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謎のおっさんオンライン(改)  作者: 焼月 豕
Bigining of the Tyrant
1/38

謎のおっさんあらわる!世界で一番ヤバいヤツ!

様々な理由によりWeb版の連載を続ける事が難しくなった為、代わりに書籍版をベースにした物を投稿します。

さしあたって1巻の分を週一くらいで投稿する予定です。


いつも通りに感想への個別の返信、質問への回答は基本的に行ないませんのでご了承下さい。

 時は西暦2030年代。人類は仮想電脳空間に新たな世界を作り出す事に成功した。

 すなわち、VR空間へのフルダイブ技術。それは医療や軍事をはじめ、様々な分野に瞬く間に浸透し、発展していった。

 そして、それはゲームの分野においても同様であった。

 仮想電脳空間に作成した世界に入り込み、五感全てを使って楽しむ事のできるゲーム。すなわちフルダイブ型VRゲームは、瞬く間に世界中で大流行した。

 そして西暦2038年、ゲーマー達が待ち望んだVRMMORPG……仮想現実空間を利用した、大人数参加型オンラインRPGが遂に産声を上げた。

 フルダイブ型VRゲームの第一人者であり、天才ゲームクリエイターと名高い四葉煌夜が生み出した、世界初のVRMMORPGは、歓喜と共に日本中のゲームマニア達に迎えられた。

 そのゲームの名は、【アルカディア】。

 このお話は、そんなゲームの世界を駆け抜けた、一人の男の物語である。


 西暦2038年、八月某日。時刻は日本時間で14時00分。プレイヤー達が待ち望んだ、「アルカディア」のゲームサーバーが開放された。

 千人のβテスターと、初回ロット分のクライアント・パッケージを入手できた一万人の幸運なゲーマー達はVRゲーム端末を装着し、一斉にログインを開始した。

 強靭なログインサーバーはその日本各地からの一斉攻撃を受けてもビクともせず、万を超えるゲーマー達共を優しく迎え入れた。この時代の通信技術は我々の知るそれよりも飛躍的に進化しており、遅延や不毛なログインゲームなどは最早、過去の思い出の中にしか存在しない。

 三日前より行なわれていたプレオープンにてアバター作成と初期設定、チュートリアルを終えていたプレイヤー達は、正式オープンと同時に一斉にログインし、スタート地点の街へと降り立った。

 その街の名は、【城塞都市(じょうさいとし)ダナン】。四方を草原に囲まれた、円形の堅牢な城壁に囲まれた大都市である。

 かつて世界を襲った大崩壊を生き延びた人々が作り上げた、魔物に対抗する為の人類に残された最後の一大拠点である。

 高く、堅い城塞と都市全域に張られた結界は邪悪な魔物を寄せ付けず、そこに住む人々は平和を享受しているが、逆に言えばこの街を除いた全ての地域は魔物の支配下にあり、人々はこの地に押し込められているとも言える。

 その事を憂いた当代の領主は勇気ある冒険者達を募り、各地に蔓延る魔物を排除し、かつて理想郷と呼ばれた平和な世界を取り戻す計画、プロジェクト・アルカディアを発動させた。

 プレイヤーはその冒険者の一人となって、冒険の旅に出る事になる。

 ……というのが、このゲームの設定である。

 そのプレイヤー達だが、彼らの多くはファンタジー世界に相応しい鎧やローブ等の衣装に身を包み、剣や槍、弓に杖といった武器を装備している。

 このゲームでプレイヤー達が操る分身は、精密な身体スキャンを行なう事によって、現実のプレイヤーの顔つきや体型・性別が反映されている。

 何故かと言うと、あくまで擬似的にとは言え自分の体を動かしてプレイするゲームである以上、現実の肉体とあまりに乖離したアバターを使用すると、強烈な違和感のためにまともに動けなくなったり、最悪の場合は現実世界に帰還した際に自分の肉体に違和感を覚えたりする可能性がある為だ。

