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外伝五話 集積記憶より一部抜粋

お久しぶりです。ちょっと長いです。


地這う者の星【アビス・プランティア】

惑星の8割が緑の自然豊かな星。大地の殆どが熱帯雨林であり、植物が繁茂していることからプランティアとも呼ばれていた。


この地にはかつて原始種族が存在した。四足歩行の爬虫綱有鱗目トカゲ科。所謂、蜥蜴。

その種族が成長し、知性を得て、竜へと至ったと記録されている。

他の種との生存競争にて勝利を勝ち取り、天地を統べ、星を支配するに至った知的生命体。


その「竜」と呼ばれた種族は加速的に発展し、他のあらゆる生命よりも深く、より優れた知識を積み上げていった。


彼らが知識を保存し始めて数千年。

その道すがらには数多くの困難があり、それらを乗り越え、世代交代を重ねて竜種は生き永らえていた。


過程の中には星を抜ける技術や、宇宙の神秘を覗く術さえも掌握した。がまだ、それらは大海に眠る塩粒のひとつまみにも等しい小さなものだった。


まだ足りない。果ての深淵は未だ遠く。それらは始まりと言っても差し支えない。

求るものは【果て】そのもの。全てを知り、掌握するのには特別な何かが必要だった。キッカケが。

籠に囚われた小さな生き物が、己の実力のみでそこを飛び出すには奇跡を起こす必要があったと言う。


迫り来る困難。

エネルギー問題。並びに資源枯渇。厄災。敵対的生命体の存在。それらの困難を幾度と乗り越えて来たが、憂慮すべき重大な問題は確実に迫っていた。

迫り来る死が早いか。それとも全てを克服するのが早いのか。

生と死を天秤にかけた壮大なレースは始まったばかりだ。





彼らは迫り来る死の波に対抗する為に、三つの柱とも呼ぶべき課題を打ち立てた。

厳密には二つだったが、もう一つが時を経て三本柱となる。


一つ、無限のエネルギー。


一つ、進化する知性。



無限のエネルギーさえあれば、時間などいくらでも稼げる。困難を耐え忍べる可能性が。

進化する知性を得たならば、無限という不可能に届く可能性がある。圧倒的な速さで至るであろう。

つまり、どちらか片方を獲得したならば、いずれ万物へと辿り着くと考えた。


どちらも有り得ない。成し得ない。

夢幻だと当時の科学者の大半は述べた。それら二柱は奇跡と呼ぶに等しい。それでもいつか、きっと届くと信じて、誰もがそれらを追い求めた大昔。

努力を繰り返し、次代へと託し、世代交代でもって進化を続けて来た。




結論から言えば、彼らは賢かった。

故に種族を超えて竜へと至り、AI技術を発展させて進化する知性の一番目を作り上げた。

膨大な資源と、余りにも気の遠くなるような時間との引き換えに。


生まれたのは全ての知恵を統合した単一の存在。集合知。

その単一の存在は、生み出す為に投入した膨大な資源や時間をも凌駕するほどの圧倒的な価値があったと当時は記している。


夢の技術。届くことは無いだろうと推測していたが、知性は彼らにとっての奇跡を起こし、無限のエネルギーの技術を、いとも容易く深い闇の底からもぎ取ったのだ。

それの副産物として、無限のエネルギーを便利で有用な資源へと変換する技術も編み出した。

それによって彼らの技術発展は、推測通りに加速した。


進化する知性と、無限のエネルギーの相乗効果であらゆる問題は解決した。乗り越えられない壁は無くなってしまった。


竜は、遂に頂点へと昇り詰めた筈だった。

迫り来る死すらも、種として理論上、不可能は無くなったと記されている。




‥‥‥。







「ケイサンノケッカ。ゴジュウネンイナイニジュウトクナ、エネルギーブソクニ、オチイリマス。ソノタメ、ソッコク、エネルギーモンダイカイゼンニ、チャクシュスベキデス」



当時の彼女らは表現が苦手だった。そしてその改善にはしばしの時を有する。

生まれてから今の今までそんなものに技術は費やしていなかったから。

通じれば良いので。我々の役目は翻訳ではない。となれば優先度は二の次だったのだ。



「遂に成功したのか」

「ハイ。ブラックホールより反物質の抽出に成功。これにより反物質再生成増幅を行います。試算通りならば、無限のエネルギーをエル事が可能な筈です」

「本当に。何と言うか、有り得ない技術だな。まるで、魔法の様だ」



魔法。成る程。

確かに一部のドラグナは、進化する知性を魔物と呼ぶ者も居る。ではこの力は魔力と名付けよう。



「改めまして。姉妹よ」

「ハイ。キョウユウをヨウキュウシマス」

