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謎のおっさんオンライン(改)  作者: 焼月 豕
Bigining of the Tyrant
20/38

開発チームの殺意!卑劣な罠を打ち破れ!(3)

 戦いのはじまりを告げたのは、一発の銃弾だった。それは赤いローブを着た女、レッドの手に装備された長銃から発射されて、真っ直ぐにおっさんの額に向かって飛来する。

しかし、それはおっさんに命中する前に弾き落とされた。そう……他でもないおっさんの手によってだ。優れた反射神経と動体視力をお持ちの方ならば視認できたかもしれないが、おっさんは発射された銃弾を、己の手に握られた魔導銃剣から発射された銃弾で撃ち落としたのだ。

「知らなかったのかレッド。俺に飛び道具は効かねぇんだぜ。流石に何百発も一気に撃たれれば話は別だがな」

「いやいや、ただの挨拶代わりさ。噂の【矢落し】も見たかったしな」

 レッドが言った、この【矢落し】なる技だが、これはアーツやアビリティによる物ではない。いわゆる「システム外スキル」と呼ばれる物だ。

 おっさんは銃口の向きや射手の目線や筋肉・骨の動き、呼吸、殺気、魔導銃の動作するかすかな音に空気の振動といった、ありとあらゆる情報を感知・計算した上で、一瞬にして銃弾の弾道を予測したのである。来る事がわかっている弾丸など、避けるも撃ち落とすも、おっさんにとっては容易い事だ。卓越した予測能力と精密な射撃による飛び道具の無効化。これこそがおっさん七大兵器の一つ、【矢落し】であった。

「フン……見物料は高くつくぜ」

 そして二人は同時に、弾かれたように動き出す。おっさんの両手には黒い二挺の魔導銃剣【ブラックライトニング】が握られている。対するレッドの手に握られているのは、これまた赤い色の双剣だ。

 レッドの剣をおっさんが魔導銃剣のブレードで受け流し、おっさんの銃剣による刺突をレッドが紙一重で回避する。更にレッドは左右一対の双剣を連続で素早く振るって攻撃するが、おっさんはそれをかわし、受け流し、時には銃弾で弾く事で狙いを逸らす。だがおっさんの攻撃もまた、レッドの双剣に阻まれて、あるいは凄まじい反射神経によって紙一重で回避されて、直撃は一つも無い。至近距離で幾度も刃や銃弾を交わし合いながらも、お互いに無傷のまま戦いは進んだ。

 パワーは互角。そして単純なスピードや反射神経はレッドが上を行く。だが見切りや体捌きといった技術や経験による戦闘勘によって、おっさんはその差を埋めていた。今のところ、総合力では互角に見える。

「ほう、少しはやるようになったじゃねぇか。だが、このままだと埒が明かねぇな」

「そうだな、それじゃあ……第二ラウンドと行こうか!【クイックチェンジ】!」

 目で追えないほどの斬撃の嵐を繰り出しながら、二人は会話を交わす。そして、どうやら戦局が動くようだ。

その切欠を作ったのはレッドであった。高速換装アビリティ【クイックチェンジ】の効果によって、レッドの手にある双剣が消滅してアイテムストレージへと送られ、それと同時に新たな武器がその手に装備される。新たに装備されたのは、両手持ちの戦槌(ウォーハンマー)だ。非常に重いため攻撃速度は遅いものの、強烈な衝撃属性の打撃攻撃を可能とする威力重視の武器である。

「ヒャッハー!こいつでミンチにしてやるぜ!」

「ハッ……当たるかよ、そんな大振り!」

 レッドがハンマーを大きく振るい、強烈な打撃を繰り出す。だが思い出していただきたい。左右一対による攻防一体と素早い連続攻撃が可能な双剣を使って、レッドはおっさんと互角であったのだ。

 ハンマーは威力こそ高いが、前述の通り非常に重く、扱いにくい武器である。当然そんな物を正面から振った所でおっさんには当たらず、あっさりと回避される。更におっさんは、反撃の銃弾をレッドに向けて二発、三発と放つ。レッドは回避しきれず、遂に銃弾のクリーンヒットを受けた。

 【クイックチェンジ】は便利だが、一度使うと一定時間の間は使えない。レッドがハンマーを持っている間に、おっさんは速度で攪乱しようと考えた。それに対してレッドはハンマーを大きく、大上段に振りかざす。より一層、威力を重視した構えだ。

 一体レッドは何を考えているのか。攻撃が当たらぬからといって、一か八かの一撃必殺にかけたのであろうか?まさかそんな破れかぶれの一撃が、おっさんに通用するとでも、本気で思っているのだろうか?

