートステロイドを飲んで2週間で100万デラーを溜めることが出来た。

【100万デラー。確かに確認致しました。こちらが出口になります。】

「1か月ぶりの外だ・・・」


すると聞き覚えのある声の主がこちらへと向かってきた。

『よくここへ帰ってきた!3547!いや、今は"3872"と呼ぶべきか?私は君の帰還を心から祝福しよう!』

「こ、この声は神輝シンキ・・・!俺は地獄から這い上がった・・・!」

『私がキミをアングラ界に推薦してさしあげようというのです』

「お、おい、何の話だ、俺はもう解放されたはずじゃないのか。穴冥のスコアは3800を越えた。今ならランカーとして不自由なく食って行ける!」

『笑止千万!ビート・ステロイド使用者が地上でプレイ出来ると思ったか!?地上でプレイした瞬間、ギャラリー警察に逮捕されるのがオチだ。』

「な・・・なんだって・・・ こ、この野郎・・・ ハメやがったな・・・」

『蔵伊勢さん、"3872"をアングラ界のメンバーに加えること、異論ありませんね』


―――こうして3547こと"凶橋"は裏社会アングラビーマーの世界に身を投じることとなった。じきに凶橋は秘められたビテンシャル(ビート・ポテンシャル)を開花させアングラ七武海の一人となる。


地上とアングラ界への復讐を密かに誓う凶橋が、後に第三次ビートウォーズの引き金になることは、まだ蔵伊勢しか知らない・・・ 


海岸、カシオペア、地底より来たりし鍵徒  

fin.


B U T , T O B E A T C O N T I N U E D . . .




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