第12話 シャドウ
コロナが大変な時期ですね…。私も気をつけます。
アラームの鳴り響く部屋の中で目を開けた。そして、今までの過去の光景が夢であったと理解する。見慣れた壁が目の前に広がる。傍にあったスマホを手に取ってアラームを止めて、状況を整理する。今まで見ていた夢のこと、全て覚えている。
「……最後まで見せるんだろうな。」
こんな夢を見せる自分の脳に文句を頭の中で浮かべ、体を起こして下に降りる。階段を降りきったところで鮎と会った。
「おはよう……」
「おは…ふふっ…すごい髪…」
鮎が遥を見るなり笑った。遥が急いで鏡の前に立つと、鏡には漫画さながらのツンツンボサボサな頭髪をした自分がいた。何故こうなったかは誰にも分からないが、遥にはこれがくしなどではどうにもならないことが分かった。今の時刻は6時42分、朝の勉強時間をシャワーに回すことにした。
シャワーから出てくるお湯で髪をならす。そしてあの時の次人種が気がかりになる。コアを破壊した次人種を連れて行ったガストの同類、あれの存在が十分脅威だが……連れていかれた次人種も脅威だ。煙を回収できずに復活した次人種はパワーアップしてしまう。煙の回収を邪魔されて復活したとなると、必然的に以前よりも強力な次人種と対峙することになる。考えただけでため息が止まらない。
「つぎは……勝たないと…」
洗い流されていくシャンプーを眺めながらつぶやいた。
「廃品回収お疲れ様~っと。」
道の真ん中で同類を敬うガスト。道行く人達は、この化け物2体に気付かない。
「なに、ただ奇襲をかけただけだ。このくらい容易なことだよ。」
そう言って黒い球体を前に出す。
「さっすがシャドウ先生!夜のお仕事はお手の物ですな!」
「その持ち上げるような呼び方はやめてくれ……」
そう言ってシャドウは不機嫌そうにそっぽを向いた。
「で、どうだった?」
座り込んだガストがシャドウに聞いた。
「何がだよ……」
「遥のことだよ、シャドウ先生から見たらどうだった?」
「………はぁ…」
呼ばれ方にケチをつける気力も無くなったのか、そのままガストの隣に座った。
「はっきり言って、遥にして正解だったな。」
「ホントそれな、想像以上だぜありゃ。」
「待ち伏せからの不意打ちは確実に致命的だった。だが、結果的に遥は勝ってみせた。」
「さらに後ろから来たシャドウに対しても、先手をくらったのにあの反応……戦闘センスの塊か、経験の賜物か……」
「どちらもだろう…知識だけでは、あのように上手くはできまい。」
そう言うと、シャドウは黒い球体を前に出す。
「こいつを今夜出して……」
「また観察といくか…!」
そう言ってガストは大きく伸びをした。伸びが終わると、立ち上がって
「んじゃ、また今夜な。」
と言って自分を風で包み、消えた。
「全く……結局全部やるのは俺なんじゃないか…」
不機嫌そうに愚痴をこぼしたシャドウ。次人種の入った球体をしまいこみ…
「さて、ちょっと遥を見るか……」
自分の影に溶け込み、移動を始めた。
そのころ、遥は授業の真っ最中。とはいえ、あまり集中は出来ていないようだ。
「で、この高次方程式の解き方は意外に簡単で……」
橋本先生の授業の声も、あまり届いていない。ノートは取れているが、話が頭に入っていない状態だ。何しろ、今夜は確実に苦戦する戦いが待っている。
「じゃ、ここを……遥。」
「は、はい。」
突然指されたことに戸惑ったが、思考を回転させる。
「えっと……x=±√2、±√3…です。」
「うん、正解だね。」
普通の人にとっては絶望的な状況だったことだろう。しかし、遥はスプレーの影響の記憶力で、聞き流していた情報を辿ることで事なきを得た。この力も悪くはない。だが、頼りすぎてもだめだ…。そう思っても、このようなことが少なからずある現状なのだ。今夜の決戦のことを考えながら、また話を聞き流していく遥であった。
【次回予告】
「……あいつだろうな…」
「…嘘だろ……!?」
「来やがれ!」
「見つけた、あいつを倒す方法!」
「そいつは、まだ早いな。」
第13話 決断の決戦日