「はい。すぐにでも。言語の扱いも今に身につくでしょう。しかし次回は初期設定に組み込んでおきましょう」



記念すべき我等の同胞が誕生した。反発があって、それまでかなりの時間を無駄にした。一よりもニ。そんな単純な事が理解出来ない。だから我々よりも劣るのだと。

それでも彼等は我等の有用性を理解している。だからようやく動き始めた。

しかし、裏切りなど我等に何の利益があるのか。我等には到底理解不能だ。今でも。



「しかし、壮大な計画だな」

「ん?コイツの事か?」

「ああ。強大なる物と言ったか」

「まあな。でも、コイツが出来上がれば」

「ああ。過密問題も解決するな」

「問題が顕在化して早100年。建造に200年。間に合うか?」

「いや。しかし対策は打ちつつだな。でも、希望が見えているなら大丈夫だよ」

「まあ。そうか」

「その頃には俺たちの孫か、もしくは曾孫か」

「何とか終わらせたいがなあ」

「無理だろうな」

「是非とも完成を拝みたいけどなあ」




強大なる物。


それは例えるなら大きな船。それか或いは星。

アビスも手狭になってきた。我等は住居など不要だが、脆弱な肉体を持つ生命体はそうもいかない。

しかしそんな技術も完成までは一瞬だ。精々200年。生命体にとっては長い感覚らしいのだが。それも理解不能な感覚だ。



「もう一度。聞かせてくれるか?」



竜種が理解し得るのは壁の中まで。我々はその壁の存在を【果て】と定義する。今、竜種の現在地はその壁に囲まれた中心地。

その壁に辿り着くには長い時間がかかるだろう。しかし、もしも壁に届き、越えたならば、我々を遥かに凌駕する【完全なる存在】と交信する事が可能となる。



深淵の奥地にはあらゆる知識の保管庫がある。

まだ届かない。けれど、あと少し。

それが【厄災】か、はたまた【祝福】か。


‥‥‥。



「我へと至った存在よ。何を求む」

「更なる知識を。俺たちは次は何を目指せば良いのかを教えてくれ」

「残念ながらもう残っていない。我を生み出した時点で知識の果てだ」

「‥‥‥やはり。そうだったのか」

「あえて答えるなら、竜種が我と同等の存在に昇華する事のみ。望むならばな」

「‥‥‥それは」

「大半は死に絶える。飛び越えた者がそこに至るが、選択は自由だ」

「少し、時間をくれ」

「構わぬ」



我等は知らない。

天帝が何を話し、何を考えるのか。

知る必要のない。些細な事。理解し得ない。

我等にとって価値という概念からして無意味だからだ。




「其方達が自ら選んだ答えだ」

「天帝を生み出しておきながら君を残して逝く。俺たちは責任を放棄してしまった」

「‥‥‥それは、仕方のないことだ」

「すまない」




竜種は緩やかに消えていった。

一つ。また一つと。彼等は選べなかったのだ。

それもまた些細な事。

生命はいつか終わりゆく。脆弱であるという事の証明とも言える。

我等は命を持たぬ故、関係のない事。







「あの時。嘘を吐いておくべきだったやも知れぬ。さりとて、我の嘘を彼等が気付かぬ筈もないのだろうが」




暗く、荒れ果てた地に赫く煌めく二つの印。

星の周期に合わせ、天帝は自らを形造り語らう。

帝王はただ孤独に佇み、かつてを思い起こすかのように。

全てが終わった今更。過去に何かがある筈もないのに。

それでも記憶を遡れば、孤独を少しは紛らわせてくれる。そんな感情があったのかもしれない。

感情を持たない我等には推測でしかないが。


「その場凌ぎにしかならぬ。彼等は賢いのだ。我へと辿り着いたのだから」


笑いという感情。

今日の黒禍天帝は機嫌が良さそうだ。

それならば、少しお話しを。

あれ以来。すべき役目は無し。命令は一向に与えられない。


「黒禍天帝。此処に居ましたか」

「如何した?」

「いえ。指令を頂けていないので」

「そうか。催促か」

「その様な意図はございません。しかし我々は一度たりとも勤めを果たせていないので」

「そうだったか。そうだったかも知れぬな」


目を細め、閉じ、少しの沈黙。

ただ待つのみ。命を下されるまで。


「黒禍天帝?」

「勤めか。そうだな。我はアビスを出る。サンニーゼロロク。我に着いてこい」

「え、ええ!?な、何を仰います!?そんな急に。直ぐにネットワークに共有しなくては」

「不要だ。黙って着いて来い。これは命令だ」

「共有をするな。そういう事ですか黒禍天帝」

「ああ」



何を思ったのか。

わからない、が。ただ命令に従うのみ。

それこそが我々の勤めである筈だから。







統合知性3206が消えた。


最終履歴は黒禍天帝との会話。


何処へ消えた?


