あー12
「次は私の番ですね。
Xさんについて、観光案内所に行って正体を明かさずに接触してみました。近くのコーヒー屋さんで井伊直政談義も聞いてきました。もともと歴史が好きでお城巡りを仕事でできるから旅行会社に就職したそうです。彦根城の世界遺産登録について聞いてみましたが、かなりの熱量で語ってましたね。」
タモンはイラッとした気持ちを持ったままいろはの話を聞いていた。
「それで?直政像に関する事は?」
「まったく触れませんでした。こちらも踏み込み過ぎるわけには行かないかなと思ったので、外堀を埋めるような会話しかしてません。」
「正体を明かさずにどうやって話をしてもらう流れにもっていったんだ?」
「ああ、簡単ですよ。
彦根に関係のある人を題材にした某有名ドラマの制作を目指していて、誰が良いかと彦根に詳しい人達に話を聞いていると言いました。石田三成、井伊直政、井伊直弼等が上がるなか、あまり聞いた事がない人なんですけど遠城繁子という人もあげてましたね。」
「それは誰なんだ?」
タモンはまったく聞いた事のない名前だったので聞いてみた。
「井伊直弼に仕えていた遠城謙道という人の奥さんらしいです。桜田門の変のあとに菩提を弔い続けていた遠城さんの家は困窮していたらしく、その時に富岡製糸場を模範として作られた平田製糸場の工場長が繁子さんを工女の取締役に任命したそうです。彦根藩は西郷隆盛と距離が近かったらしいですし、西南戦争後は士族が困窮していたので士族の子女達が多く工場で働くようになったので、士族の子女達を統率できる人として選ばれたのではないかといわれてます。あまり資料が残ってないので実現は難しそうらしいですけど。」
「そんなマイナーな人まで知ってるくらい彦根を盛り上げようとしてるって事は伝わったが、現状は彦根にめちゃくちゃ詳しいおっさんだな。疑うほどでもないだろ。」
「フフフ、実はこのXさんは後藤さんとも面識のある人でした。
後藤さんが観光振興課にいた時からの知り合いだそうです。」
「ここに来て、また後藤さんが怪しくなってきたわけか。」
タモンが考え込むといろはが
「話題としては盛り上りを見せてきた訳ですけど、しっかりとした捜査がされればボロが出てしまうかも知れない。
だから、わかりやすく嘘だとばれる証言をして噂自体の信用性を落としに来た可能性がありますね。」
「一人にだけ注目が集まらないように批判をする人間を煽る役割の人間もいれたりして捜査の撹乱を狙ってる可能性もあるな。」
「となると、やっぱり原点に戻ってどういう仕組みで目を光らせたのかを明らかにして、犯人?グループを追い込むしかないですね。」
「とりあえず、後藤さんとXさんが共謀している証拠を集めるのと他に仲間がいないかも調べないと行けないな。」
「了解です。」