 その為、身長や体型などをある程度調整する事は可能だが、大幅に変える事は出来ず、性別も現実のそれと同じ物にしなければならないのだった。理想の美少女になりきるリアル・ネカマプレイをやろうとしていた男達は絶望した。

 そのような事情もあって、男女比はおおよそ8:2といったところだ。女性のオンラインゲームプレイヤーも増加傾向にあるとは言え、まだまだ男性が大多数なのは仕方が無いと言えるだろう。

 そんなプレイヤー達の多くは物珍しそうに周囲を見回したり、仮想の肉体を動かしてみたり、近くにいるプレイヤーと交流したりと思い思いに行動していた。


 だが、そんな平和な光景の中、異彩を放つ一人の男が姿を現した!

 その男は身長がおよそ一八〇cm台半ばほどの長身だ。がっしりとした肩幅に広い背中をしており、相当鍛え上げているのだろう、無駄の無い理想的な筋肉の付き方をしている。

 年齢は、恐らく三十代半ばから後半と思われる中年男性だ。十代・二十代の若者が多いこのゲームの中では、その点だけでも十分目立つ存在だろう。

 だが、それだけであれば少し珍しい程度で済むだろう。そして当然この男は、それで済むような生易しい存在では無い!

 まず、所々逆立ったり跳ねたりしているぼさぼさの黒髪に無精髭。そして口には咥え煙草。

 それらの特徴によってだらしない印象を受けるが、顔つき自体は決して不細工ではなく、鍛え上げられた体つきもあって、むしろワイルドで男前な容姿と言っても良いだろう。

 だがそれらを台無しにするのが、何よりも特徴的な目つきである。その上に位置する太い眉毛と共に大きく、鋭くつり上がったその目が、元々お世辞にも良いとは言えない人相を更に際立たせており、野武士や山賊のような印象を受ける。

 そして、彼がその身に纏う衣装は白いツナギだ。腰の後ろには工具類が入った革製のポーチを付けている。一体どこの工場から出てきたのだろうか、この男は。控え目に言ってもファンタジー世界とは全く釣り合わず、むしろ真逆の方向へとフルスロットルで大爆走しているような恐るべき不審人物。明らかに浮きまくっている!

 その場に居たプレイヤー達は、ビビりながらも思わずそのヤバそうな男へと視線を向けた。するとゲームシステムがその視線の動きに反応し、視線の先にいる男をターゲッティングした。それにより、プレイヤー達の視界に、男のキャラクター・ネームが彼の頭上に表示される。


 【謎のおっさん】


 それが、その男の頭上に表示された名前であった。

 名は体を表すという(ことわざ)があるが、まさにその言葉通りの異様かつ的確な名前である。シンプルながらも破壊力抜群のその六文字がおっさんの頭上にでかでかと浮かび上がるその光景は、傍から見れば何とも滑稽かつ異様である。

 言うまでもなくその男、謎のおっさんは非常に目立っていた。言うまでもなく悪い意味でだ。たった一人でファンタジーな世界観を崩壊させんとするその勇姿、あるいは暴挙に周囲のプレイヤー達は恐れ慄き、ドン引きした。

 見るな、関わるな。あれは危険だ。大半のプレイヤーはそう決意し、謎のおっさんを見なかった事にして目を逸らした。実に賢明かつ妥当な判断である。だがしかし、その場にはうっかり彼に関わってしまった、哀れな一団があった。

「おいコラァ!待ちやがれ!」

 謎のおっさんに向かって声を荒げる男達。その数、五名。彼らの姿もまた、謎のおっさんに負けず劣らずの奇天烈な代物であった。その服装は革ジャンを素肌の上から羽織り、トゲ付きの肩パッドを装着した世紀末ファッション。そして何よりも特徴的なのは、その髪型。

 まず先頭に居るのは極彩色のド派手なモヒカン頭。次に前方に長く伸びた真っ赤なリーゼント。更には大きく膨らんだ黄色いアフロヘアーの男に、長い髪を頭の上で結わえて巨大な髷にしている傾奇者のような男、最後にホウキを逆さまにしたような、縦に長い逆毛の男。 

