番外編~文化祭④~
「ありがとうございました。」
綾崎さんに勘定をしてもらう最中、部屋の中を見渡していると、部屋には、綾崎さんの他に3人ほどが店番をしていた。その中にいた一人を見て、私は一瞬固まってしまった。どうやら「妖怪調査サークル」の顧問は駒沢だったようだ。ジャスミンも気付いて、私の前にきて、駒沢を睨みつけている。
「やあ、こんにちは。朔夜さんが私たちのサークルに興味を持ってくれたとは光栄です。」
馴れ馴れしく話しかけてきた。こいつは要注意人物だと私の本能が告げている、すでに何度も話しているが、確実なことである。
「綾崎さんが誘ってくれたので。私たちはこれで失礼します。」
駒沢の嫌な視線から逃れたくてジャスミンの手を引き、急いで教室から出ようとした。
「先日は途中で話が終わってしまったので、今度ぜひ、私の研究室でじっくり話し合いましょう。」
私はその声に振り向くことなく、店を出た。ジャスミンも無言でついてきたので助かった。駒沢にはおそらく何を言っても無駄だろう。店からしばらく離れて、やっと気分が落ち着き、ジャスミンの手をはなす。
「すいません。つい………。」
「気持ちはわかるけど、蒼紗はどうして、そこまで駒沢が嫌いなのかしら。私のいない間に何か変なことでも言われた?」
「ええと、実は……。」
「とはいえ、ここで話す内容でもないわね。せっかく学際に来たのだし、今日は目いっぱい楽しみましょう。」
そう言って、今度はジャスミンが私の手をつかんで店を回ることになった。ジャスミンの手は思ったより、冷たかったが、今はその冷たさが心地よかった。
それから、各サークルや部活の展示やゲームを楽しみつつ、お昼までの時間をつぶした。お昼にベンチに集合といっていたので、ベンチに戻ると、すでに九尾たちがベンチに座っていた。
「遅かったのう。待ちくたびれて腹が余計に減った。」
「さっき、食べたばかりなのにもうお腹がすくんですか。」
とは言いつつも、実は私もお腹が減っていた。いつもとは違う非日常だからだろう。気を張っているのかもしれない。
「どこで食べようかしら。屋台で買って食べるか、食堂で何か注文するか。」
「食堂でどうかのう。たまにはお主たちが食べているものを食べてみるのも一興だろう。」
翼君と狼貴君を見ると、別にそれで構わないというので、食堂で昼食をとることにした。
食堂はちょうどお昼の時間だったので、混雑していた。ちょうど開いている席があったのでそこに座ると、何を食べるか話し合う。机にはご丁寧にメニュー表が置かれていた。
それぞれが食べたいものを選び終えると、食券を買いに私とジャスミンが席を立つ。
食券を買ってカウンターに食券を渡す。出された料理を九尾たちのいる机に並べようと持っていくと、彼らの様子を遠目に見ることができた。
今は他の普通の人にも九尾たちの姿が見えているのだろうか。3人は仲良しの友達同士のように見えて、はたから見たらほほえましい状況に見えているのだろうか。まさか、自分の身近に神様がいるとは予想もしていないに違いない。
「お待たせしました。」




