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海岸、カシオペア、地底より来たりし鍵徒  作者: ビートたかし(TAKASH)
3/6

3rd Stage "ZOO"

呆然と立ち尽くしていると一人の男が俺に声を掛けて来た。


「君が新入り?君、死ぬよ」

「な、何ですか、いきなり!」

「僕は須浜スハマ。どうせ神輝シンキは何も言わずにここに連れて来たんだろう。相変わらずだなぁ」

「神輝を知っているんですか!?俺はあの男に誘拐されてここに連れて来られたんだ!」

「ここに居る以上はどうやってここに来たかなんて関係ないさ。ここに居るのは何らかの理由で地上を追われて逃げてきた連中か、もしくは真性のビートマニアジャンキーたち。どいつもこいつも狂った連中ばかりだ。そういう連中ですら、ここでの生活に耐え切れずに発狂する、もしくは違法薬物ビート・ステロイドに手を出して狂うか、どちらかだ。気は確かに持てよ。」


その後、須浜は俺の言葉を無視しつつ、一方的に暗黒殿のルールを説明しはじめた。

暗黒殿に居るプレイヤーは一日1回、あの金網の中で1曲だけプレイする権利を持っているということ。

あの金網の中はどうやらどこかの好事家どもに生配信されているということ。

貰えるデラーの額はプレイのリザルトと、オーディエンスの沸かせ具合、配信の投げ銭で決定されているということ。

毎日、恐らくトウモロコシか小麦を粉末にした、生命が維持できる最低限の食料らしきものと水が配給されるということ。

デラーを稼いで追加の食料なりと交換しなければ、栄養失調で餓死するか精神に異常をきたすのは時間の問題であるということ・・・


須浜ははっきりと言った。

「上達しろ。さもなくば、死ぬぞ。」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、100万デラーなんて溜められる訳ないでしょう!?俺がここに連れて来られたのは何かの間違いなんだ!!」

俺の必死の言葉をよそに須浜はどこかへと消えた。



俺もプレイ待ちの列に並ぶことにした。

並んだ瞬間にちょうど交代したようで、列は3人待ちになった。

しかし、須浜の言葉が正しければ1人1曲で交代なのですぐ順番が来そうだと思った。金網の中に目をやる。

「あれ、あいつ、どこかで見たことあるような。」

誰だったか、とっさに思い出せないのだがどこかで見たことがある人物。


すると金網にしがみついていた金髪リーゼントの男が突然野次を飛ばし始めた。

「オラァァァ!うのとら!!テメェどんな面して暗黒殿に来やがったんだアァァァァー!?」

(そうだ、この男、音ゲー情報サイト"うのとらどっとこむ"の管理人だ!)

(PV稼ぎのために『新作のワンモア楽曲は"聖徳太子"』という悪質なデマを流したことでギャラリー警察に指名手配され夜逃げしたと聞いてはいたが・・・)


その後も飛び交う激しい野次。

金網の周りに居る多くのプレイヤーは、順番待ちをしているのでもなく、プレイを見ているのでもない。

ただストレス発散に野次を飛ばすために居るのだということが分かった。

(最初は何故金網で筐体が囲まれているのか分からなかった。しかしこれは外のギャラリーから中のプレイヤーを守るためだったのか・・・!)


うのとらはなんとかmosaicをAAAでクリアしたようだった。逃げるように金網を出るうのとら。

獲得デラーを確認するため、ATM状の機械へ向かった。しかしうのとらの獲得デラー、30。

「30デラーじゃタバコの1本だって買えやしないぜ!!!ギャハハハハハハ!!!」

金髪リーゼントとその取り巻きたちは口々にうのとらを罵った。

その後も金髪リーゼントとその取り巻き連中は野次を飛ばしていた。

「オラーァッ!下手糞!さっさと帰っておネンネしてろッ!!」

「そんな腕前で良く暗黒殿に来やがったな!とっとと餓死しやがれッ!!」



自分の順番になる。金髪リーゼントが俺に野次を飛ばす。

「おう、コラ、テメェが新入りか!穴冥のスコアを改竄した事件の犯人らしいな!ここは犯罪者の収容所じゃねェんだぜ!なんか言ったらどうだァ!?ハハハハ!!!」

どうやらこんな連中にまで俺は有名になってしまったらしい。

穴冥のスコア改竄事件と聞いて、俺に興味を持っていなかった他のオーディエンス達からも奇異の視線を感じた。

「人がプレイしてる時は静かにしろ!」

「人がプレイしてる時は静かにしろだァ~!?ギャハハハハハハ!!!

音専スクール出身のボンボンの言うことはやっぱり違うぜ!笑わせんじゃねえぞ!!!!」

俺の一言がかえって金髪リーゼントたちの何かに火をつけてしまったらしい。

(あんな連中・・・無視だ・・・ 無視無視。)

ああいう手合いは構わないことにしてプレイする曲を選ぶことにした。

(手が温まってない以上、あまり物量の多い曲は選びたくないな・・・。Candy Galyなんかスコアも出やすいか。これにしよう)


楽曲が始まった瞬間、頭上で響く爆音!

『『バアアーーーーーーーン!!!!!』』『『バアアーーーーーーーーーン!!!』』

人は大きい音を聞くと無意識にそちらを見てしまうという、俺も不意に上を見てしまった。

俺の目に飛び込んだものは・・・

「オラ!こっちみてんじゃねえよ!!プレイに集中したらどうだ!!!!ギャハハハハハハハハ!!!!!!」

(は・・・?)

一瞬目が合って、それから状況を理解するまでにもう一瞬の時間が必要だった。


そう。金髪リーゼントとその取り巻きが・・・俺の頭上、金網の上でジャンプしていた。

我に返った時には既にハード落ちしていた。

「あ~あ~あ!音専でもっと練習しとけば良かったな!!ヒャッハッハハハ!!!!」

(クソッ!ここはマジで何でもありなのかッ!)

ATMで確認するも当然の0デラー。俺は元居た部屋へと逃げ帰った。


(あの野次と敵意の中でビーマニをプレイしなければならない・・・ そもそもここには練習出来る環境が一切無い。1日1曲しかプレイ出来無いのにどうやって上達すればいいんだ・・・)

俺はふと音専時代を思い出した。

(あそこでは一日中ACでもInfでもプレイすることが出来た。しかしどれだけ上達しただろう。

音専に居ても結局俺は穴冥3547点止まりだった・・・ 俺は一体どうすればいい・・・)


to beat continued...



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