ろー4
「彦根独特の言い回しですか?」
老人ホームに到着して今回のいきさつを説明すると入居者の人や一時利用の人達も含めて話を聞いていた。
彦根生まれ彦根育ちの人もそんなにいなかったので、その場に五・六人残ってもらった。
「他の所では通じなかったとかご両親や祖父母が使っていたような言葉でも良いんですけど。」
谷町さんが説明していく。
一人の70代くらいのおじいさんが
「うちのじいさん、明治とか大正くらいの生まれなんだが、特別な言葉を使ってた記憶はないな~」
同年代くらいのおばあさんが
「そう言えば、私の祖父が『ろうか橋』って、頻繁に言ってたね。心配事があった後とかに使ってたから何かの隠語なのかと思ってたけど、その言葉の意味を教えて貰ったことはないね。」
「なるほど、『ろうか橋』ですか。
他の方はこれに聞き覚えは?」
谷町さんが聞いたが他の方達はわからないようだった。
谷町さんがおばあさんに
「意味のヒントになるような事ってなかったんですか?」
「う~ん、そう言われても。
あっ、うちは彦根藩の下級藩士の家系でほぼ農民みたいな暮らしをしてたって祖父が言ってたんですけど、もしかしたら藩士達の間で言われてたのかもしれません。」
「ろうか橋って、彦根城のろうか橋のことですかね?」
いろはが聞くと谷町さんが
「ろうか橋って何ですか?」
「彦根城の天守に向かうためにわたらないといけない橋です。江戸幕府ができた頃に作られた彦根城は攻め込まれた時ように堅固な守備体制がとれるようになっていて、ろうか橋は本丸への侵入を防ぐ役割があったみたいですね。」
「実際にその役割を担った事はあったんですか?」
「なかったみたいですね。大阪夏冬の陣の時彦根城まで敵が来ることはなかったようですから。
敵が着た時に橋を落として本丸を守ったりできるようになってるんですよ。まぁ、敵が来なければ特に代わり映えのしないただの橋ですけどね。」
「なにもなければただの橋ですか?その橋の事をさして言ってたなら意味がなにかありそうですね。」
「谷町さんが言うような意味の言い回しかもしれませんね。ろうか橋がある所もそう多くはないでしょうから。
彦根独特の言い回しかもしれませんね。」
いろはが言い、タモンが
「他の場所でも同じようなのが出てきたら確定ですね。
武家の家系の人に聞いた方が同じような話が出てくるかもしれないな。」
とりあえず別の場所にも行って話を聞く事になった。




