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フォントとか文字の大きさとかのところはご想像にお任せします。サイトの構成上実現できませんでした笑

今日大学に足を運んだのは勉強のためではない、俺は毎週金曜日に受ける講義がないため全休なのだ。


が。


タケマユにサークルに入るための資料を提出するというノルマをクリアしなければならない。サークルに入るために必要な情報を書き留めた紙切れ一枚のために、大学に来るなんて以前の俺にはありえない。多分家でyoutubeでも見て過ごしていただろう。

 

 藁にすがる思いで何か期待しているのかもしれない。


 大学に入りマンアゲ研究会の部屋に向かう。研究会だから研究室なのだろうかな。


ダサイ張り紙「来たれオタクど(ry」との再会、この張り紙曰く俺は晴れてオタクの仲間入りを果たしたことになる。とても不愉快だ。


 中に入るとタケマユが奥の方で机に腰かけている。

 

 黒髪短髪な彼女は前回と違って少し短めのスカートをはいていた。スカートをはいているにもかかわらずスポーティーな容姿は変わらない。彼女はその活発さをさらに強く引き立てるかのよう大きな瞳で窓を眺めている。どうやら俺に気付いていないらしい。

 

 俺は後ろから話しかける。


「よぉ、タケマユ。書類もってき・・・」


 俺は挨拶と同時に「やべっ」と心で反応していた。いや声に出てたかもしれない。


「えっ?」


 どうしようか。こういう時の女性の扱い方を俺は知らない。

 

 彼女の青い瞳から滴が一つ、頬を伝い流れていた。


 ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!


「えぇ!?」


 彼女は俺の顔を見るや否や長袖のジャージで涙をぬぐう。いや強い強い!!


 恥ずかしさか、擦りすぎてか、真っ赤になった鼻と目で彼女は後ろを向き。パンパン!と自分の頬を平手で叩き、はぁーーーーふぅーーーーーという深呼吸。


 少しの静寂。から、くるりとこちらを向き


「あら、ズズッ、キリンさん。なかなか早いじゃない。ズズッ」


「まてまてまてまて!」


「いやー。これで私たちのマンアゲ研究会に正式に入部が決定したわね。ズズッ

 初めての男性部員だから、とてもウッ、うれしいわ。」


 全然隠しきれてないんですけど!!


 嗚咽と鼻水で滅茶苦茶な彼女の前でどんな対応をすればいいのか。正直どうすればいいのかわからない。こんな経験したことあるわけがない。


 ん、えーと。こういう時は頭を撫でて「大丈夫だよ」っていえばいいのか!?それともギュっと抱きしめて「ほら、泣けよ」っていえばいいのか!?それともそれとも、涙を拭いてそれを舐め、「んーん。デリシャス」っていえばいいのか!?


 いずれかが正解にしてもそんなキザなことがいえるわけがない!!確かに高校生活では結構、ワイワイ系、いわゆるクラスの中心グループに属していた俺だが、いかんせん女性経験が少ない、ほぼ皆無だったといっていいだろう。


 こんな俺が泣いている女性を慰めるなど、難易度超壊滅級である。


「あれ、どうしたのキリンさん。私の顔なんかジーとみて、ヒック。何かついてる?」


 垂泣と火照りのデバフをもった彼女が言う。もう見てられない。だが彼女はこのまま話を続けるつもりらしい。


「どうしたんだよ、泣い」


てたろお前。という前に言葉を止めた。


本当に聞くべきなのか。


 タケマユの涙の理由を知らないし、理由を知って力になりたいのだが、聞いた瞬間タケマユの涙腺がまた、爆発しないだろうか。

 

 しかも理由を聞いたところで俺に協力できるとも限らない。一番初めに会った時も学校に行けることは普通じゃないとか意味深なこと言ってたし。もし家族関係ならどうしようもない。


「あ、きりんさん、私ね、新しい技を身に着けたのよ。高橋名人も顔負けの・・・」

 口を半開きにした彼女はふらふらとしながら、バッグをごそごそと探り始める。


 俺の中で何かが崩れ去っていくのが分かる。何を探しているのかと思ったらバッグの中からゲームコントローラが出てきた。何をするのかはわからないが手をブラブラさせて集中している。

 

 _______真っ赤な目で。


「ふー」

 

