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謎のおっさんオンライン(改)  作者: 焼月 豕
Bigining of the Tyrant
12/38

謎のおっさん情報収集!ブラックストーンを確保せよ!

 世界初のVRMMOROG「アルカディア」が正式サービスを開始してから、およそ二週間ほどが経過した。元βテスターと初回限定版の一万本を入手したプレイヤーに加えて、追加分のパッケージが販売された事でゲームを遊ぶプレイヤーは更に増えた。

 ここ最近、初心者プレイヤーの世話を焼く事が多かったおっさんは、そろそろ自身の強化を行なう頃合だと考えた。

 その為にはステータスの成長や新たなスキルの習得が必要なのは当然として、装備を整えるのが重要だとおっさんは考えていた。

 思えばおっさんが使っている装備は、ほとんどがβテストの時に作成し、使用していた物のままである。勿論これらは初心者が大多数を占める現在の環境では十分にトップクラスの性能を誇っているが、彼らも日々成長しており、いずれは先行者達に追いついてくるだろう。

 また、初心者だけではなくβテスターも同じように成長している。先日久しぶりに出会ったシリウスやカエデは、βテストの時と比べると明らかにスキル・装備の両方の面で成長していた。

 正式サービスが開始してからはまだ出会っていない、残りの【七英傑】も同様に強くなっている事だろう。流石のおっさんにとっても、彼ら七英傑だけは油断のならない相手だ。このまま停滞したままではいずれ彼らに追い抜かれ、差を付けられる事は明らかである。

「やっぱり、これがもっと必要だな……」

 おっさんが手にしたアイテムをじっと見る。そのアイテムの名はダークメタル。吸い込まれそうな漆黒の色をした、世にも珍しい金属である。

 その原料であるブラックストーンを、おっさんは新たに三つ入手していた。廃坑でモヒカン達が持っていた物を強奪したのが一つと、湖畔でブラック・フォートレスを倒した時のドロップアイテムで二つだ。

 これでおっさんが持つダークメタルは四つ。必要数にはまだ足りないが、これが揃った暁には、おっさんが理想とする武器が作れるだろう。

 だがやはり、この素材の問題点は非常に稀少な点だ。あの後、おっさんは試しに再び迷いの森で熊を討伐してみたが、ドロップアイテムの中にブラックストーンは存在しなかった。どうやらドロップ率は相当低く設定されているようで、あの時はたまたま運がよかったという事だろう。

 ならばやはり、別の手段を探る必要がある。情報屋には既に調査依頼を出しており、奴ならば既に情報の一つくらいは掴んでいるだろう。

 丁度おっさんがそう考えた時に、当の情報屋本人がやって来た。その人物はどこからともなく、全く音も立てずにおっさんの傍らへと降り立った。

「シショー!」

「来たかアナ公。それで、何か分かったかい?」

「バッチ・グーだヨー!とっておきの情報を掴んできたデスー」

 現れた人物は、片言の日本語を操る金髪碧眼の少女であった。まず目を引くのは、犬のような耳と、長いフサフサした尻尾。腰には短めの刀を挿し、首には長いマフラーを巻いて口元を隠し、服の下には鎖帷子を着用している。そして彼女が着ている服は、忍者装束であった。

 背が低く、言動も顔つきも子供っぽいが、とてつもなくスタイルが良い。出るところはドーン!と出て、引っ込む所は引っ込んでいる。小柄な体躯と相俟って、ただでさえ巨大なそれが更に目立っている。やっぱアメリカはすげぇや!

 彼女の名はアナスタシア。アメリカ人の父とロシア人の母を両親に持つ留学生で、現実世界での名前はマリア・フォークナー。おっさんの家に下宿している、十六歳の留学生だ。

 彼女はどこか間違った日本観の持ち主であり、サムライやニンジャに対して並々ならぬ憧れを寄せている。それが高じて、彼女はこのゲームでは忍び装束を纏い、忍者プレイに興じていた。

 ちょっと変わった子ではあるが、その腕前は確かである。おっさんと同じβテスターであり、七英傑と呼ばれる七人のトップランカーの一人である。

 ちなみにアナスタシアが少々間違った感じの日本文化に傾倒しているのは、幼く純粋だった彼女に「日本ではサムライが権力を握ってて、裏社会ではニンジャが暗躍している」「実は俺の正体はニンジャマスターだ」などといった法螺を吹き込んだ男が居たせいである。

