「あー9」
「まだ直接の接触はしてませんが、この人物は興味深いですよ。
便宜上、Xさんとしましょうか。
Xさんは元旅行会社勤務の60代男性です。仕事で彦根に来てるうちに気に入り、定年退職後に奥さんと一緒に引っ越してきてから彦根で暮らしてます。仕事で来た時に彦根の色々なお土産屋さんと仲良くなっていたらしく、こちらに来てからも友達がいる状態だから楽しそうに暮らしてるようです。
彦根駅の観光案内所には毎日のように訪れては雑談をしたり、お土産で買って欲しい物をSNSに投稿して宣伝したりしていくみたいです。その雑談の中でXさんが彦根の観光の町としての宣伝方法がダメだとか魅力を伝えきれてないとか話していたそうです。
観光案内所の人も同感だなと思う事が多かったらしく、別に疎ましいとも思ってないそうです。どちらかというと外から見た彦根の感じで的確な指摘も多いそうですよ。」
「悪い人ではないし、誰かに敵視されてるわけでもない人だって事はわかったけど、今のところ彦根が好きなおっさんの話でしかないぞ?」
「Xさんは彦根を盛り上げるイベントが全然ないのも問題視されてましたね。イベントに併せて旅行プランを組んだりするのもよくあるらしいんですけど、彦根は来てみたらたまたまイベントがあったとか、ちょうど良い季節だったが多いらしいです。
毎週なにかをしろとは言わないけど人が来るような話題作りは必要だと常々いってるみたいです。」
「ただの盛り上げたいおっさんだな。それ以上じゃないな。」
「フフフ、まだまだこれからですよ。
Xさんはこの噂が起こる少し前に直政像の前を行ったり来たりしながら何か悩んでいる様子を目撃されてます。
もしかしたら、この時に直政像の目が光る仕組みを考えていたのではないかと言う話です。どうですか、怪しくないですか?」
いろはは自信満々に言った。タモンはため息をついて
「彦根が好き、盛り上げたいと思ってる、頻繁に彦根駅を訪れている、直政像の前で悩み事をしていた。と、まぁこんな感じの条件がそろえば疑わしくもあるが、全部状況的な判断基準でしかない。怪しいかどうかなら怪しいが決めつけもできないな。」
「そう言えば、何で誰も写真を撮ってないんですか?
今時、カメラを持ち歩く事はなくてもスマホとか携帯くらい持ってますよね。写真の撮り方がわからないなんて子ともないですよね?」
「撮り方がわからない人もいたし、Dさんに限ってはたぶん見てもないのに見たって言い張るためにそれらしい理由を言ってきたりしてたぞ。あとは・・!そう言えば雨が降ってきてそちらに気が向いてるうちに光らなくなってたって人もいたな。」
「雨が原因?それとも集中しないと見れない?光るのは何か外部の影響が必要?」
いろはが感じた疑問をどんどん口に出していく。タモンはため息をついてその様子を見守ることになった。いろはの思考モードは一度入るとなかなか抜け出せないし、こちらの声も届かなくなるからだ。とりあえずソファに座りゆっくりと目を閉じた。
仮眠をとってても文句を言われる事がない上にそれくらいの時間は暇になるからだ。