むー12ぶ
「終わったのか?」
店長がブツブツ言ってるのを見ていたタモンといろはにヤスさんが話しかけてきた。
「色々とご協力ありがとうございました。店長に恨みのある社員の方を紹介して頂いて。おかげでたくさん証言が得られましたよ。」
「フン、あの馬鹿は自分の物差しでしか物事を見れない。
そういう人間がつくるものは独りよがりで美しさにかける。仲間と共に作り上げたものの美しさってやつをあいつは知らないんだろうな。」
「彦根仏壇は職人が自分の専門を請け負って最後に組み合わせる事で完成する。気の合う仲間との合作ですね。」
「そうだな、時代が時代だから機械で精巧な細工をするのはできるだろうし、寸法が合わなくてケンカする事もないだろうが組み上がった仏壇を皆で眺める感動は得られないだろう。
まぁ、仲間もほとんど死んだり引退してしまったから俺も新しい作品を作ろうとはならないからこそ現存する作品は大切にしたいよな。」
ヤスさんはそういうと壊されなかった彦根仏壇の手入れを始めた。
「売れない家具は邪魔なだけだ。それを管理責任者としては処分して何が悪い。使えない職員を辞めさせて何が悪い。
使えないから悪いんだろ。」
店長がまだブツブツ言っていたのでタモンが
「使えない職員がいるのは使う側が下手だからじゃないですか?
あなたは花バサミで枝を切ろうとしたんじゃないですか?
ノコギリなら切れる枝も花バサミでは切れませんよ。
あなたがその人の本質を見極めて適材適所で使えていたなら、仕事ができない人なんていなかったとは思いませんか?」
「………………そんなことに誰も教えてくれないじゃないか……」
店長は肩を落としてうつむき黙ってしまった。
ヤスさんが近寄ってきて、
「探偵さん、これ何かわかるか?仏様の後ろに貼り付いてたんだけどよ。」
ヤスさんはそう言うと少し厚めの小さな紙を渡してきた。
手にとって見ると仏壇の絵が書かれていた。いろはも覗き込んできて
「タモンさん、これって彦根かるたの絵札じゃないですか?」
「【む】の句、『昔より仏壇バルブの地場産業』か?」
「でも、仏壇だけですね。」
「これまでの事件の時も現場に彦根かるたの絵札があった。
何者かが仕組んでいるのかたまたま俺達が見つけてるだけで、他の人に見つかってないだけなのか。とりあえず今後も気をつけて見た方が良さそうだな。」
「そうですね。」
いろはが答えた。その後、店長は警察に連れていかれた。
器物損壊、業務上横領等々で結構大変なことになるのだろう。
 