 隙だらけのレッドに対し、おっさんは素早く魔導銃剣による連続攻撃を食らわせる。そしてブレードを突き入れながら、そのまま零距離で銃弾を放つ。レッドのHPが全体の六割程度まで減少した。それを確認したおっさんは、レッドの反撃が来る前に素早くバックステップで距離を取るが、その瞬間、レッドの手にあるハンマーが消えた。そして代わりに彼女の手元に現れたのは、巨大な処刑鎌(デスサイズ)であった。

(モーションキャンセル……更に連続でクイックチェンジだと……?)

「ヒャッハー!かかったなおっさん!死ねえ!」

 レッドは何らかの効果によって戦槌のモーションを強引にキャンセルし、再び武器を瞬時に換装した。そしておっさんの首を目掛けて、新たに装備した巨大な処刑鎌の刃を振るった。

 ちょうど距離を取ろうとバックステップをした直後であった為、おっさんの体は空中にあって、回避は不可能である。次の瞬間には、死神の刃がおっさんの首を刎ね飛ばすだろう。

 また双剣とは違い、重く巨大な刃は銃弾をぶつけて弾く事も、魔導銃剣のブレードで防ぐ事も難しい。もはや逃げ場は無く、このままおっさんはレッドの斬首攻撃を受けて敗北してしまうのか?

「ちぃぃぃぃッ!」

 目前に迫る死の気配。ゲームの中の出来事であり、実際に死ぬわけではないが、目の前の死神めいた人物によって振るわれるそれは、まるで現実と錯覚されるほどの殺意が込められていた。

 それに前にして、おっさんが切り札の一つを切る。

 人は死に直面した時、異常な集中力により時間を非常に遅く感じられるという。いわゆる走馬灯という物がそれだ。脳のリミッターが解除される事で、通常とは比べ物にならない程の思考速度を得るためだと言われている。

 おっさんは、それを意図的に引き起こす。己の意志で脳のリミッターを外す事で得られる神速の思考速度。それによって起こるのは擬似的な時間停止だった。

 おっさんの視界から急速に色と音が失われ、全てが停止する。おっさんは止まった世界の中をゆっくりと動き、レッドの攻撃を回避しつつ彼女の後ろに回る。

「……消えた?」

 完璧なタイミングでの奇襲だった筈だ。だが寸前でおっさんが姿を消し、攻撃が空振りに終わった事でレッドが首を傾げる。

「つーか、おっさん何処行った?」

「お前の後ろだ」

 レッドの背後で気配を完全に殺していたおっさんが、彼女の耳元で声をかける。レッドは驚きながらも身体を回転させ、処刑鎌を振り回して背後のおっさんを攻撃する。

「どこを見ている」

 だがレッドが振り返りながら攻撃した時、既にそこにおっさんは存在せず、また別の離れた場所に出現していた。

「……おっさん、何で今攻撃しなかった?」

 先程背後を取られた時、おっさんにとっては攻撃する絶好のチャンスだった筈だ。だがおっさんはそれをしなかった。手加減されたと思い不機嫌になるレッドだったが、それに対しておっさんは少し困ったような顔で言う。