「確定情報じゃないケド、その鉱石を持ってそうなBOSSの情報を見つけたヨ!」

「ほう、詳しく教えてもらおうか」

 情報に食いつくおっさん。だが、それに対してアナスタシアは、無言で両手を前に出した。

「チッ、ほらよ。これくらいで良いだろ」

 情報は価値を生む。それを知る者が少なければ尚更である。ゆえに対価を要求するのは当然の事であった。そう来る事はわかっていたとばかりに、おっさんが金貨が大量に入った袋と、手裏剣や撒き菱などの消耗品の束を手渡した。このような忍者が使う道具は使う者が少ない為、滅多に市場に出回らない。そのためオーダーメイドをする必要がある為、高品質な忍び道具はアナスタシアにとって、お金以上に有り難かった。

「さっすがシショー、分かってるゥ!」

「世辞は良いから、さっさと情報を吐きな」

「OK。MAPを出しマスね。えーと、候補は二つあるデス」

 そう言ってアナスタシアは地図ウィンドウを表示させた。

 プレイヤーが歩いた場所の地図は自動的に記録され、こうして表示させる事ができるのだ。そのデータは他人に譲渡する事も可能である。

 そしてアナスタシアは、現在実装されているほぼ全てのエリアの詳細な地図を所持していた。流石は情報屋といったところか。

 アナスタシアが表示させたのはワールドマップだ。マップの中心に城塞都市ダナンが表示され、その周囲に広がるのは始まりの草原。北には大きな湖が、東と南には森が広がり、西方には険しい山がそびえ立っている。

「ここと、ここデス」

 アナスタシアが、マップ上にマーカーを二つ表示させた。その場所は、おっさんにとってはどちらも覚えがある場所だった。

「おい、ここは廃坑じゃねえか。そこはこの間行ったぞ。どういうつもりだ?」

「まあまあ落ち着くデスよ、シショー。廃坑に出現するボスモンスターが、ブラックストーンをイッパイ持っている可能性が高いという事デス」

「ボスだと?……確かに、ブラックストーンが採集できるあの場所に居るボスなら、持ってる可能性は高いだろうな。最下層に出るザコ敵を考えれば、恐らくゴーレム系のボスだろうし信憑性は高い。だがな、この間行った時はそんなもん居なかったぜ?あのモヒカン小僧共にそのボスを倒せるとも思えねぇし……」

「出現させるのに条件があるのデス。シショーはそれを知っているはずデスよ」

「……そうか、緊急ミッションか!」

「ザッツライト!廃坑の最下層でエマージェンシー・ミッションを発生させて、ボスを倒すコト。まずこれが一つ目デスね」

「成る程、よくわかった。それで二つ目は……この街の北東地区か?街中ってのはどういう事だ」

 アナスタシアが表示させた二つ目のマーカーは、この城塞都市ダナンの北東地区に表示されていた。その事に疑問を呈するおっさんに、アナスタシアが答えを言う。

「ダナンの地下に、隠しエリアがあるそうデス」

「マジかよ。どんな所だ?」

地下墓地(カタコンベ)。アンデッドやゴーストタイプのモンスターがPOPするエリアデス。ボスもアンデッドらしいデスよ」

「アンデッド……暗黒属性か。確かに持ってそうだな」

 おっさんが求めているアイテム、ブラックストーンは強い暗黒属性を持ち、地下深くや強力な魔獣の体内で生成される物だ。アンデッドや幽霊が大量発生する地下エリアであれば、入手できる可能性は高そうである。

「今ハンメイしているのは、この二つデスね。シショー、どっちに行くデス?」

「そうだな……ここは地下墓地から行ってみるか。ここから近いし、新しいエリアには興味がある」

 おっさんが決断を下す。目指すは大都市の地下に広がる隠しエリアだ。

「お前も来る気か?」

「シショー、場所知らないデショ?案内するデスよ。ついでに久しぶりにパーティーを組んで、一緒にハンティングをするデスよ」

「そうやって俺を利用して稼ぐ魂胆だな。ちゃっかりしてやがるぜ」

 悪態をつきながら、おっさんはパーティーを作成してアナスタシアを勧誘する。そして二人はそのまま街の北東地区、地下墓地への入口に向かうのだった。

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