 俺はため息をつき、周りを見渡す。当然俺とタケマユしかいない。

 仕方ない。アレを使うしかない。


 実は俺、菊宮燐音は一つだけ特殊能力を持っている。


 いや、ほんとに、まじで。なにそのとってつけたような展開とか言わないでほしい。


 とにかく俺には普通の人にはない能力がある。内容は“人の心を読む程度の能力”だ。だが、これが最高に使いづらい。


 本当に程度なのだ。ある日突然この能力を使えるようになったのだが、いくつもの条件とそれに見合わない情報の貧困さにその時の俺は驚愕した。こんなんだったら違う能力をくれよ。てかない方がましなのでは?とまで思う始末。


 なぜそんなに微妙な能力かというと。条件として、

カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ!!!

 

「うるせえ!」


 タケマユを見るとゲームコントローラを小指で滅茶苦茶連打している。小指で!?


「え?すげえ!何これ?指が動いてないように見えるのに連打音がここまで届くだと!」


「ふふふふふふ。この技を身に着けるまでに半年かかったわあわ。コツは押すじゃなくて振動させることよおお。まあ最近のゲームで連打が必要なゲームあまりないのののだけど・・・」


・・・・・・・・いやいや、そんな話をしたいわけではない。


 早くしないとおれの能力を使っても意味がなくなってしまう。


 タケマユの心境が変わってしまえば心を読んでもどうしようもないのだ、過去の心を見ることは俺の能力ではできない。


 もう、能力の説明をする必要もないな。てか、誰に向けて説明をしているのだろう。俺は。


 まず、条件を達成させるために俺はあるところに視線を向ける。

 

 じっとそこに視線を向けなければならないため、相手には不自然な見た目になってしまう。タケマユも数秒は気にしてなかったが、だんだん異変に気付き感づきはじめる。


「え、なに、きりんさん?どこみてるの?え?どこ、どこみてるのよ!」


 おどおどし始め、だんだんと声が大きくなる。しかし、もう戻れない、俺はタケマユを救いたい。決して下心はない。決して


 その視線は30秒程度、見続けなければ能力を発動できないのだ。

「あ、ああ、あなた、そんなに堂々とした変態なのね!逆に尊敬するわ!」


 パシン!


 と表情を赤く染めたタケマユの平手打ちを食らわされる。だが、俺は視線をずらさず一心に真顔でその場所を見続けた。


 そう。胸である。


 明らかにおかしくなったと思ったのかタケマユは泣き顔で、


「キャー!もうやめてください!お願いします!なに、私が悪かったの?そんな真顔で私の胸見て!今日はもうさいあく!」


 女性にしか使えないのはこの条件があるからなのだらう。視線を送りはじめて20秒くらいだろうか、視界にもやがかかり始める。


 これから意識のみ別空間に移動する。その別空間でタケマユの精神、つまり心情、思考が見開けることができる。まあ、制限があるのだけれども。


 わあわあ喚いているタケマユの声が曇りはじめ完全に意識がその場から離れる。

 

 そして広がる世界は一面緑の空間。近未来的な、機械的なライトアップにディスプレイの中にいるのではないかと錯覚するような光の空間の中心にたった一人自分しかいないこの世界。

 

 だいぶ久しぶりだったので、少しだけ慣れないが、この空間にいる時間はほんの数秒のため、あまり気にならないだろう。

 

 やがて、その部屋の中心から白い光が漏れ出し、目をくらませる。ここからタケマユの記憶が、心情が、内面が、投影される。

 

 さあ、見せてもらおうかお前の心を!(ゲス顔)





   マンガ(フォント中)

                  最新作(フォント小)


                      ごはん(フォント小)

  悲しい(フォント小)


            お金落とした(フォント大)

                   情けない(フォント小)

  ゲーム(フォント中)


                        アニメ(フォント中)

    恥ずかしい(フォント小)

                 マンアゲ研究会(フォント小)

 好き(フォント大)



 沢山の文字が緑のスクリーンを覆う、様々なフォント、大きさ、色で書かれているが、これらには少し意味がある。


 端的に言うと最近思っていることは中央に寄り、強く思っていることは大きな文字で表示される。


 よって今回のタケマユの涙の理由は金を落としてしまったからだろう。


・・・・・なんともいえねえ。


 その時、再度俺がいる空間に白い閃光が走り、瞬きと同時に元の空間(講義棟内)に戻された。と同時に表現のしづらい“けだるさ”が俺を襲ってくる。


 目の前には恥ずかしそうに俺のことを鋭くにらみつけるタケマユの姿。まだわーわー言っている。

 