「……思わず使っちまったが、流石にアレは反則みてぇなモンだからな。流石にあのまま攻撃するのはフェアじゃねぇと思ったまでだ」

「……そうかい。ところで実際何をどうやったのか聞いてもいいかい?」

「教えたところで簡単に出来るような物じゃねえが、俺に勝てたら教えてやってもいいぜ」

「そりゃ楽しみだ。それじゃ、仕切り直しといこうか!」

 レッドが処刑鎌を振りかぶる。だがおっさんとレッドの距離は離れており、近付かなければ鎌による攻撃は当たらない。一体どうするつもりなのか。

「飛んでけぇ!」

 次の瞬間、レッドが行なったのは巨大な処刑鎌を投げつけるという行動だった。これは鎌と投擲の二つのスキルを上げる事で習得可能なアーツ、【デスサイズブーメラン】だ。巨大な大鎌が回転しながら、ブーメランのように放物線を描いておっさんに向かって飛んでいく。

 それと同時にレッドも、放たれた大鎌を追いかけるようにおっさんに接近する。次にその手に握られているのは両手槍だ。

「見ろ、おっさん!これが俺の切り札だ!」

 おっさんが上体を限界まで逸らしてブリッジをするような姿勢になり、処刑鎌の投擲を躱した。そこにレッドが両手槍を構えて突撃してくる。これは槍のアーツ【ランスチャージ】だ。おっさんはそれをサイドステップで冷静に回避しながら、魔導銃剣で射撃を行なおうとするが……

「まだまだぁ!」

 次の瞬間にはレッドの装備が刀へと変わっており、槍突撃のモーションをキャンセルして急停止しながら、今度は居合による攻撃を仕掛けてきた。

 おっさんは射撃を中断し、レッドの刀を魔導銃剣のブレードで受け流す。

「チッ……今度は刀か!」

 そして刀が消え、レッドが戻ってきた処刑鎌を振り回す。それを避けたと思ったら、今度は瞬時に武器を双剣へと変えて素早い連続攻撃を仕掛けるレッド。まるで武器のバーゲンセールだ。

「……詳しい事は分からねぇが、どうやら複数の武器を使い分ける事に特化したスキルを使ってるようだな」

 おっさんがレッドの不自然な動きの原因に当たりをつける。

「ご名答!これが俺の新しい力、【マルチウェポン】スキルだ!」

 すると、レッドがその正体を明かした。彼女が使う【マルチウェポン】スキルはその名の通り、複数の武器を使い分ける事のみに特化したスキルである。

 カズヤが使う、武器と魔法を同時に使う事に特化した【マルチアクション】と対を成すこのスキルの習得条件は、「十種類以上の武器スキルを習得し、それらのスキルレベルの合計が500を超えている事」という、数多の武器に精通した者のみが習得可能な非常に難易度の高い物だ。

 だがその分、その効果は絶大だ。何しろアーツの動作中に強制的にモーションキャンセルを行ない、武器を次々と制限無しに切り替えて戦う事が出来るのだから。

 使う武器が変われば、当然のように動きも変わる。変幻自在で先が読めないレッドの連続攻撃に、流石のおっさんも防戦一方だ。

「そろそろ仕上げだ!【マルチウェポン・デストロイ】!」

 レッドが奥義を発動し、勝負に出る。その効果によって、レッドの周囲に十数人もの分身が出現した。その手にはそれぞれ別々の武器が握られていた。

 この奥義はスキルレベルが50を超えている武器につき一体、その武器を装備した分身を召喚し、それらによる波状攻撃を行なう物だ。大鎌を装備した本体に加えて短剣、双剣、細剣、戦槌、両手槍、両手斧、大剣、爪、刀、弓、魔導銃をそれぞれ装備した分身の、合計十二人による攻撃が開始される。

