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謎のおっさんオンライン(改)  作者: 焼月 豕
Bigining of the Tyrant
21/38

開発チームの殺意!卑劣な罠を打ち破れ!(4)

 その後、おっさんとカズヤは危なげなく第三層を突破した。道中の宝箱からドロップしたアイテムは、生産素材をおっさんが、換金アイテムや現金をカズヤが受け取った。

「良い素材が結構出たな……っと、ボス部屋か」

「ああ、ここが終点のようだな。準備はしっかりしておこう」

 二人はウィンドウを操作して新たにスキルやアビリティを習得し、回復魔法やポーションでHPとMPを回復させた後に、料理アイテムを取り出して食べた。

 料理はダンジョンに入る前にクックから購入したビーフカレーだ。具材は牛肉と玉ねぎ、人参のみだ。シンプルイズベストである。スパイスが効いており、とても辛い。

 辛いけど美味い?美味いけど辛い? 

 いいや違う、そのどちらも間違いではないが正解とは言い難い。辛いから美味いのが正解である。その辛さをホカホカのご飯が優しく中和する。圧力鍋でじっくり煮込んだ牛肉もたまらなく美味い。二人は黙々とカレーを平らげ、三杯ずつおかわりをした。

 高品質な料理は美味いだけではなく、各ステータスが上昇したり、特定の属性や状態異常への耐性を得られたりと、一時的に食べた者を強化する効果を持つ。これにて準備万端だ。

 全ての準備を終えた二人は、意を決してボス部屋の重厚な扉を開いた。

 ボスは全身を筋肉の鎧と、燃え盛る炎に包まれた巨人の姿をしている。その頭上に表示された名前は【レイジング・イフリート】。怒れる炎の精霊だ。その周囲には、取り巻きである数匹の火蜥蜴【サラマンダー】の姿もあった。

「こっちに気付いてねぇな。取り巻きから殺っていこうか」

「そうしよう。釣りを頼む」

 カズヤが言う釣りとは、釣竿や餌を使って魚を釣るという事ではない。由来はそれだが、この場合は敵を一匹ずつ誘き寄せる行為の事を指す。

 おっさんは狙撃銃型の魔導銃を取り出して、部屋の外からサラマンダーに狙撃を行なった。撃たれたサラマンダーが怒ってこちらに走り寄ってくる。

「【アイスボルト】」

 それによってカズヤの魔法の射程内に入ったサラマンダーに、無数の氷の矢が降り注いだ。弱点属性の魔法を受けてサラマンダーが倒れる。このようにして一匹ずつ安全確実に倒すのが彼らの作戦であった。

 順調に取り巻きを排除したおっさんとカズヤは、遂に本体のレイジング・イフリートへと挑む。

「やるぞ」

「ああ」

 二人が部屋に足を踏み入れると、イフリートが彼らに気付いて戦闘態勢を取る。そして取り巻きのサラマンダーにおっさん達を襲わせようと指示を出そうとするが、そこでようやく周囲にサラマンダーの姿が無い事に気が付いた。

「今更気付きやがったか、間抜けめ」

 おっさんがそれを嘲笑いながら、魔導銃剣のアビリティ【ストームラッシュ】を発動させる。消費MPが多く、一度使うとしばらくの間は使用できなくなるものの、効果時間中は攻撃力と連射速度が大幅に上昇する上に、視界内のどこにでも一瞬で移動できるようになる強力な効果を持つ。

「攪乱するぜ!正面は任せた!」

「了解だ!」

 おっさんが一瞬でイフリートの目の前に移動して、ブレードによる斬撃の連打を行なう。イフリートは炎に包まれた拳でおっさんに反撃するものの、おっさんはストームラッシュの効果で瞬間移動して、それを回避しつつ敵の死角へと潜り込んだ。

 そこへカズヤが二振りの剣を抜いて、イフリートに正面から戦いを挑む。

「【フリージングバイト】!」

 切断と同時に冷気属性のダメージを与える片手剣のアーツが命中し、同時に物理攻撃の際に自動的に魔法で追撃を行なうスキル、魔法剣の効果によって【アイスボルト】が発動する。

「かかって来い!」

 カズヤがイフリートを挑発し、アビリティ【プロヴォーク】を発動した。挑発によって敵対心を稼ぎつつ、冷静さを失わせて防御力を低下させる効果を持つ。

 それによって怒ってカズヤに攻撃しようとするイフリートに、おっさんは背後から忍び寄った。そして魔導銃剣のブレードを、二本同時にガラ空きの背中に突き立てる。

「【バックスタブ】!」

 おっさんが背中にブレードを突き立てたまま引鉄を引き、至近距離から魔力弾を連続で撃ち込む。それと同時に発砲の反動でブレードが傷口の中を動き回り、グリグリと抉って持続ダメージを与えると、イフリートはたまらず暴れ狂う。