「おい、待てっつってんだろうが!」

「そこのオッサン!テメエだよ!おう止まりやがれ!」

 そんな奇妙な集団に罵声を浴びせられながらも、おっさんはまるで聞こえていないかのように歩き去ろうとする。当然、男達はおっさんを追いかける。肩に手をかけられ、ようやくおっさんは面倒臭そうに足を止め、振り返った。

「おう、そこのオッサン!随分とフザけた格好してんじゃねーかコラァ!」

「このゲームのジャンルはァ、ファンタジーRPGだぞエーコラァ!?」

 お前らが言うな!と周囲のプレイヤー達は心の中で一斉にツッコんだ。無論、それを口に出す無謀な勇者は居ない。理由は勿論、こんなイカレた世紀末野郎とは関わり合いになりたくないからである。当たり前だよなぁ?

 謎のおっさんと世紀末愚連隊の破滅的コラボレーションによってファンタジーな世界観は見るも無残に破壊され、一触即発の空気が辺りに漂う。こんな空気の中に入っていけるのは、よほどの馬鹿か命知らず、あるいは彼らに負けず劣らずのイカレポンチだけであろう。

 そして遂に彼らは数人でおっさんを取り囲み、「土下座しろ」だの「カネ出せ」だのと因縁を付け始めるのだった。

 彼らはPK、すなわちプレイヤーキルを中心とした、悪党プレイに憧れるプレイヤー達だ。現実世界においても友人同士であった彼ら五人は示し合わせてゲームにログインすると、さっそく徒党を組んだ。そして早速景気付けに、冴えないオッサンを集団で囲んで恫喝し、金をむしり取ろうという魂胆であった。なんという外道か!

 ちなみに中身のプレイヤーは皆、真面目で成績も良いがクラスではいまいち目立たない、ごく普通の高校生の少年である!嗚呼、なんという事か。受験勉強のストレスが彼らをこのような凶行へと向かわせたというのか!

 さて、モヒカン達に囲まれて汚い言葉を浴びせられている謎のおっさんだが、彼は面倒臭そうに彼らの言葉を聞き流すだけであった。そんなおっさんの態度に業を煮やしたモヒカンが、おっさんに迫る。

「おうオッサンよ、さっきからダンマリか。何とか言ってみろよ?それとも俺達にビビって……」

「おい、クソガキ」

 モヒカンの言葉は途中で遮られた。おっさんが目の前のモヒカンを睨みつけながら遂に口を開いたからだ。低く重い、威圧感のある声が発せられる。

「さっきからゴチャゴチャとうるせえんだよ。それと汚ぇツラ近付けんな!」

「ごばぁっ!?」

 罵倒と同時に、おっさんはその拳をモヒカンの眉間に叩き込んだ。鋭いパンチに顔面を打ち抜かれ、モヒカンが吹き飛ぶ。

 おっさんはその様を見ながら満足そうに煙草をゆっくりと吸い、煙を吐き出した。

「てめえ!クソ中年!」

「やんのかオッサンコラァ!」

「五対一だぞ!勝てると思ってんのか?」

 一拍の後、我に返った男達は怒りを爆発させておっさんに詰め寄る。殴られたモヒカンもまた、額を押さえながら屈辱と怒りに顔を真っ赤にさせながら起き上がる。

 おっさんは、そんな彼らを馬鹿にするように笑い、こう言った。

「てめえらなんぞ、五人だろうが五億人だろうが俺の敵じゃねえよ。死にてえ奴からかかって来な」

「やっちまえ!!!」

 その挑発に、男達の怒りが爆発した。モヒカンの号令と共に、彼らはそれぞれ装備した武器を抜き放ち、一斉に襲い掛かかる。

 それに対するおっさんだが、彼は事ここに至っても余裕の表情で煙草をふかしていた。そしてあろう事か、こんな言葉まで口にする。

「それとハンデをやろう。俺はこの煙草を吸い終わるまでの間、攻撃をしない。その間に一発でも攻撃を当てられれば、お前等の勝ちって事にしてやるよ」

 多勢に無勢のこの状況で、凄まじい舐めプ宣言が飛び出した。何たる傲慢か!

