るー15
「それにしても探偵がうろついているとは……」
「まぁ、でも大丈夫でしょう。」
「バレたとしても何も悪い事はしてませんからね。」
会話が一段落したところでお茶を飲んでいると扉が急に開いた。
「皆さん、お揃いみたいですね。」
「えっ?探偵さん?」
扉から探偵の二人が入ってきてその場にいた全員が驚いた。
「いや~町内会の会合って二部制なんですね。古くからこの町に住んでる住民と新しく引っ越してきた住民でわけてるんですね。」
「伝統的な考えとかもありますし世代も違う人がいますからね。あまりその押し付けとかになってギクシャクしても困るのでできるだけ配慮はしてます。」
「ご近所づきあいも大事ですからね。それで第二部の議題は何だったんですか?
高田さんの家のナッツちゃんの話ですか?」
「グっ、そんな話をするわけないじゃないですか。」
「高田さんの家のナッツちゃんが誘拐された後に高田さん宅に遺体が送り付けられた事件、これを調べていたんですがびっくりしましたよ。まさかナッツちゃん半年前くらいに死んでるんですよね?
高田さんの過失で殺してしまったらしいですね。でも、高田さんはアルツハイマーの症状が進行してその事実も忘れてしまっている状態でナッツちゃんを探し回るという奇行をし始めた。これはいけないと思った古くからこの町に住んでいるあなた方はどうにかしてナッツちゃんが死んでいる事を高田さんに認識させなければいけない。そこで考えたのが第三者を巻き込んだ事件にする事で強烈な印象を与えようとしたんじゃないですか?さらに高田さんの記憶障害を表面化させてくれるかもしれない敵対もあったんじゃないですか。
その面に関してはうちの社長が行政的な手続きをしてくれるのでご安心ください。」
「我々が仕組んだという証拠はあるんですか?」
「ありませんでした。なので、基本的には消去法で誰が仕組んだのか考えました。」
いろはが説明を始めた。
「まず初めに高田さんの会社の方々にお話を聞きに行ったとき、高田さんが犬を飼っている事に驚いていました。そもそも高田さんに犬が飼えるわけないとすら思われてました。動物の世話とかできる性格ではないと思われてたからです。なので、犬関係で嫌がらせをしようとすら思わないでしょうしそもそも高田さんのために何かをしようと思う人が皆無です。なのでこの線はなくなりました。
次にナッツちゃんがケガさせたさっちゃんさんとその友人の方もこんな大掛かりな事ができるわけないですからこの人たちも違います。
半年前に騒音トラブルで当社の別部署に相談を頂いておりましたが、それを取り下げた経緯を考えると新規で引っ越してきた人たちが相談して、古くからの住民が間に入って相談を取り下げさせたと考えれば筋が通ったんです。」
「それだけで私たちを疑ったんですか?」
「高田さんご本人とは仲良くされてなくても高田さんのご両親にお世話になった人とかもおられるのでその関係で高田さんをほっとく事が出来ない人達もいると思ったわけです。それで聞き込んだところ町内会で古くから住んでいる人たちが高田さんの家の犬に関して色々されていたと聞きました。」
「ああ、なるほど。あまり口留めとかしないですしどこかから漏れても仕方ないですよね。」
町内会の人達が一様にうなずいた。