 この特殊能力にはいくつか悪い要素が含まれている。副作用みたいなものだ。まず一つ目に自分の知りたい情報を必ず知ることはできない点だ。

 

 先ほどのように能力の対象が考えていることが表示されるのだが、とても端的な単語であるため情報不足を引き起こす。


 今回も「お金を落とした。」だけではいくら落としたのかがわからない。よってこの情報の重みが不明になってしまう。まあ、タケマユの反応からして“泣くほど”大金なのだろうけど。


 二つ目が余計な情報まで手にしてしまう点。


 最後に、体がだるくなる点だ。この症状の重さは能力の対象の思いの強さに比例する。今回はまあまあだるい。だるんだるん。


 うーん。このだるさはなんていうか、その、アレに似てるな!男なら最低でも3日に1回は訪れるセージ時間に!


「ねぇ、キリンさん?あなたさっきからぼーっとしているのだけれど。何考えてるの?」


 おずおずとするタケマユと視線を合わせる。


「・・・・単刀直入に言おう。」


「え、待って怖いんですけど?聞きたくないんですけど?」


 もうこの際、きっぱり言ってしまった方が効率は良いだろう。


「なんか落としただろ。」


「ギクッ」


という効果音が鳴ったかのような反応。いや違ぇ自分で声に出してやがる。


「あまりにも驚いたのかはわからないが、“ギクッ”っていうのは効果音であって声に出す言葉じゃねえ!

てか、正解なのバレバレじゃねえか!」


「うるさい!なんでわかったのよ!この変態!ストーカー!ボッチ!胸フェチ!」


 罵声が次々に俺の心に打ち込まれていく。


「ストーカーでも胸フェチでもねえ!」 


 胸フェチだけど!


「え、でも本当にお金落としたこと分かったの、まさかあなた私の後ろずっとつけて・・」


「お金なんて一言も言ってないけど、」


「はめられた!」


「自滅じゃん!」

 

で、だ。


「いいか?笑うなよ?なんでタケマユが落とし物したの分かったつーとだ。」


「うん。」


タケマユはゴクリと喉をならす。


「俺にはあるんだよ、特殊能力が。」


はい、いつも通りここで笑われる・・と


「えぇーーーー!!ホントに!?え?何それ?キリンさんにそんなマジカルな力が?」


「ふぇ?」


 予想外の反応に変な声が出てきてしまった。当の本人は大きな目を輝かせながら身を乗り出し俺に顔を近づけて・・・って近ぁ!ふれるふれる!


 少し揺れたら頭がぶつかる。言葉を変えれば向こうの吐く息が自分にかかるのが知覚できるほどの距離。息ができない。


 耳が頬が頭が突沸をおこし脳内がフリーズを起こす。何も考えられない。


「し、信じるのか?」


「信じるよ」


俺が出した疑問は反射のように俺の耳に帰ってきた。


「私は人生、一つだけ守りたい決まり事があるの。」


身を乗り出したまま続ける。


 「“人を疑わない”ってこと。 人を疑うってことはその人を信じないってことじゃん。人のこと信じないひとは人に信じられなくなっちゃうから。まぁ、ほかに色々理由はあるのだけれど、私あなたなら何言っても信じるよ。絶対にその言葉が間違ってるってわかるまでそれは変わらない。」

 

「ふぁ。」


 と、急に驚くタケマユ。

 

 自分が予想以上に接近していることに気付いたらしい。あわてて机についていた両手を“バンッ”と弾き一気に体を後ろに持っていく。が、勢いがありすぎて座ろうとした無い椅子から(椅子があると思ってたのか)タケマユの体が空を切りそうなところを“キュッ”と足をひねり出し受け身の体制を取ろうとしたのもつかの間、間に合わず“バンッ”と顔を地面に打ち付けスカートが風にのる。バンッキュッバンッである。

 

「いてててて・・・まぁふざけて否定とかするとは思うけど、真面目なときは信じるわ。」


 もうどれが原因かわからないが頬を赤らめながらタケマユは言う。


 パンツは白だった。


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