「あー10」
『パコン』と何かで叩かれてタモンは目を覚ました。時計を確認するといろはが思考モードに入ってから軽く1時間はたっていた。時計から目をあげると紙を丸めて棒状にしたものを持ついろはが目の前で仁王立ちしていた。
「タモンさん、なんで私としゃべってる途中なのに寝ちゃうんですか?ほんとにさっきまで話してたのに急に寝るってどういう神経してるんですか?しかもうたた寝とかじゃなくてがっつり横になって寝てるし。」
「お前も気づくの遅いだろ。1時間も一人で考え事してたのかよ。で?答えは出たのか?」
タモンがあくびをしながら聞くとまだ納得していない様子のいろはは不満そうに
「目撃情報があった日の天気を調べました。
タモンさんの言うDさんと後藤さん以外の方の目撃日はいずれも曇りのち雨、または雨の日のでした。
もしも雨で濡れて落ちる塗料のようなものがついていたなら、もしかしたら目を光らせて、その後なにもしなくても光らなくさせる事は可能だと思います。」
「雨で消える塗料なんて使い道がなくて誰も作らないだろ。
それに直政像の目は兜の中にあるから簡単に雨が当たるとは思えないし、蛍光塗料が塗ってあるとするならもっとたくさんの人が目撃していてもおかしくはないだろ。」
「なるほど、その通りですね。
じゃあ、タモンさんの推理を教えてください。」
「目撃証言から雨に降られると光らせる事ができなくなるって事は間違いないだろう。それに何らかのな特殊な塗料で光らせてると考えるのが妥当ではある。ただ、犯人がいるとしてその証拠をいつまでも残しておくとも思えないからいま調べても意味はないだろうな。」
「行き止まりですね。」
「いや、塗料で光らせてると考えると雨が降ろうが光らせ続ける事はできるし、雨に気を取られた一瞬で塗料が跡形もなくとれるとは思えない。つまり、雨が降って光らなくなったと言う事は光らせるための外部的な要因を目撃されないためじゃないかと考えられるな。」
「外部的な要因・・・!
光源とかですか?雨が降ってなければ光が見える事もないですけど、雨に反射して光源からの光が見えれば光る仕組みも犯人も発見されてしまう可能性がありますからね。」
「その可能性はあるな。だが、これは今のところ証拠も何もない妄想だからな。裏付けがいるし、仕組みがわかっても犯人の特定には繋がらないからな。引き続き目撃者と例のアンチコメントしてたXさんは調べといた方が良さそうだな。」
「了解です」
何となく見えては来たが霧の中を進むような状態は未だに続きそうだった。