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直政像の目が光る事件を解決したが少し謎の残る事件だった。
そんな二人のもとに新たな依頼人がやって来た。
「こんにちは、私はとある大学で歴史を研究しております小窪と申します。
実はお願いしたい事がありまして、簡単に言うと発掘になるかはわからないんですが人手を欲してましてご協力を頂きたいんです。」
小窪と名乗った40代くらいの男は笑顔でいった。
「大学で研究されてるなら学生や同じ研究室の方とやられるのが普通じゃないんですか?」
いろはが聞くと小窪は恥ずかしそうに
「いや・・そうなんですけどね。
実は私の主張している事っていうのがあまり受けが良くないというか、信じてもらえないうえに大学も大きい所じゃないので予算の方も出ないわけでして。
そんな感じなので私としてはこれを成功させて色々と見返したいなと思っております。」
「どんな内容なんですか?」
「彦根っていえば彦根城を中心とした江戸時代や石田三成などの戦国時代の印象が強いと思うんですが、鳥居本にある専宗寺はゆかりこそわかっていないものの聖徳太子と関係のあるお寺らしいので、そのゆかりを解き明かすのも興味があります。ですが、今回はそこではなくさらに昔の弥生時代に関する遺跡です。」
「ああ、西今町の文化遺跡ですか?あそこの調査はかなり進んでいてもう探す事もない状態じゃないですか?」
「そうですね、すでに発掘されている所はもうする事もないと思いますが、住居跡や貝塚のような生活を表す文化遺跡だけではなく、この周辺にあったであろう統治組織を表す歴史的に重要な遺跡もあるのではないかと思っています。もちろん国のような大掛かりな物ではなく村のようなものでもあればそれだけでも大きな進歩だと思うんです。いかがでしょうか?」
「我々はその発見の重要性が良くわからないので、小窪さんの発掘にかける熱意などが理解できないというのが正直なところですし、西今のあたりは住宅などが多く発掘できる所もそんなにあるとは思えません。やはり専門家のグループを編成されたうえで再考される事をお勧めします。」
今まで黙って聞いていたタモンが言った。小窪は焦ったように
「いや・・・ちょうど大掛かりな工事をされている所があるのでそこからやろうと思ってるんです。
この依頼は引き受けてもらえないという事でしょうか?」
「この部署が私と彼の二人だけなので大掛かりな依頼を受けると他の事が出来なくなる可能性がありますから、私たちが判断できる事ではないんです。どの依頼でもそうなのですが、依頼の内容を聞いて社長に確認をとって受けるかどうかが決まる感じなんです。
なので、今日この場で依頼を受ける事は出来ないんです。また後日にこちらからお電話させてもらいます。」
いろはがどの依頼人にも言う定型文を言い終え、小窪は少し肩を落として帰って行った。