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「葉那さん、おめでとうございます」
寝る前のひと時、はるちゃんは私の部屋に来て言った。私たちが付き合い始めたことは、帰ってきた時にみんなに話した。みんなやっとかって言って、でも、喜んでくれた。
「うん。はるちゃん、ありがとう」
はるちゃんは本当に喜んでくれている。私も心からお礼が言えた。そして、昨日の私の態度が悪かったことを思い出す。
「……はるちゃん、昨日はごめんね」
「何のことです?」
はるちゃんは首を傾げた。本当にわかっていないのか,それとも、私を気づかっているのかわからない。
「昨日、私、凄く態度が悪かったなぁって」
「ああ、大丈夫ですよ。気にしていません」
はるちゃんは本当に気にしていないという様に笑顔で答えた。でも、それに甘えたらいけないよね。私にできることをして、許してもらいたい。今、私が涼くんと付き合うことができて幸せな様に、はるちゃんにも幸せになってもらいたい。
「ねぇ、はるちゃんは好きな人とかいないの?」
もし、はるちゃんに好きな人がいるなら、私は協力したいと思った。それが一番の様な気がするから。
「好きな人ですか?」
はるちゃんは考え込む。
「……いない……ですね……」
もし、はるちゃんが嘘をついていたとしても、私にはわからない。でも、はるちゃんが嘘をついている様には見えなかった。
「そっか、もし好きな人ができたら教えてね。私、協力するから」
「わかりました。その時はお願いしますね」
はるちゃんは笑顔を見せる。私はその笑顔が嬉しかった。そして、この笑顔がいつまでも続いて欲しいと思った。
私は何も持っていない普通の女の子。
飛びぬけた何かがあるわけでもない普通の女の子。
周りからは奇麗だとか、スタイルがいいとか言われるけど、ただの普通の女の子。
好きな人のお姫様になりたくて、そして、やっとお姫様になれたの。
夢見ていた世界に飛び込めたの。
今は本当に幸せだから。
この幸せをみんなに感じて欲しいと思うの。
それが、次の私の夢になる。
誰だって、好きな人のお姫様になりたいのだから。
END
シンデレラ、ネズミの御者、王子ときて、名もない町娘と来ました。
だって、葉那のイメージは継母でも、意地悪なお姉さんでもなくて……。
となると、次は何になるのかお分かりになると思います。
5人の中で出て来ていないのか、彼。
彼はあれ。
ここで以前より立っていたフラグの一つが回収できたと思います。
え、できていますよね?
自分の中で残るフラグはあと一つ。
この話で、そのフラグを盛大に広げてしまったようにも感じていますが……。
楽しんでいただけたなら、幸いです。
なにはともあれ、最後までお付き合いいただきありがとうございました。