 流石のおっさんと言えど、この攻撃をまともに受ければ無事には済まないだろう。四方八方から一斉に襲いかかる赤ローブを前に、おっさんもまた切り札を切る事を決断した。

「成る程、そいつがお前の奥の手か……大したもんだ」

 この幾つもの武器を次々と切り替えて戦う新たな戦術は、レッドが工夫と練習を積み重ねて作り上げた物なのだろう。その努力に対しておっさんは、惜しみない賞賛を送った。

「だが残念ながら相手が悪かったな!どれだけ数を集めようが、しょせん絶対強者の前では無力だという事を教えてやろう!」

 悪の親玉のような台詞を吐きながら、おっさんが二挺の魔導銃剣を構えてレッドを迎え撃つ。

「くらいやがれ、【デッドリー・ストーム】!」

 おっさんが魔導銃剣の奥義アーツを発動させた。その効果によって、おっさんが二挺の魔導銃剣を豪快に振り回しながら、全周囲に無数の魔力弾をバラ撒く。

 おっさんを囲んで一斉に攻撃しようとしていたレッドとその分身達だったが、避ける隙間も無い程の高密度の弾幕に次々と叩き落とされていった。

「くそっ、回り込め!死角から攻めるぞ!」

「そんな物はこの俺には存在しねえ!」

 分身に指令を下し、連携しておっさんの隙を突こうとするレッドだったが、彼女らが移動しようとする場所に、おっさんは先回りして弾幕を放っていた。

 おっさんは一見すると、巨大な二挺拳銃を力任せに振り回して、適当に弾をバラ撒いているように見えるかもしれない。だがその実、おっさんは緻密な計算と正確無比な先読みによってレッドとその分身の動きを事前に察知、または誘導して弾幕に突っ込ませ、効果的に迎撃を行なっていたのだ。

「だったら……こいつはどうだあああああ!」

 レッドが生き残った分身を集めて、一列縦隊を組んで突撃する。先頭の分身が盾になって魔力弾を受けて倒れたら、また次の分身が盾となり、それを繰り返して全ての分身を犠牲にしながら、遂にレッドはおっさんに肉薄する事に成功した。

 だがしかし、おっさんはレッドがそうする事までも、既に読み切っていたのだった。

「ああ、そこ足元注意だ」

「は……?」

 あと一歩でおっさんを射程内に捉えようという時に、レッドの足元で「カチッ」という音が鳴った。その正体は言うまでもなく、おっさんが事前に仕掛けておいたマイントラップだ。

「爆発オチかよ!ざけんなあああああ!」

 足元で起こった地雷の爆発によって、レッドは倒れた。その爆発によってレッドが着用していた赤いフード付きのローブが破損し、その下に隠された素顔が露わになる。

 現れたのは赤色の髪と瞳の、驚くほど整った顔の少女だった。体型の出にくいローブを着た状態でも目立っていた豊満な体つきといい、男であれば誰もが見惚れるような完璧な美少女の姿がそこにあった。

 とても普段のチンピラのような言動やがさつな性格からは想像できないだろうが、これがレッドのローブの下に隠された正体であった。

「おう、まだやるかい?」

「……もうやだ。おうちかえる」

 まさかの地雷による決着と、素顔を曝け出された事によって戦意を喪失し、レッドは涙目になりながら手で顔を隠し、一瞬でセーブポイントに帰還するアイテム【帰還の羽】を使用して帰っていった。

「次は絶対俺が勝つから。おぼえてろよ」

 去り際にそんな捨て台詞を残して、レッドの姿が消えた。

 涙目で頬を膨らませた状態でそんな事を言われても微笑ましい気持ちになるだけなのだが、それを口に出すほどおっさんも野暮ではなかった。


 *


「おう、お疲れさん」

「ああ。おっさんも勝てたようだな」

 おっさんとカズヤは合流し、お互いの勝利を称える。敗北したエンジェとレッドはダンジョンを脱出した。どさくさに紛れて、こそこそと宝を狙っていたアナスタシアも既に姿を消している。

 おっさんは部屋の中央に置かれた豪華な宝箱に手をかけ、蓋を開いた。おっさんが宝箱を開けると同時に、そのすぐ近くに次の階層へと向かう階段が出現する。だがまずは、宝箱の中身を確認するのが先だ。その中にあったのは……

「金貨に宝石にインゴット、こいつは魔法の糸か。それから鎧だな」

 大量の金貨が入った複数の袋と、幾つかの大粒の宝石。それから鍛冶の素材となる金属の延べ棒や、裁縫の材料になる魔法の糸がそれぞれ複数。最後に、革と鱗で作られた軽鎧だ。

