「あ-1」
「それでペットの特徴は?」
ヘッドホン男もとい佐和が松木さんに聞いた。
「雑種の茶色で3歳のオス、40cmくらいです。」
「状況は?」
「この直政像の目が光ったのに驚いてリードを放したそうです。
さらに詳細を聞くために来たので現状はこんな感じです。」
松木さんが短く答えると佐和さんが
「依頼人の方・・・ああ、失礼。お名前をお聞きしても?」
「あっ、佐藤です。」
「なるほど、佐藤さんですか。
では、あなたはどの位置から直政像を見ていましたか?」
「え~と正面のあそこの花壇の前のところです。」
佐和は歩いていき、
「この辺ですか?」
「もう少し後ろです。・・・あっ、そこです。」
佐和が微妙に調整しながら場所にたつと佐藤が言った。
タモンは直政像を見てから、
「それで犬はどちらに向かって走っていったんですか?」
「線路沿いに米原の方に走っていきました。
驚いて腰が抜けてしまってすぐに追いかけられなかったのですぐに見失いました。」
「他に人はいなかったんですか?」
「ちょうど電車の着く時間じゃなかったので、人はあまりいなかったですね。」
「いろは、SNSとかに犬の目撃情報は?」
「特徴を聞いてから検索にかけましたけど、今のところ目撃情報はないですね。佐和山とかに逃げ込んでたら見つけにくいですよ?」
「山登りをするほどバカではないだろう。
松原の方に行った可能性を考慮して聞き込みだな。
ところで、佐藤さんはどの当たりにお住まいですか?」
「えっ?後三条の方です。それが何か?」
「ずいぶんと遠い散歩ですね。
まぁ、怪奇現象(笑)を見に来たのならなくはないかもしれませんけど。」
「それは気になるでしょう?
銅像の目が光るんですよ」
「好奇心から聞きたいのですが、目は何色に光ってましたか?」
「黄色・・いや、赤だったかな?
犬の事を気にしすぎて忘れたよ!」
「そうですか、まぁ、これ以上聞くこともないですね。
佐藤さんの犬は探しておきますよ。もし、見つかればご連絡しますね。」
何やら含みのある言い方でイラッとしたが、そのまま家に向かった。
いろはとタモンは帰っていく佐藤なる人物を見ながら、
「彼の探している『犬』とやらはいると思うか?」
「いないでしょうね。彼は一度もペットの名前を言いませんでした。お金を払ってまで探させるペットの名前を一度も呼ばないのはおかしいです。彼が『佐藤』でもない事は確かですね。
日本で一番いる名前で偽名に使われやすい名字ナンバーワンですから。」
「目的は?」
タモンの問いにいろはは首をかしげて
「直政像の目が本当に光るのかを確かめる事あるいは話を大きくして話題を盛り上げる事のどちらかかと。」
「とりあえずあの男の正体から探るとするか。」タモンの言葉にいろはは頷いた。