にー10
「さて、今回の依頼に関してまとめます。
今回の事の始まりは鈴木さんという依頼人が持ちこんだ左側が青一色、右側がピンク、緑、赤黄色、白色の四色に塗り分けられた絵を調べる事でした。正直何もわからない状況ですが絵に使われていた紙が江戸時代後期の物だという事がわかりましたし、新しく出てきたガラスにも墨が付着してました。」
「でもそれも特に何かを示していたかわからなかったんだろ?」
「まあ、正直そうですね。色々とお宝があるんじゃないかとかも思いましたが、結局は何もなかったですからね。それでタモンさんは何かわかった事ってあったんですか?」
「遠城謙道って知ってるか?」
「あまり詳しくは知らないですけど井伊直弼に仕えた藩士ですよね?確か直弼の死後に出家して直弼の墓守になった人ですよね?」
「ああ。彼は絵に対する才能もあった人で藩の御用絵師ではなかったらしいが作品も残っているらしい。
俺も詳しくは調べられなかったけどすごかったらしい。その人の石碑が尾末町の図書館の近くにある。
で、図書館の人とかにも色々聞いたけど、まあ詳しい人は特にいたわけじゃないけど、嘘か真かわからない話として伝わっているのが、遠城謙道が彦根山の良さを伝えるために描いた絵があるという話だ。
西に琵琶湖が一望できて東に鈴鹿山脈が見える。今みたいに高い建物ももなければ木々が生い茂っていたわけでもなかった江戸時代ならかなりいい景色が見えたんじゃないかと思う。
それで、今回の絵の話だが、西側に琵琶湖の青色、東側に季節によって色を変える鈴鹿山脈を描いたんじゃないかと俺は思う。春に桜、夏に緑、秋に紅葉の赤黄色、冬に雪の白が表われているんじゃないかとおもう。」
「ああ・・・・・、それでまとめる感じですか?依頼人にもそれで納得してもらえますかね?」
「依頼人には江戸時代の子供の落書きだろうと報告するつもりだ。」
「えっ?それは良いんですか?」
「何の確証もない話をして、変なものが世に出るよりはましだろ?社長が依頼人に50万円で売ってくれないかって話をもっていって買い取ったらしい。」
「何のためにですか?」
「単純にめちゃくちゃお宝ではなかったけどコレクターとしては保護しときたい物だったって事だろうな。あとはこれが本当のその絵だった時のための保険だろうな。」
「そこまで言うなら何かあったんですか?」
「遠城謙堂の石碑の裏にあったよ。」
タモンは一枚のカードを見せた。
「会ったんですか、彦根かるた?」
「西に湖 東に鈴鹿の 金亀城の句だな。さっき言ったのもこれを見てそうだと思った。」
「なるほど。じゃあ、社長もこの感じで依頼を終了して良いってことですよね。」
「だろうな。社長自ら動いてるんだからいいんじゃないか。」
「じゃあ、報告書まとめちゃいますね。」
いろはがパソコンを使って報告書の作成に向かった。
何か納得いかない事も多かったが、何かの前触れのようで気味の悪い依頼だった。