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ブロークンハーツ  作者: 橘光
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第2話 カレーとストレス

またテスト期間に入り、遅れます。

申し訳ございません。

「……よしっ!終わり!」

次人種を倒して、全身の力を抜く遥。その後ろで、ライトニングで倒した次人種の煙がたちこめる中、煙の中に1人の男性の姿が。とはいえこの男性、実体が無ければ自我があることもない。体は半透明で、目を凝らせば後ろの景色が見えるほどだ。男性は、遥に対して静かに会釈をした。が、これにも大きな意味はないだろう。遥はミストランスプレーの先端を180度回転させ、煙に向けてボタンを押した。

『Absorption』

音声とともに、煙がスプレーに吸い込まれていく。煙が完全に吸い込まれた事を確認すると、ボタンに圧をかけるのをやめて先端を元に戻す。実体の無い男性は煙が無くなると、体が細かい粒子となって分解される。やがて、その粒子は空気中で消えた。



この煙は人間の記憶で構成されており、次人種は人間の無数の記憶からなっている。というのはあくまでも推測だが、確証は持てる。あの煙を吸い取るとき、あの実体の無い人間の記憶が頭に入ってくるのだ。今も、先ほどの男性が会社で頭を下げている時の記憶がはっきりと確認できる。おそらく、あの男性も次人種に食べられた1人だったのだろう。

「どうも、いい気分にゃなれないな……」

そう呟きながら、スプレーを右腰にあるホルダーにセットする。そして、まだ夕食が出来上がってないことを祈りながら帰還した。



ベランダに戻ってから、スプレーの先端を180度回転させて自分の胸元に当てる。

『Absorption』

ボタンを押すと、音声と共に鎧が吸い込まれていく。怪我をしている場合だと、吸い込まれると同時に怪我も治る仕組みになっている。脱皮をしているようなものだろう。時刻は6時半を示している。よく嗅がなくてもスパイシーな香りが沈黙の部屋にも届いており、カレーの完成は近いようだった。遥は落ち着いた動きで机に戻り、参考書を開いて、内容を順番に思い出す。ノートは半分が埋まっており、右ページにシャーペンが侵攻してくるのは時間の問題だった。明日は世界史の授業で小テストがあるので、準備をしっかりとしておくのだ。



「ご飯できたよー!」

時刻は7時13分、智子の声で遥は集中から解放される。スパイシーな匂いが鼻を刺激してきて、帰ってからずっと空腹だったのだ。遥はノートを開いたままにして、部屋を出て一階のリビングを目指す。階段を降りる毎に、カレーの匂いは強まっていく。リビングに入ってすぐのテーブルには、すでによそられた三人分のカレーと……芋焼酎が置かれていた。

「……お酒弱いのに好きだよな…」

呆れたような口ぶりで遥が口を開く。

「何を今さらって話だけどさ、カレーにお酒ってどういうこと?」

既にリビングにいた一ノ瀬鮎(いちのせ あゆ)も呆れながら質問した。

「お酒は何にでも合うのよ!」

「「その理屈はおかしい」」

鮎と遥の声は偶然にも重なり、姉弟らしさが見受けられた。

「まあまあ、多分おいしいよ?」

焼酎の入ったコップを片手に、カレーをほおばる。

「…吐くなよ。」

「…頼むからね。」

二人は神にでも祈るような気分だった。そんなことはお構いなしに、焼酎を口に入れる智子。そして、神は彼等を裏切った。

「うん、やっぱりおいし…」



※ここから先は、皆様に不快感を与える恐れがありますので、文章表現は省略させていただきます。音声だけをお楽しみください。なお、苦手な方は読み飛ばしていただいても問題ありません。



「ああもう、またこれだよ!飯時だっての!」

「吐くくらいなら飲まないでよ!」

「げほっ…いやでもおいし…オロロロロ…」

「説得力無いんですけど!?」

「トイレに行け!誰が後始末をするんだ!」

「オロロロロ……おえぇ…」

「お願いだから落ち着いてから行って…」

「この道しるべみたいなのも掃除しなきゃなのか…」




結局二人は食欲を失い、カレーを半分ほど残してしまった。むしろ、半分も食べられた自分たちを感心しているほどだ。なにせ智子の嘔吐物は二人が掃除し、智子とエチケット袋を寝室まで運んでから食卓に向かったのだから。智子は、酒に弱いくせに酒が好きだ。そのせいで、先ほどのような形で遥達に迷惑をかける。こればかりは、二人も頭を抱え込むだけしかできない。何故なら酒を飲まない日が続くとストレスで吐くからだ。飲めば吐く、飲まなくても吐く。どちらにしろ迷惑極まりない。

「あーーーー!」

そんな智子に迷惑をかけられた遥。夕飯があまり食べられなかったこともあり、ストレスが溜まる。やり場のないイライラは、遥を精神的に苦しめていく。

「カレーだから酒は飲まないと思ったのに……」

カレーと聞いて嬉しく思ったのは、こういう理由である。遥はストレスを感じながら眠りに入る。しかし、明日小テストがあることも思い出し、ストレスはピークに達していく。

「くそっ!」

ストレスを抱え込みながらベッドの中で寝返る。少し時間はかかったが、午後11時、夜は彼を眠りへと誘った。沈黙の部屋の中、時計の針だけが音を出しながら動き続ける。しかし、遥の夜はまだまだ長かった。

【次回予告】

「……寝かせてくれる日があっても良いじゃねえかよ…!」

「さて、第2ラウンドだな。」

「かはっ…!」

『Rightning Attack!』

「…どうか安らかに……」


次回 第3話 不慣れな日常

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