「む!カズ坊、スぺブレ準備!三秒後に合わせろ!」

「応ッ!」

 大技の兆候におっさんが指図をすると、カズヤは疑う事なくそれに従った。直後、イフリートが高速で奥義魔法【インフェルノ】の詠唱を開始した。それは丁度、おっさんが予告した三秒後の事だった。

「【スペルブレイカー】!」

 直後にその詠唱が、カズヤの魔法によって強制的に中断される。詠唱時間が長めの為、ボスモンスターやプレイヤーといった強敵を相手に使うには先読みが必要だが、どんな魔法でも問答無用でキャンセルし、打ち消した魔法の威力に応じたダメージを与える必殺のカウンタースペルが炸裂した。

「チャンスだ、一気に決めるぞ!」

「ああ!まずは俺がやる!」

 大技をカウンターされた事で大ダメージを受け、イフリートの体勢が崩れた。おっさんとカズヤはそれぞれの武器を構えながら、イフリートの懐へと飛び込む。

「行くぞ、【パーフェクト・マジックエンチャント】!」

 カズヤが発動したアビリティは、一分間だけ魔法剣の発動率を100%に、効果の減衰率を0にする魔法剣士の切り札だ。これによって全ての攻撃で魔法剣が確実に発動し、普通に詠唱する時と同じだけの威力が出せるようになる。

 更に彼はアビリティ【ダブルアーツ】を発動し、二つのアーツを連続使用する。

「【双龍連牙】!」

 最初に使用したのは二刀流の奥義だ。大きく飛び込みながら、左右の剣で同時に強烈な刺突、更に交互に振り回しながら舞うように連続で切り刻む十七連撃技。パーフェクトエンチャントの効果によって、それら全てに魔法剣が乗り、更にその間に通常の魔法による攻撃も同時に行なっている為、凄まじい勢いでヒット数を稼いでいた。

 このゲームは攻撃を連続ヒットさせてコンボを繋ぐ事で、与えるダメージが少しずつだが増えていくシステムがあり、またそのコンボ・ボーナスによるダメージ増加量を増やすアビリティも存在している。

 それによって大幅にダメージ量を増加させた上で、カズヤが最後の攻撃に移る。

「【飛天龍王撃】!!」

 カズヤがダブルアーツにより準備をしていた二つ目のアーツ、彼の二つ名【龍王】の由来でもある、最も得意とする奥義【飛天龍王撃】を放った。絶大な威力を誇る代わりに準備時間が極端に長い事から実用性皆無の浪漫技だと言われていたその技を、彼は【魔法剣】や【ダブルアクション】との組み合わせによって自在に使いこなしていた。

 まず最初に突進しながら両手の剣による強烈な刺突で敵の防御を貫き、そのまま地上での連撃で敵をダウンさせる。そして敵を打ち上げつつ追いかけ、空中コンボへと移行。そしてコンボの締めに敵を地面に向かって叩き落としながら、自身は更に上空に向かって跳躍。最後に対象に向かって急降下してトドメの一撃を見舞うという、ド派手な二十七連撃アーツだ。

「【リンク・チェイン】!後は任せたぞ!」

「任されたぜ!」

 奥義を放ち終え、下がりながらカズヤがアビリティを使用して、おっさんを支援する。彼が使用したアビリティ【リンク・チェイン】は、自身の連続ヒット数をリセットして零に戻す代わりに、そのコンボ・ボーナスを仲間一人に譲渡するという物だ。

 それにより二刀流と魔法剣を組み合わせての連続奥義で稼いだ莫大なコンボ・ボーナスが譲渡され、おっさんの火力が飛躍的に上昇する。カズヤは単独行動(ソロプレイ)時にもテイミングモンスターに対してこれを使う事で、手軽に高火力の追撃を可能としていた。

「オラァッ!」

 おっさんが、その拳でイフリートを殴り飛ばす。渾身の一撃で、イフリートの巨体が宙を舞った。

 おっさんはカズヤが連続攻撃を行なっている間、ずっと力を溜めていたのだ。おっさんが使っていたアビリティの名は【フルパワーチャージ】。チャージ中は無防備になるが、力を溜めた時間に比例して次に行なう攻撃の威力が上がるという、単純明快だが強力な効果だ。それによっておっさんの拳に溜め込まれた力が、今解放された。

「まだまだ行くぜ!」

 ブラックライトニングを再び抜き放ち、おっさんは吹き飛ばしたイフリートを追撃する。巨大な二挺の魔導銃剣を豪快に振り回して、そのブレードでイフリートを滅多切りにした。そして最後に至近距離で銃口を突き付け、引鉄に指をかける。