 モヒカン達は激怒し、必ずやこの傲岸不遜なおっさんを殺さねばならぬと決意した。斧が、槍が、刀が、大剣が、おっさんを殺めんと一斉に振るわれる。

「おいおい、やる気ねえのか?」

 だがその攻撃は、全て空を切る。おっさんは涼しい顔で、四人分の攻撃を最小限の動きで回避していた。

 躍起になって次々と攻撃する男達だったが、その全てが虚しく空振りに終わる。

「ハハハ、当たらねぇなぁ」

「どけ!俺がやってやる!」

 その言葉を発したのは、モヒカンチームの中で唯一の遠距離武器使い、アフロヘア―の男だ。彼がその手に持つのは長銃型の武器だった。

 魔導銃。この世界には魔導機械と呼ばれる、魔力を動力として動く機械が存在し、この魔導銃はその技術によって作られた武器である。火薬ではなく魔力を使って銃弾を射出する、遠距離用の武器の一種だ。

「ロックオン完了!くらいやがれ!」

 彼が使ったのは魔導銃の基本アビリティ、【ロックオン】。標的に銃を向けて一定時間待機する事で対象をロックオンし、命中精度を向上させつつ射撃の威力を向上させる効果がある。

 射撃の際に少々時間がかかるのが欠点だが、自動的に対象に照準を合わせる事が出来る為、銃など扱った事のない日本の一般人であっても、問題なく射撃を命中させる事が出来る、便利な技能である。

 それにより、銃弾は狙い通りにおっさんの心臓のある位置に向かって飛ぶ。

 当たった!勝った!そう確信するアフロであったが、おっさんに命中する寸前に、銃弾が停止する。他ならぬ、おっさんの手によってだ。

 そう、おっさんは銃弾を、二本の指の間に挟んで止めていたのだった。

「な、なんだと……!?」

「馬鹿な、銃弾を素手で止めた……!?」

 その有り得ない光景に、思わず手を止めて見入るモヒカン達。それと同時に、遂におっさんが煙草を吸い終わる時がやってきた。

「今のは惜しかったな。だが、タイムオーバーだ」

 おっさんが吸い殻をその場に投げ捨てると、それは地面に落ちると同時に消滅した。ここはゲーム内なので、耐久度が無くなったアイテムはこのように自動的に消滅するが、現実世界での煙草のポイ捨ては厳禁である。読者の皆様もどうかお気をつけ願いたい。

「野郎ッ!こうなったら俺の必殺アーツを受けてみやがれッ!!」

 モヒカンが両手斧を下段に構え、腰を深く落として力を溜めると、その手に持った斧が輝き始める。

 アーツ。戦技とも呼ばれるそれは、各種武器スキルを鍛える事で習得可能な、使用前や使用後の隙は大きいが高い威力を誇る、いわゆる必殺技のような物である。モヒカンが発動させようとしているのは、両手斧の基礎的なアーツ【スマッシュ】だ。

「くらいやがれええええええッ!」

 モヒカンは力強く踏み込むと同時に、斜め下からおっさんの胴体に向かって勢いよく振り上げた。だがしかし、その攻撃はまたも空振りに終わる。おっさんは既に、その場にはいなかった。

「消えた!?どこ行きやがった!?」

 キョロキョロと周囲を見回すモヒカン。その視界に影がさす。

「上かッ!?」

「ご名答。褒美に俺のアーツをくれてやる」

 勘の良い読者の皆様ならば、もうお解りだろう。おっさんはモヒカンが放った【スマッシュ】が命中する直前に、空高く跳躍する事でその攻撃を回避しながら頭上の死角を取ったのだ。ちなみにこの大跳躍は【軽業】スキルに属するアビリティ【ハイジャンプ】による物である。

