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 私は何も持っていない普通の女の子。


 飛びぬけた何かがあるわけでもない普通の女の子。


 周りからは奇麗だとか、スタイルがいいとか言われるけど、ただの普通の女の子。


 それでも、好きな人のお姫様にはなりたい。


 そんな夢ばかり見ている。


 そんな夢を見てもう何年。


 何も変わらないこの関係。


 それでもいいの、側にいられるなら。


 あの日まではそう、思っていた。




 気が付けば季節は移ろい、もう、秋。まだ、日中は暑い日もあるけれど、夜は寒いくらい。夏に結婚すると言った璃子お姉ちゃんからはまだ、音沙汰なく、代り映えのない毎日だった。でも、もうすぐ、大切なイベントがある。


「はるちゃん、あのね」


学校の帰り道。私は隣を歩くはるちゃんに言った。


「もうすぐ、涼君の誕生日なの」

「ええ、そうですね」

「プレゼント、何がいいかなぁ」


みんなの誕生日は、はるちゃんと一緒に暮らすことが決まった早いうちに話をしている。五月の皐月君の誕生日も、八月の私の誕生日も、はるちゃんは素敵なご馳走を作ってくれた。きっともうすぐある涼君の誕生日も一緒だと思う。はるちゃんの手帳には学校行事と一緒にみんなの誕生日が書かれていたから。


「葉那さんが選んだものなら何でも喜んでくれますよ」


はるちゃんは笑顔で言う。


「その何でもが難しいんだって」


皐月君の誕生日にはベルトをあげた。皐月君に似合いそうなものをすぐに見つけられたから。はるちゃんはチョーカー。これも、皐月君に似合うデザインだった。じゃあ、涼君はと考えても思いつかない。


「メンズショップに寄ってみます?」

「……でも、あそこ、涼君のイメージじゃないんだよね」


皐月君のプレゼントを買ったお店は涼君のイメージじゃない。涼君は皐月君よりも落ち着いたイメージのものがいい。


「では、ショッピングモールへ行きましょうか」


確かにそこなら大きいしいろいろなお店があるから、涼君に似合うものがあるかもしれない。私たちはそこへ向かうことにした。


「はるちゃんはもうプレゼント買ったの?」

「ええ。買いましたよ」

「なに?」


はるちゃんと同じものは避けたかった。私は聞いてみる。


「葉那さんにあげたのと同じようなものです」


はるちゃんが私の誕生日にくれたもの。それは、パワーストーンのブレスレット。ピンクの石とアップルグリーンの石の組み合わせ。はるちゃんはこのパワーストーンの意味は教えてくれなかった。そして、これと同じようなものならば、パワーストーンのブレスレットと言うことになる。それなら、私はブレスレットとは違うものにしよう。そう決めた。



ショッピングモールで私は、目移りしていた。カッコいいバッグもいいし、シンプルなシャツも捨てがたい。そして私を最も悩ませていたのは、パズルリングだった。二つの指輪を合わせると、一つの指輪になるっていうあれ。璃子お姉ちゃんは、指輪は好きな人からもらうのがいいと言った。好きな人に贈ってもいいよね? 


「それ」


はるちゃんは眼ざとく私の手に持つ物を見る。


「変かな」

「そんなことないですよ。葉那さんの気持ちがよく伝わると思います」


気持ちってそんな……。はるちゃんには言ったことないのに、見透かされているような気分になる。結局、迷った挙句、プレゼントはそのパズルリングにすることにした。リングの一つは私が持つことにして。これくらいいいよね。ふと、お姉ちゃんが言ったことが頭をよぎる。


『葉那、いつも隣にいるからってそれが当たり前と思っちゃ駄目よ。本当に欲しいものはちゃんと捕まえておきなさい』




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