第9話 記憶の家族
高校生活がちょっと忙しくて、なかなか遅筆になってきています……。
もっとペース上げれるように頑張ります。
「はあ…」
再変身をしてベランダに到着した。煙を回収できなかった次人種は、復活して強くなる。この知識は前からあった。しかし、今回このような事態になってしまった。あの強くなった次人種は、また俺を狙いに来る。
『Absorption』
そう考えながら変身を解いた。なぜ知識があるのかという質問は、俺には返答が難しい。以前この現象を体験したことがあった。いや、その前から知識そのものはあった。
俺の一番古い記憶は、産声を上げた時だ。生まれた頃から記憶があり、ある程度の知識があった。その時にあった記憶は、次人種についてのことでいっぱいだった。変身の仕方、次人種の存在や目的、そして倒し方と煙の回収の必要性も。更には、殺された人間の末路までが頭の中にあった。言語をまだ取得していないにも関わらず、その知識を理解していた。本能なのか感覚なのか、知識の意味だけは理解していた。
スプレーは体の中にあった。レントゲン検査により、小さな体の中に異物が入っていることが分かった。一般男性の手のひらサイズで、円柱のような形状。それが心臓と重なるように写っていたのだ。しかし、身体的な異常も無く、無理やり出そうにも赤ちゃんの体にメスを入れるリスクは小さいものでは無い。よって、スプレーが体から出されることは無かった。というのを、医者と母親の会話から聞いた。そうして間もなく、俺は捨てられた。体のスプレーのことなのか、他に理由があったのか、定かではない。ただ、寂しかった。施設の前に、置手紙と一緒に自分が置かれ……
『ごめんね…』
最後にそう言っていた。籠に入っていた俺は、名前も知らない母親の背中姿を見つめることしか出来なかった。冬なのに、ちょっとだけ暖かかった夜だった。布団の中に何かあったのだろう。俺が見つけられたのは、その暖かさがちょうど無くなりかけた時だった。
施設に入って最初の記憶は『名前』だった。おそらく、医療関係の検査なども受けただろうと推測した。その後に名前をつけられた。名前は『遥』、そう名付けられた。どうやら、俺が一番預けられ方がかわいそうだったらしく、『どうかこの子に春が来てほしい』という意味を込めたそうだ。それから警察などにも相談されたのだろうが、あの名前を知らない母親がどうなったかは今でも知らない。生きているのか、もう死んだのか。仮に生きていてもどんな状態なのか、誰も知らない。
やがて、俺は少女に出会った。『鮎』と名付けられた少女だった。当時の鮎は4歳、『母親の好物が鮎だったから』という由来があるとその時知った。鮎は俺に強い興味を持ったようで、まだ生後7ヶ月である俺をよく見に来ていた。
『ねーねー、このこなまえなーにー?』
『はるか君ってお名前なの。かわいいわよね。』
初めて鮎の声を聞いたのは、その会話の声だった。わくわくしながら職員に質問していた姿を覚えている。
『おきてるー!ちっちゃーい!』
大きな声で俺に近づいた。ベッドの柵の隙間から俺を覗いていた。おそらく、椅子か何かに乗って見ていたのだろう。そうでなくては、4歳の身長で高いベビーベッドに届くはずがない。
『おおきくなったら…いっぱいあそぼうね!』
そうして指切りを強いられた。思えば、この頃から鮎と一緒にいた。本物の姉弟みたいな、そんな光景だったのだろうか。
俺が4歳になった頃、鮎と一緒に引き取りたいという人たちが現れた。『一ノ瀬』という苗字の夫婦だった。女性は一ノ瀬智子、男性は一ノ瀬大翔と名乗った。俺たちは、すぐにその夫婦に引き取られた。その夫婦と家族になってから、血は繋がっていないが二人を両親と認識するのに時間はかからなかった。2人は、俺と鮎を愛情込めて育ててくれた。しかし、5歳になった頃の朝。目が覚めると、ベッドの上に筒状の物体があった。それが『ミストランスプレー』だということにすぐ気づいた。形状こそ初めて見たが、これがミストランスプレーだということを直感に近い感覚で認識していた。
その夜、生まれて初めて変身をした。
『Stand up! to protect! Fight! Fight! Fight!』
感想としては、胸の高鳴りを感じた。知っているのと、実際に体験してみるのではまた違うものがあった。いくら俺でも、あの時は5歳だった。ヒーローに憧れるのも今は納得できる。その次は、ライトニングが出せることにも驚いた。出せるというよりは煙で形成されたに近いが、かっこいい鎧とかっこいい剣。まさに子供の…いや、男子の憧れだ。次に驚いたのは、強化された身体能力だ。5歳の体にして、100mを7秒足らずで移動できた。あのときの興奮を今でも覚えている。その小さな体で化け物と戦う、正義のヒーローになれるのだ。誰かを救うことができるんだと。しかし、その時の俺はまだ知る由も無かった。『知っているのと、実際に体験するのは違う』ということを、5歳にして痛感することになったのだ。
【次回予告】
『ちょっと聞きたいことがあってな。』
『……よく分かんない顔だね。』
『……夜?』
『う…うん。』
『ああ、ちょっと…吸血鬼になりにね。』
第10話 探り合い




