るー1
「ど、どうぞお入りください。」
50代くらいの女性に案内されてリビングに入った。
見た目の印象は強気できつめの人のように見えるが今はおどおどとしている。
新しい依頼を受けて内容も聞かないままに依頼人のもとに行くように言われてきた。
「本日はどのようなご依頼ですか?」
いろはが聞くと女性は焦ったように
「声が大きいですよ!ああ、どうしよう。今のも聞かれてたら…」
女性の言動は明らかに以上だった。
「お名前からゆっくりと説明して頂けますか?」
タモンが冷ややかに言ったのにビクッと怯えたように女性は
「あっ、そうですよね。高田ともうします。
うちにはまだ一歳になったばかりのチワワのナッツちゃんがいるんですけど、数日前に行方不明になってたんです。」
「ああ、迷い犬探しのご依頼ですか?」
いろはがいうと高田さんは首をふり、
「違います、迷子じゃないんです。誘拐されたんです!」
「そう思われる何かがあったんですか?」
タモンが聞くと高田さんは紙を渡してきた。新聞や雑誌の文字をくりぬいた字で『お前の家の犬を預かった 指定した日時と場所に300万円を持ってこい。日時と場所はまた改めて連絡する』とかかれていた。
「警察には届けたんですか?」
「それが犬の誘拐に関しては窃盗扱いになるし、捜査はするけど手元に戻せるかわからないみたいに言われてしまって。」
「それで探偵に依頼したわけですね。日時などの連絡はありましたか?」
「まだないです。お金も準備するのが難しくて。
どうしたらいいのかわからずにいたら、あなた達のところの社長さんが調べてくれるって言ってくれたんです。」
「あ……そうですか。」
迷い犬探しは楽なのものではない。迷子なら声を出して泣いたりその場から動かない事もあるが犬ではそんな期待も持てない。
目撃情報を参考程度にしてあらゆる可能性を考慮しながら現在の居場所を推測して動く。そもそもが社長の持ってきた依頼ということで怪しさがマックスである。
タモンは犬を飼ったこともないし、飼いたいと思ったこともないから犬の身代金に300万も払うのかと不思議にすら感じていた。大事な家族が誘拐されたらそれはお金を出し惜しみする事はないがペットとなるとタモン的には全く理解できないかった。
「お金の準備ができたとしてえ~とナッツちゃんが無事に帰ってくるかもわからないですよ?」
「当り前じゃないですか。家族なんですから!」
「わ、わかりました。色々と状況とかも教えてもらって、捜査方針とか決めていきます。」
タモンがそう言っている間にいろははパソコンで情報収集をしていた。




