「あー5」
ガチャとドアが閉まる音が後ろで聞こえた。そのまま門に向かい門を閉めたところで声をかけられた。
「こんにちは佐藤さん、いや後藤さん」
驚いて声のした方を見ると探偵の二人組の松木が笑顔で立っていてもう一人の佐和とかいうヘッドホン男は私には興味がないといった感じで周りを見回している。
「なんで?なんでここがわかった?」
「人探しは得意なんですよ、だからこんなお仕事してるわけですから。さて、さっそくですが本題に入りますね。
なぜ嘘の依頼をしたのか、偽名を使ってまでやりたかった事は何なのか?あとは・・・・」
「まずはその辺で良いだろ。お前の知りたい事を全部聞かしたら1つも答えを聞く前に日が暮れるだろう。」
佐和が呆れたように良い、松木は不服そうに
「仕方ないですね。他の事はおいおい聞いて行くとします。」
「もう色々とバレているという事ですか?」
「そうなりますね。順番にご説明しましょうか?」
松木は笑顔で言った。嘘をついていた事を怒っている様子はない。だが、家の前でこれ以上この二人といるのを見られるのも気まずいので
「近くに喫茶店があります。そちらでお話しして良いですか?」
「もちろんです。」
私は二人を伴って行きつけの喫茶店に向かった。
席に座り注文を済ませると後藤は口を開いた。
「まずは嘘の依頼をしてしまい申し訳ありませんでした。
私は彦根市のために長年働いてきました。最後の職場が観光に関する部署だったので彦根市に興味をもって頂くような話題や出来事にアンテナを張っていたところ、直政像の目の噂を聞いたのです。でも、警察は捜査もしないしまともな目撃情報もありませんでした。あの噂が本当なら観光の目玉になり得ますが嘘だった場合はそこまでしないと人に来て貰えない程度の街なのかと思われるのではないかと不安になったんです。
観光の名所もたくさんあるし美味しい料理が食べられるお店なんてたくさんあって言いきれないです。
そんなこの街で悪い方向に名前が知られるのは我慢できなかったんです。誰でも良いから解決して欲しいと思い今回の依頼をしました。ただ興味があるから調べてくれでは取り合って貰えないのではないかと思いました。なので、犬の捜索の過程でこの件も調べて貰えたら良いなと思ったんです。
名前の方は本名だとすぐに犬を飼ってないのがバレると思ったからです。」
「なるほど、じゃあ実際は目が光ってるのは見ていないわけですね?」
「そうなります。私も見られたらとは思っていたのですが、そう上手くはいかなかったので。」
「じゃあ、依頼の内容は犬探しから直政像の目の噂を調べるに変えて良いんですね?」
タモンが聞いた。存在もしない犬を探し続けるよりはましだと思ったからだったが、タモンのその真意はどうやら後藤に上手く伝わらなかったようで
「えっ?正式に調べてくれるんですか?
ありがとうございます。」
タモンが慌てて否定しようと思ったがいろはが先に
「お任せください。」とはっきり言ってしまったために断る口実がなくなり、タモンも
「存在しない犬を探すより不可思議な謎を調べる方がましですからね。」
「わかりました。では、よろしくお願いします。」
後藤に改めて『直政像の目が光る謎』の解明を依頼されたのだった。