「あー4」
-探偵事務局-
「SNSを見てたんですけど・・・・不審者と間違われたらしいですね」
松木いろはは声を出して笑った。佐和タモンには特殊な特技がある。自分が意識する事もなく色々な声や音をまったく違う場面で聞いているように同時に聞く事ができ、その内容もすべて把握できるというものだ。
飛鳥時代の有名な人物である聖徳太子も10人の話を聞きすべてに正確に返答する事ができたというが、タモンは人数を関係なくそれができる。ただ、人が多ければ多いだけ負担が増えるので疲労度が凄くなるらしい。普段からこの特技が発揮されてしまうため、外部の音が入らないヘッドホンをつけている。
「笑うな。そもそも目を閉じて立っていただけで不審者扱いする過剰な対応が間違っていると思わないか?
じゃあ、何を買うかを迷っている人がいたら全員が不審者扱いされるのかという話になるだろ?」
「まぁ、それはタモンさんだからって部分が多そうですね。
わかったことはありましたか?」
「犬を飼っている人からすればリードを放されたくらいで犬が逃げるなんて事はそうないらしい。よっぽど例の佐藤さんは犬に嫌われていたんじゃないかって話らしい。」
「ああ、あの人は後藤さんだったよ。
写真を見せて確認したから間違いないよ。」
「で、その後藤さんは何者だったんだ?」
「元市役所観光推進課勤務、三年前に定年退職した人で奥さんと息子二人がいるけど息子さん達はもう自立されて奥さんと二人暮らし。奥さんが動物のアレルギーがあって犬や猫のペットを飼うのは物理的に無理らしいよ。」
「嘘だらけの依頼人だが社長はなんて?」
「ひとこと、『おもしろそうだから調べたら?』だったよ。」
「ニヤニヤしながら言ってそうだな。
まあ、上司命令なら調べるしかないな。」
「他に後藤さんが現職だった頃から彦根城関連の世界遺産登録に、一生懸命取り組んでたらしいから直政の像を使って彦根市に注目を集めようとしてるとも考えられるね。」
「他の目撃者の情報は?」
「まだ揃ってないかな。そもそもが本当に見たと言ってる人と話題に乗っかってふざけてる人がいるからそこの真偽の確認もひつようだし。」
「まとまったら教えろ。」
「何かしに行くの?」
「後藤について調べる。目的と思惑、本当に直政像の目が光ったのかも確認しないといけないからな。」
「了解、じゃあ情報を送っておくわ。」
「タモンはそのまま事務局をあとにした。