にー4
「結局、どう思いましたか?」
「あの家を見た感じでは、何かしらの意味はあるだろうし財宝なんて物があれば楽しそうだなとは思う。
だが、現実的にはただの落書きでしかないと思う。」
「何か気になる所とかはなかったんですか?」
「今回の訳の分からない依頼なのにそれを振ってきたという事は社長が何かを企んでいる可能性が高い。
それにこれが前回までの事件と繋がっている可能性がないとも言えないと思うと引っかかる所はあるよな。」
「何か彦根かるたに関係するのってあるんですか?」
「そこまで詳しくないからわからないし、直接的なものじゃない可能性もあるから特定は難しいな。」
彦根かるたには、いろはにほへとちりぬるを・・・という感じで一句ずつあるが今のところ絵に関する物は彦根屏風の句だけかと思うが、あの落書きが関係すると思えない。風景に関する句もいくつかあるのでそこから絞ればもう少し特定できるかもしれない。
「ちなみになんですけど、彦根の都市伝説みたいなものを調べてみたところいくつか面白いものはありました。例えば古事記が基になっている因幡の白兎は彦根が舞台なのではないかといった学者がいたとか、直政の赤色の甲冑が今もどこかに隠されているのではないか、井伊直中が長男の供養のためにゆかりのあるお寺に大量の小判を埋めたと、彦根藩が取り潰されるときに困窮しているふりをするために財宝を隠したのではないかとかがありました。」
いろはが調べた都市伝説を色々といった。そもそもが都市伝説なんてあったら面白いなとか夢があるなとかっていう話だから言いたい放題な部分がある。タモンは気になった事だけ聞く事にした。
「直政の赤色の甲冑ってなんだ?あと井伊直中って誰だ?」
「まずは直政の赤色の甲冑ですけど、井伊直政は徳川家康が誇る勇猛果敢な武将で常に自分にも人にも厳しい人だったと伝えられており戦の時には真っ先に馬で敵陣に突っ込んだりする人で傷だらけの武将だったそうです。実際に直政の死因は関ケ原の合戦時に受けた傷だったとされています。
直政が最後に来た甲冑は、主である直政を守れなかった防具として表に出される事が無くなり、秘かにどこかにしまわれたままになっているのではないかというのがこの都市伝説です。
博物館とかに飾られている防具なども後付けで用意されたものなんじゃないかとか言われてました。
次に井伊直中ですが、井伊直弼の父親で彦根藩主の中でも名君と言われていた人です。
残念ながら後継ぎがなかなか決まらないという不運はありました。その長男が病弱で早くに他界したのですが、その長男が亡くなる前に女中との間に長男の子がいたにもかかわらずその女中が不倫して子を作ったとして直中はその不倫相手が長男だと知らずに処刑してしまったという事件がありました。
その供養のために建てたお寺が今も彦根市に残っています。長男のところに生まれるはずだあった孫を殺してしまった事と長男も他界した事に心を痛めた直中が償いに大量の小判を供養として長男と一緒に埋葬したというのがこの都市伝説です。」
「その寺を探せば小判が出るかもしれないという事か?」
「ないと思います。まあ、あそこのお寺は裏が山になっているので特殊な塚を作っている可能性もありますが、それを見つけようと思うとかなり思い切った採掘が必要ですね。」
「なるほどな。どれが怪しいと思う?」
「彦根城に近い所なので井伊家に関する物が怪しいと思いますが今の時点では特定が難しいですよね。」
「とりあえず様子を見るとするか。」
その日はその状態でこの話が終わった。