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そっとしておいてくれ…!

今、呪文を唱えた瞬間、自身の白かった翼は漆黒の闇色の翼に、瞳を深い海の色から赤黒い血の色へと変え、頭上の…所謂天使の輪っかとやらは砕け、かわりに禍々しいツノを生やすことになる。

目の前の親友二人は言葉を失い、ただただ呆然と此方を見ていた。

そして時計の針が進み、ちょうど良く鐘がなったところでこの部屋にいる桃色の髪を持つ少女が口を開く


「どうして…」


と。


…事の発端はこうだ、まずは順を追って説明しなければならない。


ーーー

俺達は前述して解るかも知れないが天使だ。

俺だけは天使だった、と記述するべきかもしれないが。

まぁ、細かい事は良い。


この世界、いや、この天界で天使になるには条件がある。

人間はこうだ


一、心の清らかな者


二、若くして死んだ者


三、徳を積んだ者、或いは人間以下の扱いを受け、酷い仕打ちを受けて尚耐えた者


人間の魂から天使へ転化する条件の大部分はこれだ。

下界では貧富の差が激しい、それに加えて戦争も絶えず魔物さえも出るし、奴隷などはもちろん当たり前の事の世界だ。

だから神の慈悲(笑)で三番目の項目があるらしい。


次は妖精の類の条件だ。


一、癒しの力や護りの力の保持者


二、博識である


妖精の条件はたったこれだけである。

何故かと言えば本質的な話で、彼等は嘘を嫌い、悪を嫌悪する、天界の天使にするには最適な種類だからだ。

一の項目をクリアすれば無条件で審査にかけられる。


最後に人間意外の動物の条件だ。


一、何かへ忠義を尽くした者


二、一族の長等頂点に立ち、皆を纏めた者


三、生活をする為意外の略奪、暴力等をしなかった者


大部分はこれだけで、他に細かい物がいくつかと言ったところだ。

人間意外の動物は忠誠心等を要求される意外、特筆することが本当に無い。

妖精達の次に素直だからだ。

動物は転化時に人間の姿を与えられる、然し生前の姿も併せ持つと言う結構便利な特質を持つ。

俺も動物の魂から転化したんだ。…まぁ今はどうでも良いケド。


因みに親友二人は、レイは人間、ユキは妖精から、と言う全員バラバラの出だ。

彼等とは偶々一緒に審査を受け、結果を待っている時に同期と言う事も有り打ち解け、それからはずっと一緒に居たから仲良しトリオ、なんて言われてたんだ。


レイは人間からの転化でどうしても神聖な技が使い辛いらしく、呪術を使って戦う…それ故に自身に呪いを受けやすいらしい、敵からよく呪詛を貰って苦しんでいたのをよく見ていたよ。

ユキは妖精の頃使っていた弓術を使って戦う。

彼女はドジだけど頭もそこそこ良く、支援系の魔法も得意だったから有能な後方支援型の天使だ。

その頭を使ってレイの呪いを解くのを手伝ったりしていた。


それで本題。

何故俺が悪魔へと堕ちたかと言えば、レイの為なんだ。

動物から転化した俺はどうしてもそう言う類の知識には疎く、ユキの様にはいかない。

そしていよいよユキの頭脳を持ってしても解呪が出来なかった、厳密に言えば犠牲無しには解けない呪詛を受けてしまったレイを見て、俺がやるしか無いって思った。

だから、身を落として呪詛や怨嗟の念で包まれた様なヤツが沢山いる悪魔になった。


勿論悪魔になった瞬間色んな事が解る、呪術の解き方なんて赤子の手を捻るくらい簡単だった。

悪魔術を使う迄は天使のまま、仮の悪魔なんだけど、やっぱりその力を使わないとレイの呪詛は打ち消せず、使ってしまった、という訳。

冒頭迄の説明はこんな感じ。


そして今からちゃんと事情を説明して…いや、それじゃあ二人が気に負ってしまう。

じゃあ…


「どうしてって、天使の生活に飽きたから。別にレイ助ける為に堕天したんじゃ無いよ、悪魔になれて嬉しいからさ、気紛れで治してあげただけだし。…じゃあね」


成る可く悟られない様にとうまく言ったつもりだ。

話している途中、ユキの真ん丸で大きい瞳が悲しみから潤んだ事も、レイが怒りと他の複雑な思いから顔を顰めた事も、全部見ていて心が痛んだ自分の心も、全部解らないフリをして、もう用は無いと部屋を出る。


これからは悪魔として生きていくのだから、極力彼等とは関わらず、魔界で食うに困らない様に雑用などをこなそう、そう方針を決め魔界へと飛び去った。


…親友二人が急いで追いかけた時にはもう、リオンの姿はどこにも無かった。

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