や―11
小窪は昔の話を始めた。
「資料室の整理をしていた時に古い棚をやっていたら本棚の裏に紐でまとめられた紙の束があったんです。
ほこりまみれだったし、何かの拍子に本棚から落ちてそのままになっていたようでした。
今まで騒ぎにもならなかったのなら重要な書類でもないだろうと思いましたが念のために拾ってみたんです。
ほこりを払ってみると本として製本されていないかなり古い書物でした。
私の専門外の文字形態で書かれていたので、その場では読む事もできなかったのですが私には頼れる人がいないので自分で調べたり勉強したりしました。
その日からかなり時間がかかりましたが解読できたのがつい最近なんです。
その書物は近江守護佐々木家の残したもので、分家した際に力関係が偏りを見せていたために争いになる事を見越して財産を近くにある遺跡に隠した事が記されてました。
この遺跡というのがどれかを特定するのに頑張った結果、彦根の西今町の遺跡が怪しいとなりました。
でも、発見されている遺跡なら隠された財産というのも発見されていると思うんです。
発見されていないという事は、隠された遺跡自体が発見されていない可能性を考えたんです。」
小窪が現在にいたるまでを話し終えたところでいろはが
「その資料が本棚に落ちた経緯とかはわからなかったんですか?」
「そうですね、かなり前から放置されていたので経緯などは全くわかってませんでした。」
「それで西今町のどんなところが怪しいと思われたんですか?遺跡があったからというだけでは根拠が足りないんじゃないですか?」
タモンが聞くと小窪は首をかしげながら
「正直に言うと、湖北である事や昔からある遺跡である事などが書かれていただけで確定的な事は書かれていないんです。遺跡として古すぎて発見されてない可能性があるのは西今町なのではないかと思うんです。」
「隠されてから500年くらいは経ってるんですよね?室町とかのはじめならもっと前になるわけですから、川の氾濫や地殻変動などで入り口が隠れてしまった可能性はありますよね。」
いろはが言い、小窪が
「その可能性も考えてここにしたんです。特にあの古い井戸を見ると土がかなり盛り上がっているように感じました。あれくらいの井戸であればもう少し深くまであるはずなんですよね。
ああ、これは地質的な話で私は専門なので間違いはないですね。」
「なるほど、遺跡のだいたいの場所とかの見当もないんですか?」
「もう少し絞られてくれるんじゃないかと思いますね。」
小窪はどこから来る自信なのかもわからないが言い切った。