「【バレットカーニバル】!」

 カートリッジ内の魔力弾が尽きるまで、百発を優に超える魔力弾を至近距離で叩き込まれる。それによって遂に、イフリートの体が崩壊していった。

「グ……オ……ォォ……オ……!」

 これで終わりかと思われたが、虫の息のイフリートが、最後の力を振り絞って立ち上がり、アビリティ【レイジングモード】を使用した。

「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「ちっ……しつけぇんだよ!」

 その肉体が黒く変色し、硬化していく。勿論、変化したのは見た目だけではない。

「オノレ……ニンゲンドモ……コロス……コロシテヤル!」

 殺意を漲らせ、イフリートがそう口にする。

「面白ぇジョークだ。笑わしてくれた礼に惨たらしく殺してやる」

「お前には無理だ。身の程をわきまえろ」

 こいつ喋れたのか。内心でそんな事を思いつつ、彼らはイフリートの殺害予告に対して不敵にそう言い放ち、トドメを刺そうと攻撃をする。

だが彼等の攻撃は全て弾き返され、ダメージを与えられない。

「物理・魔法ともに防御力が異常に上がっているようだ。耐性と、それから攻撃力も飛躍的に上がっている。どうやら一時的な強化能力で、死ぬ前の最後の足掻きのようだがな。このまま効果が切れるまで耐えれば俺達の勝利だ」

 カズヤがイフリートに起こった変化を素早く分析し、防御を固めて時間切れを待とうとするが、おっさんは構わずに前に出た。

「いい加減にしやがれ、クソ野郎が!」

 次の瞬間、おっさんが格闘のアーツ【発剄】を使用してイフリートを殴りつける。すると異常な値のダメージが発生し、イフリートの残ったHPがあっさりと消し飛んだ。

「バ……カ……ナ……」

 イフリートは吹き飛ばされながら「解せぬ」とでも言いたそうな表情を浮かべて消滅する。

「……そうか、その手があったか」

 カズヤが呟いた。おっさんが使用したアーツ【発剄】は、相手の物理防御力が高ければ高いほど与えるダメージが上昇する特性を持つ。その為、ほぼ無敵と言っていいほど異常に防御力と物理耐性が上がっていたイフリートに対しては、とんでもない威力が出る一撃必殺の技と化していた。

 余談だがこの時、モニターで一部始終を見ていた開発室長・四葉煌夜も、

「くそっ、その手があったか……」

 と息子と同じ台詞を言い、頭を抱えていた事を記しておく。

 こうしてイフリートを倒した二人は大量の経験値とゴールド、そしてボス討伐およびダンジョンクリアの褒賞として、多くの稀少なアイテムを入手した。

「ところで、目当ての物はあったか?」

「ああ。この宝玉だな」

 カズヤがドロップアイテムの中から、一つの丸い物体を取り出した。それはサッカーボール程の大きさの、巨大な赤い宝玉だった。

 名称は【火霊の宝玉】。これがグランドクエストの進行に必要なクエストアイテムだ。カズヤがそれを手にした瞬間、全プレイヤーのクエストウィンドウに記されたグランドクエストの進行度が上昇し、次の目的が表示された。

「次の目的地は水霊窟か。おっさん……」

「へいへい、手が必要なら呼びな。ただし今日は疲れたから、また今度な」

 おっさんは、不承不承といった様子でカズヤを手伝う事にしたようだ。

「ところで、その宝玉とやらを集めると、一体何が起きるってんだ?」

 四つの精霊窟を回るという事は、別のダンジョンでも今回のように宝珠を入手する必要があるのだろう。おっさんはその使い道を尋ねた。

「俺達が居る大陸中央部が、結界で囲まれているのは知っているな?」

「ん?おう、あの半透明のドームみたいな奴だろ?」

 彼らが話すように、大陸の外周部への道は現在、結界により通行不可能になっている。そのためプレイヤーの活動範囲は、城塞都市ダナンを中心とした大陸中央部のみに留まっているのが現状だ。

 おっさんも以前、大陸の西側に行こうとして光の壁に阻まれ、殴る蹴る等して何とか破壊しようとしたが、失敗に終わった事がある。当たり前である。それくらいで壊れるような結界があってたまるか……と言いたいところだが、おっさんならやりかねないのが恐ろしい。

 その結界を解除し、向こう側に行く為に四つの宝玉が必要なのだとカズヤは言う。

「成る程、それは分かった。で、これを四つ集めた後はどうすりゃいい?」

「あの結界を張った本人にこれを渡して、解除して貰う。そういう約束だ」

「……そいつの名前は?」

 その人物こそが、人類に残された最後の楽園を守るために、大陸中央部を覆う大結界を作った者。彼女は結界を張った後、誤って結界が解除されないように、鍵となる四つの宝珠を精霊窟の奥深くに封印し、番人を配置して守らせたのだった。

 それにより結界は長らく解かれる事は無かったが、永き時を経た今になって、強い力と意志を持った冒険者が彼女の前に現れ、外界に出る事を望んだ事により、彼女は決断した。

「もしも四つの宝玉を集める事が出来たのならば、貴方達の力を認め、結界を取り除きましょう」

 そのNPCの名を、カズヤが口にする。

「創世の女神、イリア」

 この世界を創ったとされる女神との約束こそが、グランドクエストの始まりだった。

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