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黒猫と謎の黒マント集団

 家に帰り、自分の部屋で着替えをして隣の部屋をのぞいてみる。三人の居候たちは二階の空き部屋に布団を敷いて寝てもらっている。

 神様と幽霊に睡眠が必要かどうかわからないが、どうやら使ってくれているようだ。私が塾から帰ってその部屋をのぞいてみると、すでに布団にくるまって寝ているときがある。


 今日もすでに寝ているようだった。三人仲良く寝息を立てている。そういえば、幽霊なのだから布団を被らなくても風邪をひくこともないだろうし、そもそも布団を触れるかどうかも怪しい。しかし、そんな疑問を裏切るように二人はしっかり布団をかぶってすやすや眠っていた。

 

 こういう時、本当に幽霊なのか疑ってしまう。今度、幽霊の特性について九尾に聞いてみよう。


 スマホを確認してみると、ジャスミンからメッセージが入っていた。それを既読して返信する。私も彼らを見ていたら眠たくなってきた。お風呂に入り、私も自分の部屋に戻ってすぐに寝てしまった。



 夢を見た。夢の中の私は、怪我をした黒猫を腕に抱えていた。お腹に大きな怪我を負っているようで、かなり深い傷で出血していた。私は誰かに追われているようだ。追手がどんな奴なのか後ろを振り向いて確認する。

 全身を黒いマントで覆った謎の集団が追いかけてきていた。追手は黒猫に用があるのか、それとも私に用があるのかはわからない。必死に逃げていると、黒猫が急に私の腕から抜け出した。


 そして黒猫が突然光り始めた。あまりのまぶしさに思わず目をつむってしまう。光が収まりそっと目を開けると、そこにいたはずの黒猫がいなくなっていた。さらには全身を黒いマントで覆った追手もいなくなっている。いったいどこに行ったのだろう。


 黒猫がいたはずの場所には塾で使っているテキストが散乱していた。



 そこで目が覚めた。怪我をした黒猫を拾ったのはいいが、なぜ追われていたのか。黒猫と追手がいなくなった場所に塾のテキストが散乱していたのはなぜなのだろう。これは単なる夢なのか、それとも予知夢なのか。

 

 外を見ると、すでに朝になっていて日が高く昇っている。ベッド近くにある目覚まし時計を確認すると、ちょうど目覚ましが鳴る十分くらい前だった。外の様子を見る限り、本日も快晴のようだ。最近は晴ればかりで雨があまり降らない。雨水君がいたときは雨が多かった気がするので、なんだか雨が恋しくなってくる。


 コンコンッと私の部屋をノックする音が聞こえた。九尾がわざわざノックしてくるのは珍しい。いつもはそのまま勝手に部屋に入ってくるのにどうしたのだろうか。


「どうぞ。入っても大丈夫ですけど。」


「お主は何か夢を見たか。西園寺から解放されるためとはいえ、ちと派手にやりすぎたようだ。気を付けた方がいいぞ。もうすぐ奴らが視察に来るだろう。まあ、普通の人間に危害を加えることはないが、この家には我と幽霊たちが居候している。さらにはお主もいて、目をつけられるのは確実といえる。」

 

 部屋に入るなり、九尾が朝の挨拶もなしにいきなり話し出す。いったい朝から何を言い出すのか。起き抜けの頭にそんなことを言われても理解できるはずもない。


「おはようございます、蒼紗さん。」

「………。」


 そこに翼君と狼貴君がやってきた。まだ眠たいのか、翼君は目をこすりながらしきりにあくびをしている。あくびをするたびにウサギの耳がぴょこぴょこ動いていてかわいらしい。狼貴君は眠たくて機嫌が悪いのか、いつもより目つきが鋭くなっている気がする。幽霊たちにも睡眠は必要なのかもしれない。


「おはよう、翼君。狼貴君。九尾も言い忘れていたけど、おはよう。」


「そういえば、朝だったな。話したいことがありすぎて挨拶もろくにしていなかったな。ところで今日大学が終わるのは何時ごろだ。」


「今日は午前中で終わりだけど、それがどうかした。」


「じゃあ、お昼にいつものファミレスに集合でよいぞ。もちろん、好きなものをたらふく食べたいのう。」


「突然すぎるんだけど、私にだって予定があるからね。今日は無理。ジャスミンの友達の田中さんの容体が悪化したみたいなの。それで今、田中さんが入院しているみたいだから、今日はそのお見舞いに行くつもりなの。お昼が食べたいなら、別の日にしてくれる。」


「お昼を食べたいというのもあるが、それだけではない。ちと話があるからついでにおいしいものでも食べられたらいいなと思っただけだ。」


「話なら家でもできると思うけど。今日の夕方ならゆっくり話を聞けるからそれでもいいなら。」


「早い方がよかったが仕方ない。その田中とやらがどうなっていたか帰ってきたら詳しく教えてくれよ。」


話をしながら大学に行く準備を始める。今日は何を着ようか迷ってしまう。そうだ、せっかく夢に出てきたのだし、今日はこれで行こう。


「そういえば、夢は見たよ。黒猫が出てきて、謎の黒マントの集団に追われている夢だったけど、九尾の話と夢は関係あるの。」


「そうか。黒猫と黒マントの集団か………。」


 私の言葉に考え込んだ様子の九尾は放っておいて、今日のコスプレ衣装を鞄に入れて大学に向かう。九尾も玄関までは一緒についてきてその後は何も言わずにどこかに行ってしまった。翼君も狼貴君も用事があるのか、私の出かけるのと一緒に家を出た。


「行ってきます。」


 今日も誰もいない家に向かってあいさつをする。誰もいないのでもちろん返事はなかった。


 大学に向かうために電車に乗っていると、電車の窓からありえない光景が見えた。ビルの屋上を次々にジャンプして移動している黒マントの集団がいたのだ。慌てて目をこすり、もう一度窓の外を確認する。そこにはビルが立ち並ぶだけでそこを軽々とジャンプして移動する人はいなかった。


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