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「近所で目撃情報がないか探してきます。
犯人からの連絡があるかも知れないので高田さんは家で待機して下さい。」
いろはが言い、タモンと二人で高田宅を出た。
「どう思います?本当に誘拐されたんですかね?」
いろはの言いたい事もわかる。
「正直、犬に逃げられただけで警察にまで誘拐されたと通報はしないだろうし、警察署で会った怪しいうちの社長に助けを求めるのもおかしな話だ。ここまでするって事は本当に誘拐されたあるいは誘拐したと見せかけたい第三者の存在を疑った方がいい気がする。」
「その言い方だとナッツちゃんはもう死んでる可能性がありそうですね。いくらペットが大事でも300万円の身代金はあり得ないです。払わなかったから殺したと言うのが筋が通りますね。」
「可能性として高いだろうな。まぁとりあえず、聞き込みだな。」
タモンは近くの家のチャイムをならした。住人の40代の女性が出てきて
「なんですか?」
「すみません、高田さんのお宅で飼われてるナッツちゃんというチワワが居なくなってしまいまして。捜索を依頼された者なんですが、何かご存じではないですか?」
「ああ、あのバカ犬ね。知らないわよ。」
「バカ犬ですか?」
「そう!人が高田さんの家に近づくだけで大きな声でなきわめいて煩いったらないの。早朝だろうが深夜だろうが関係なく吠え続けるから起こされた事なんて数えきれないほどよ。
本当に迷惑。」
「番犬代わりされてるなら優秀なんじゃないですか?」
いろはが聞くと女性はため息をついて
「あんな小型犬が鳴いたからってビビる人の方が珍しいわよ。
それに番犬はしつけがされてるけどあのバカ犬はただ吠え続けるだけでなんの意味もないの。高田さんもそういうしつけの知識とかないからただ可愛がってるだけで叱ったりもしてないと思う。
まあ、居なくなってくれたなら近所の私達としては嬉しい限りだけどね。」
「なるほど、ありがとうございました。あと、この辺で怪しい人がうろついてたなんて事はありましたか?」
「いえ、この辺はだいたい顔見知りの人しか通らないような道だし、たまに大学生とかが抜け道にしてくくらいで人通りは多くはないわよ。」
「ありがとうございます。」
お礼をいってその場を離れてから
「高田さんの家の犬は評判が悪そうだな。」
「そのようですね。あの方が犬嫌いの可能性もありますから決めつけはできないですよ。他の人にも聞いてみましょう。」
次の家に向かって二人は歩を進めた。




