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ブロークンハーツ  作者: 橘光
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第3話 不慣れな日常

テストがやっと終わりました。これから夏休みに入るので、できる限り出していこうと思っております。

時刻は午前1時40分、そんな深夜に遥は起きた。いや、『起こされた』の方が正しいだろう。ベッドの後ろ側の台にある、ミストランスプレーの振動している音に起こされたのだ。起きぬけにミストランスプレーを取り、不機嫌そうな表情を浮かべる。彼は静かに計算し、自分が3時間程しか寝られていないと気付いた。さらに、この状況でよりにもよって空腹感を感じた。失われた食欲がたった今戻ってきたのだ。もちろん今の彼にとって絶望的な状況だ。ミストランスプレーの振動は、次人種の出現を意味する。遥がどんな状況でも、夜になれば次人種は現れて人を襲う。人の命を守る行為は昨日今日始めたことではないが、この眠る暇がないことだけにはいつまでも慣れなかった。

「……くそっ…!」

昨日の出来事もあり、ストレスは最高潮に達していた。そんな辛さから出た一言の音量を下げながら、ベランダに出てため息をこぼす。

「……寝かせてくれる日があっても良いじゃねえかよ…!」

独り言でそんな愚痴をこぼし、ベランダに向かった。右手でミストランスプレーを持ち、ボタンに手をかけた。

「ミストアップ!」

『Stand up! to protect! Fight! Fight! Fight!』

スプレーの先端から噴き出した白い気体が遥の全身を包み、鎧が装備された。

「……2体か…」

壁にスプレーの光を当てると、感知された次人種の数と距離が表示される。今回は

『南東690m:2体』と映し出されていた。


次人種のもとまで着くのに、そう時間はかからなかった。次人種の後ろから突っ込み、遥は次人種の背中をすり抜けた。次人種に敵意が無い時の次人種の体は完全な気体となっており、遥は物理的に干渉することができない。しかし、それでは次人種も攻撃が不可能なため、攻撃の意思があるときに体を硬化させるのだ。そこをカウンターとして攻撃を返すのが、主な戦術だ。

「さて、第2ラウンドだな……いや、勝ち抜けしたから2回戦か。」

遥の存在に気付いた次人種が拳を伸ばす。ライトニングを手に持った遥が、跳び上がって拳を避ける。しかし、跳び上がった目の前からもう1体の次人種がパンチを繰り出してきた。

「おっと…!」

拳にライトニングを突き刺し、そこを軸に前方向に縦回転して次人種の手首に乗り移る。手首を後ろ方向へ蹴り、その反作用で次人種の顔面を目指す。この間、わずか3秒であった。

「お返し…だ!」

ライトニングの大振りにより、次人種の顔の右半分がえぐり取られた。しかし、胸元のコアを破壊しない限り次人種が死ぬことは無い。後ろに回って空中でバランスを崩した遥に対して、次人種は後ろ回し蹴りをした。

「ぐっ……!」

遥は次人種のかかとに大きく飛ばされた。それでも、転んでもただでは起き上がらないという意地で、飛ばされた先にいた次人種を狙う。遥は、仰向けの状態で跳びながら、もう一人の次人種のパンチを待った。しかし、実際に来たのは背中側からの衝撃だった。

「かはっ…!」

遥は、自分が攻撃しようとしていた次人種に蹴り上げられたのだ。これを一般人がくらっていたのなら、痛いでは済まないだろう。しかし、遥はこれを受けて衝撃で少し飛び上がった後、蹴り上げてきた次人種に対してライトニングを投げた。それは見事に胸元に刺さった。悲痛な雄たけびを上げる反応を見ると、少なくともコアへの攻撃はできたらしい。

「よしっ!」

遥は右腕で着地をすると、ライトニングの刺さった胸元を目がけて跳び上がり、斜めに刺さったライトニングを手にして右下の方向へスライドさせる。

「はあぁぁぁ!!」

これによって、コアが破壊されて原型を維持出来なくなった次人種は気体と化して滞留する。地面に着地した遥にもう1体の次人種が後ろから走ってきた。

『Radiation!』

ミストランスプレーのボタンを押すと、白い気体が噴射されて滞留する。やがて、ライトニングを軸にして渦を巻き、ライトニングに気体が吸収される。その間に、次人種が拳を遥に伸ばしていた。

『Rightning Attack!』

「オラァ!!」

後ろを向きライトニングを大きく振り下ろすと、遥に迫っていた拳を一刀両断した。さらに次人種の胸元まで跳びこみ、コアを斬りつけた。コアが破壊され、次人種は一気に気体と化した。

「ふう……」

『Absorption』

滞留する気体を回収すると、次人種から1人ずつ半透明な人が出てきた。1人はスーツを着て腕時計を気にしている男性、もう1人はじっと佇む女性の姿だった。2人は粒子となり、空に昇っていく。遥は見送ることしか出来なかった。

「…どうか安らかに……」

人がまた天に昇るのを見て、精一杯祈った。人を守る行為は昨日今日始めたばかりじゃない。それでも、慣れないことがもう1つあった。犠牲者を生んでしまった罪悪感は、どうしても冷たく上にのしかかり、慣れることができない…慣れてはいけない気がしてならないのだ。


【次回予告】

「……ここを…乗り切れば……ここを…」

「いや、今日は頑張ってたと思うぞ?」

「……やめといた方がいいと思うけど…」

「あほくさ……」

「ありがとな、乗ってくれて。」


次回 第4話 俺一人で十分だ

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