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高田さんの勤めている会社にやってきたタモンは高田さんの部下の男性に会っていた。
「高田さんは上司としてはどんな感じの人ですか?」
「正直に言うとあまりいい人ではないですよ。
昔は営業とかでたくさん売り上げに貢献していたらしいですが、ここ最近は判断能力が落ちてきたのかまったくダメでしたね。」
「判断能力が落ちていたというのは何かご病気だったという事はないですか?」
「ああ、どうなんですかね。あまり個人的なかかわりは持ってなかったので・・・事務的なつきあいしかないですからね。」
「なるほど。ちなみになんですが高田さんに恨みを持っている人とかいないですか?」
「ああ、結構いますね。仕事関係でいうなら性格も悪いですし、パワハラとかモラハラなんて余裕でしてましたからね。その割には取引先にはいい顔するんで会社内からの嫌われ具合はヤバいくらいですね。」
「なるほど・・・、ちなみにあなたは高田さんが犬を飼っているのはご存じですか?」
「えっ?あの人には犬を飼えるような感じはないですね。人ともコミュニケーション取れないのに犬の面倒なんて見れるわけがない。」
「そこまで言うほどですか。まあ、確かにまったくしつけができてなくて色んな人に迷惑をかけているようですね。」
「まあ、そうでしょうね。そういえばお聞きしていなかったんですが、なぜ高田さんのお話を聞きに来られたんですか?」
「実は、高田さんが飼っていた犬が連れ去られて殺された状態で高田さんの家に送り付けられてくるという事件がありまして。警察の方でも捜査はしているのですが、連れ去られた件の捜査をしていた自分たちも引き続き調べてまして。高田さんとお話しさせてもらう中で少し記憶障害のようなものがあるのではないかと考えてお話を聞きに来た感じです。」
「なるほど。先ほどの恨んでいる人がいないかという話もそこに繋がるわけですね。
でも、会社の人間ではないと思いますよ。」
「なぜそう思われるのですか?」
「高田さんはもう少しで退職される予定です。会社からいなくなる人のために犯罪行為をしようなんて人はいないでしょう。」
「それはそうですね。退職は早期のようですが?」
「まあ、人事課もほっとけないほどの人という事ですよ。早期退職扱いにして今までの問題を全部もみ消そうと思ってるんじゃないですかね。」
「パワハラとかで訴えない代わりに退職させたって事ですか?」
「そうだと思いますよ。末端の私では実際はどうかまではわかりませんけどね。」
「そうですか・・・、お忙しい中ありがとうございました。」
タモンは頭を下げてその場を後にした。