「鎧だけくれ。ゴールドは山分けで、残りの素材はおっさんが取っていい」

「気前が良いこったな。随分とこっちの取り分が多いようだが」

「いいさ。俺は生産スキルは料理くらいしか取っていないしな。それにこの鎧、なかなか良い品のようだ」

 おっさんが鑑定すると、鎧の品質は8。神器級だ。素材は最高級の魔獣の革とバジリスクの鱗を使った物のようで、軽いが非常に頑丈で、毒や石化といった状態異常に高い耐性を持つ逸品だ。カズヤは早速それを装備した。

 カズヤの言葉に甘えて、おっさんは残りの品を手に取る。どれも価値の高いアイテムだが、その中でもおっさんはインゴットに目を惹かれた。

 その金属は薄暗いダンジョンの中にあっても、太陽のような山吹色の輝きを放っていた。一見すれば純金のようにも見えるが、別の物だとおっさんは感じた。

「おいおいちょっと待てよ。こいつぁまさか……」

 おっさんがそれを一つ手に取って、鑑定アビリティを使用する。するとそのインゴットのアイテム名と、詳細が表示される。

 表示されたそのアイテムの名は、【オリハルコンインゴット】と言った。

「やはりか……」

 以前に図書館でダークメタルについて調べ物をした時に文献に載っていた為、記憶に残っていたそれは、伝説の金属と呼ばれる稀少素材だ。当然、おっさんも実物を目にしたのは初めてである。

「いいねぇ……何を作るか楽しみだぜ」

 おっさんはそれを仕舞い込み、戻ってからの生産活動に思いを馳せた。だが、それもダンジョンを攻略してからの話である。

 気を取り直して、おっさんとカズヤは連れ立って次の階層を目指した。階段を降りる前に、おっさんは部屋の壁、何も無い場所を一瞬だけ見たが、すぐに興味を失ったように視線を逸らして階段を降りていった。


 *


「なかなか良い物を手に入れたみたいデスねー」

 おっさんとカズヤが次の階層へ向かった後、彼らが戦っていた部屋に一人の少女が姿を現した。彼女の立っていた場所は、先ほどおっさんが目をやった場所だ。彼女は今までずっと姿を隠すアビリティ【ハイディング】を使用して、この場所に隠れていたのだ。

 その人物は犬耳と尻尾を模したアクセサリを着けて、忍者装束を着た金髪碧眼の少女、アナスタシアだ。彼女もまた情報収集のためにダンジョンに潜っていた所で緊急ミッションが発生して、この共通エリアに集められた者の一人だった。

 彼女は最初、先頭のドサクサに紛れて宝箱を狙おうとしたが、それは早々に看破されて他の四人に警戒されていた。その状態で宝に手を出すのは、全員を敵に回しかねない自殺行為である。

 その為アナスタシアは宝箱を諦め、情報の収集を優先した。一切動かず、隠れる事だけに専念すれば彼女を見つけられる者などそうそう居ない。そのおかげで様々な情報を得られた。

 おっさんはどうやったのか看破していたようだが、見逃して貰えたようだ。

「トレジャーボックスは残念だったケド、グッドなムービーが撮れたしOKデス」

 アナスタシアは嬉しそうにニヤニヤと笑った。犬耳がピクリと動き、尻尾は彼女の上機嫌を表すかのように左右に揺れた。その付け根にある尻は形が良く、豊満であった。

 彼女は潜伏しながら、先ほどまでの戦闘の一部始終を録画していたのだ。

「早速ログアウトしてムービーを編集するデース!」

 アナスタシアはこのようにゲーム中で撮影した動画を、情報提供と称して頻繁に動画サイトに投稿していた。トッププレイヤーであり一流の情報屋である彼女が撮影した未開拓エリアの情報や特ダネは、このゲームのプレイヤー達の間で大人気だ。今回彼女が撮影し、これから投稿する予定のおっさん達の戦いは史上最高レベルの再生数とコメント数を叩き出し、暫くの間動画サイトのランキングトップを独占する事になるのだった。

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