番外編~文化祭②~
学際当日がやってきた。今日はどんな衣装を着ようかと考え、悩んだ末に狐のコスプレにすることに決めた。狐の耳の黄色いカチューシャにモフモフの尻尾をつけて、服は神社の巫女さんが着る巫女装束を身につけた。白衣に緋袴である。今日は大学に行って着替えるのも面倒なので、コスプレしたまま電車に乗って大学に向かうことにした。
電車の中で、私の格好に奇異の目を向ける人も多くいたが、気にしなかった。そもそも、すでに私は普通の人間ではないのだ。能力者であり、不死身の特異体質を持っている。普通ではないのだから、普通を装う必要もない。そう思ったら、周りの目が気にならなくなった。これも九尾やジャスミンのお蔭だろう。
大学に着くとジャスミンを探す。学際というだけあって、今日は学生以外の人も大勢来ていて、ジャスミンを探すのに苦労しそうだ。よく見ると、今日はお祭りで非日常を味わうための空間なのか、私のようにコスプレをした人間もちらほらいるようだ。私の姿が目立つことはなかった。
大学内を歩きながらジャスミンの姿を探していると、やたらと派手な配色の服装の女子が私に近づいてきた。この目に痛い配色を身につけるのは一人しかいない。
「おはよう、蒼紗。今日は質素でかわいいわねえ。本当に巫女さんみたいよ。」
案の定、近づいてきたのはジャスミンだった。今日のジャスミンは一段と目に悪い色合いだった。昆虫などの警戒色とでもいうのだろうか。真っ赤な帽子をかぶり、服は緑色のつなぎを着ていた。しかも、顔をよく見ると、顔の半分が緑のウロコにおおわれている。いったい何がしたいのだろう。確か、ジャスミンは能力を使おうとすると、身体に蛇のようなうろこが出たような気がする。
私の不審げな様子に気付いたのか、ジャスミンが今日の服装の説明をしてくれた。
「私の本当の姿を現したかったの。ちなみにこのうろこはもちろんメイクだから心配しなくても大丈夫よ。さすがに本物をさらすのは危険そうだからやめておくわ。」
「別にジャスミンが何を着ていようが構いませんけど。では、学際を回っていきましょう。」
私とジャスミンは学際を楽しむことにした。歩いている途中で、学際のパンフレットをもらい、どこから回っていこうかジャスミンと話し合う。
「まずは何か食べましょうか。食べ物を売っているお店はここからそんな遠くないようですね。」
「我は何でもいいぞ。おいしそうなものならどれでも歓迎じゃ。」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには九尾たちの姿があった。九尾はいつもの少年の姿のままで、翼君も狼貴君も同じだった。青年の姿ではなかった。
「次の日が雨だということなので、九尾がぜひ今日行きたいと言い出したので………。」
「雨は面倒くさい。」
雨だと学際の楽しさも半減しそうなのはわかるが、わざわざ来なくてもいいのではないか。そう思ったが、彼らも私のいうことを聞いたためしがないので、放っておくことにした。
「まあ、正直あんたたちが来るのは予想していたからいいけど。私と蒼紗の仲を邪魔しないでくれれば問題ないわ。」
「邪魔などしない。だが、まずは腹が減った。」
私からパンフレットを奪い取ると、熱心に眺めだした。他の二人も興味深そうに眺めている。
「僕はこれが食べたいです。朔夜さん。」
「……。これが食べたい。」
「我はこれだ。」
思い思いに食べたいものを主張する始末である。まったく、外見も相まってただの悪ガキ3人組にしか見えない。とはいえ、実年齢は3人とも成人済みである。身体に精神年齢が対応しているのだろうか。別に可愛いからいいのだが、疑問ではある。
「じゃあ、先に屋台にでも行くことにしましょう。ジャスミンはどうしますか。」
「蒼紗が行くのに私が行かないわけはないでしょう。」
5人そろって屋台に向かって歩き出した。今日は快晴で雲一つない天気である。これが明日、激しい雷雨になるとは思えない。
私とジャスミンはクレープ、九尾はたこ焼き、翼君はフランクフルト、狼貴君は焼きそばをそれぞれの屋台で注文して、近くにあったベンチに座って食べることにした。