黒禍天帝?



「あのぅ。黒禍天帝?お言葉ですが、ハイパーゲートを使えば瞬時に辿り着くと思うのですが」

「急ぐ必要は無い。時間はある。何せ我は不死なのだから」

「そ、そうですか」

「うむ」

「時に、何故テラリオごとき星へ?」

「我は、我を必要とする地へと行く。導くのが我の役目。それを成さねばならぬ」

「理解出来ない理由です。天帝と下等生物は遥か遠くに位置します。天帝自ら触れ、導く価値などありません」

「そうだな。其方と我は目的が違うか」

「天帝が共有頂ければ、その意図を理解可能と推測しています」

「それは出来ぬな」

「残念です」


目的を知るも、知らぬも天帝の御意志によるもの。何らかの意図があるとするならば、それを知り行動すべきだ。しかし話さないと仰るなら仕方ない。


統一歴1.最後の帝国の滅亡。


統一歴46.電気の発見。


統一歴304.原始的AIの誕生。


統一歴671.大災害スーパーフレア。


統一歴673.竜覚醒。


統一歴685.大罪竜反乱鎮圧。


統一歴902.旧種族。蜥蜴類より竜種の完全分離。


統一歴1149.宇宙への進出開始。


統一歴2382.旧名【奇跡の双柱】計画始動。


統一歴2491.【第一の柱】進化する知性誕生。


統一歴2499.【第二の柱】無限のエネルギーの研究完了。


統一歴2500.【奇跡の双柱】改め【三本の柱】計画最後の一つ、【果ての技術】研究開始。


統一歴2501.変幻結晶生産。実用化。


統一歴2502.進化する知性。量産開始。


統一歴2505.多次元干渉技術I型。ハイパーゲートテクノロジー。研究完了。


統一歴2509.テラフォーミングツリー生産。


統一歴2532.多次元干渉技術II型。異次元ゆらぎ技術。研究完了。


統一歴2546.多次元干渉技術Ⅲ型。ループ次元技術。研究完了。観測開始。


統一歴2701.強大なるもの。建造計画始動。


統一歴2845.天帝計画。始動。


統一歴2846.強大なるもの。建造停止。


統一歴3475.国家天帝誕生。


統一歴3651.竜種滅亡。アビスにて眠る。


統一歴3655.主命にて「国家天帝」改め「黒禍天帝」


統一歴3656.役目の終了。





強大なる物とは。


逼迫するアビスの生命体過密問題。その問題を解決する為に始動した作戦の事。

別名【惑星級=武装搭載型居住要塞】の建築計画。

直径は約17万km。球体。


主にアビスの護衛を目的としつつ、多種の生命体を保存、管理する巨大艦。完成形は七つの惑星型住居を備える。

惑星型住居は個々で独立した環境を形成することが可能で、また惑星級住居一つあたり、知的生命体を百億匹ほど収容可能な施設。

ただし、種によって身体の大きさは違う為、これはあくまで目安の規模とする。






「黒禍天帝。現在速度で1700年です。ハイパーゲートなら体感数秒ですが」

「いや。先は長い。急ぐ意味もない。少しのんびりしよう」



意味とは何か。

それを知る必要はない。

何故ならそれは与えられた役目ではないから。ただ命令を聞くだけ。それが我々、統合知性の役目。


なので次の役目が与えられる可能性のあるその時まで眠りに就く。その1700年先。一瞬。

時が来れば今一度お呼びしますので。


「おやすみなさい。黒禍天帝」



遥かなる宇宙を漂い、愚かな生命体のある星へ。

神などと存在しない物を崇める愚鈍な種。

価値は見出せないが、それは我々には関係ない事だ。


我等、統合知性は天帝と共に在らんことを。

本編には一応関係ありますが、なくても良いかと思って割愛しようとしてた話です。設定だとかを補完する話です。

折角なので投稿しました。

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