「【ヘヴィストンプ】ッ!!」

 落下スピードを乗せた、必殺の踏みつけ攻撃がモヒカンを襲う。自慢のモヒカンヘアーを無残に踏み潰しながら、おっさんの両足がモヒカンの頭にめり込んだ。

 格闘アーツ【ヘヴィストンプ】。おっさんが使ったその技は発動後に垂直落下し、落下地点に居る敵に強力な衝撃属性のダメージを与える。また、与えるダメージは落下速度と、使用者の装備品の重さに比例して上昇する。

 おっさんはそのままモヒカンの頭を踏み台にして跳躍すると、空中でひねりを加えた三回転を披露し、華麗に着地を決めた。

 モヒカンは仰向けに倒れて動かなくなった。モヒカンをよく観察すれば、彼の頭上にキャラクターネーム――モヒカン皇帝とか言うセンスを疑う名前だ――と共に表示されている、HPヒットポイントを示すバーが真っ黒になっているのが見えるだろう。それはつまり、彼のHPがゼロになり、死亡した事を意味する。

 そして死亡した為、デスペナルティとしてモヒカンは幾らかの経験値と所持金、所持品を失う事になる。それらは殺害したおっさんに与えられる。おっさんは少量の経験値とゴールド、そして先程までモヒカンが振り回していた戦斧(バトルアックス)を手に入れた。

「さて……次はどいつだ?」

 ギロリ。おっさんが残った男達を順番に睨みつける。

「てめえかリーゼント。それともそっちのチョンマゲか?それともさっき生意気にも俺に銃弾をくれやがったアフロにお返しをするべきか?いや、まずはそこの鬱陶しい逆毛から処刑してやろうか」

 事ここに至ってようやく、男達は手を出してはならない相手を敵に回した事を悟った。

「に、逃げろぉっ!」

「うわあああああああっ!」

「助けてくれえっ!」

「ひいいいいいいいっ!」

 恐怖し、一目散に逃走する彼らの背中を見つめながら、おっさんはニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。その瞳はまるで悪戯好きな子供のようにギラギラと燃え盛っている。確実に何かよからぬ事を思いついたのであろうと、容易に想像ができる顔だ。

「待てコラァ!どこにも逃げられんぞぉ!地獄の果てまで追い詰めてやる!」

「うわあああああ!追いかけてきたあああああ!?」

「来るな、来るなああああああ!」

「死にたくねぇ!誰か助けてくれぇ!」

「ママーッ!」

 大声で宣言しながら猛スピードで追走を始めるおっさんと、悲鳴を上げながら逃げる男達。そしてそんな彼らを眺めながら、困惑する一般プレイヤー達。

 それが世界初のVRMMORPG、【アルカディア】の初日の光景であった。


 ……そんな中、落ち着いた様子で一部始終を見守っている者達がいた。

 よく見れば彼らの装備は他のプレイヤー達よりも上質な物であり、佇まいにも強者の貫禄が見てとれる。

 彼らこそは元βテスター。かつて行なわれたβテストで手に入れたアイテム、ステータス、スキル、そしてこのゲームの知識を引き継いだ、僅か千人の古強者達である。

「馬鹿な奴等だぜ。よりによって、あのおっさんに喧嘩を売るなんてな」

 彼らのうちの一人がそう口にすると、他の者達も頷き、口々に言う。

「全くだな。ふざけた名前と恰好だが、実力は桁違いだ」

「流石は【七英傑】の筆頭といったところか……」

「今後もあの人の動きには要注意だな……」

 曲者揃いの元βテスターが、これほどまでに恐れ、敬うおっさんは、やはり只者ではなかったようだ。

 果たして謎のおっさんとは、一体何者なのか。そして彼はこのVRMMORPG「アルカディア」の世界で、これから何を成すのであろうか。

 それは神ならぬ我々には、いまだ知る由も無い。だが一つだけ、はっきりと言える事がある。それは謎のおっさんが、これから先も今回のような騒動を、次々と巻き起こすであろうという事だ。

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