「人類はみなオタクよ!」
ほんとに自分が暇なときにちょこちょこと書いているストーリーなので、
文とか、用語とか、日本語とか、いろいろ変だと思います。
一人だけでも読んでて楽しいって思えたら幸せです。
更新は不定期に、いろいろ感想とか教えてくれると幸いでございます
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「学生で1番楽しいのは大学生生活だ」
と色んな人から聞く、もしかしたら大体の人は大人になったらそう言うのかもしれない。
今年で19歳となる俺、菊宮 燐音は高校生を終え大学へ進学した。
それまでにそこそこ友達を作り、恋愛こそはなかったがそこそこ楽しめたと思っている。色んなバカやって時には助け合い高め合いなかなかの高校生活を送れたと思っている。
高校卒業間際では、これ以上に楽しい大学生活が待っているのかと胸が喜んでいた。髪も高校では校則違反であった金色に染めあげ、耳に穴をあけ、バイトも始めお金もほんの少しながら貯めた。
完璧な大学への準備をしていたのである。しかし、人生の夏休みとも言われる俺の大学生生活は今のところ最悪な人生の黒歴史と化していた。
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月は6月、いつものように満員電車に揺られる朝、気晴らしのために窓から外を見てみると梅雨のせいか灰色の空が広がっていて、ただえさえ晴れない自分の心を曇らせる。雨が降っているくせに暑い、ジメジメする。全身に鉛が入ったようだ。
天候が変わる世界で、俺の生活は毎日同じことの繰り返しのようなものだった。朝6時に起床してから簡単な朝飯を作り食べ、荷物を準備し、今のように一人で満員電車に揺られる。
学校につき一人で講義を受け、一人で昼食をとり、一人で帰宅し、就寝・・・それの繰り返し。何故こうなってしまったのだろう、大学生活は楽しいものだと聞いていたのだが。
しかし、理由はわかっている。
決して俺が人と話すのが苦手で初対面の人とは黙ってしまうコミュ症な性格なわけではない。むしろ高校までの自分はいわゆるリーダー格とまではいかなかったがそのグループの中に属していたし、今でも仲良くやれているレベルだ。
じゃあ何が悪いのか、それは俺が悪いのではなく周りの環境、取り囲む人間が悪いと俺は思っている・・・
バスに乗りながらこんなことを考えていると、あっという間に大学に着いてしまった。
私立笹原大学。はっきり言って学力的にとても低い大学だが施設だけは立派だ。広大な敷地内そこら中に意味の分からないオブジェが設置してあり校舎の地下にボーリング場があるほどだ。
次の講義まで10分少々なので普通に歩いて行けば間に合うだろう。そんなことを考えながら講義棟までの坂を上る、なにも楽しみではない、ただただ雑務のように何も考えずノートを写し、また一人で昨日と同じ生活。
無駄に広い敷地内を歩き講義棟の前あたりまでやってきた。正面から見るとシンメトリーになるその講義棟は、まさにラスボスが出てきそうな言葉にできない威圧感を放っている。
講義棟に着き、エレベーターを使って初めの講義の講義室へ、重く冷たい鉄の扉を開くといつもの講義室が広がっていた。曇っているためいつもより暗くも見える。できるだけ目立たない端の左後方の席を探し、いつもの席が空いていたのでそこに座りいったん一通り携帯を確認し、パソコンを出し、そして周りを見渡す。
・・・あぁいつも通りだ、この景色を見ると自分の気持ちが眩む、嘆息をもらす、そしてなぜか自分を情けなさが包み込む。焦燥、嫌悪、俺を支配する。
「最悪だ」
そんな言葉をぽつりと吐き講義が始まった。
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俺の大学の講義は大体パソコンを使って説明を行う。なので生徒全員の前にノートパソコンが置かれているように講師からは見えるのだ、よって俺ら生徒側にはパソコンのデスクトップが見える形になる。
デスクトップの設定は学校側からの指定は特にない、つまり自分の好きな画像を設定してよいのである。俺は一番後ろのほうのデスクをとったのでほぼ生徒全員のデスクトップを見ることができるのだ。
しかし、その写真がやばい、とにかくヤバい。
なぜならほとんどが女性の画像それもとても美人、高画質、パーフェクトボディ。
そして“すべて実写でない”のだ。
そう、いわゆる二次元画像なのである。
俺はこの光景を初めて見たとき、本当に嫌な顔をしたんだと思う。ウッという声も出ていただろう。
最近、完全に裸の二次元美少女画像をデスクトップにしている強者を見たときには本当に気絶するかと思った。
今の講義室内もやばい、やはりデスクトップはほとんどの人が二次元画像だし、約三分の一が講義中だっていうのにゲーム、アニメ、漫画を読み、視聴、プレイしている。
そして異様なメガネ率!洋服のチェック率!男女比9対1!!!!
・・・そう、俺の大学の周りの環境、取り囲む人間はほぼみんな“オタク”なのだ。
超オタクの多い大学にアニメやゲームなどに全く知識のない俺が入学してしまったのである。
別にゲームやアニメは嫌いではない、むしろ自分らの世代ではホウケモンが流行っていて毎日のようにやっていたこともあったし流行っている少年漫画やアニメもちょくちょく見ることもあった。
しかしそのレベルでは無い違ったオーラを放つこの講義室内、共感を超えた”オタクの世界”、今までの友達とは違った属性。窮屈で息苦しくてたまらない。その嫌悪感を抱いてしまうと他の小さなことにもイライラし始めてしまう。
カタカタというパソコンのキーボードをたたく音、教授の声、暖房の音すべてが耳にまとわりついてくる、うざったらしくて仕方がない。
この学校全体が“そういうもの”に見えて仕方がなくなってしまう。
この大学に進学した自分自身が悪いと一番自分がわかっているのだが、それが逆にイラつかせる。情けなさと怒りがこみあげてくる。
さぁ睡眠だ
俺はとっておきの学習方法、睡眠学習という手段をとることにしよう。
・・・・・
気が付くと講義は終了していて。教授の姿は教卓の前にはなく、講義室の椅子をしまう音が聞こえてくる。窓が開いており、人が多く動くので風が流れる、後ろから前に、生暖かい風が、
次第にほぼ満席だった講義室内はガラガラとなり俺以外に二、三人いるかくらいとなってしまった。いや、なってくれた。
リュックの中に入れた自分で握ったおにぎりを二つ取り出し、スマホを出す。食べながらSNSを見てみると高校の頃の友人が大学の友達と遊んでいる投稿をみつけた。とても楽しそうで、少し嬉しい気持ちととても寂しい気持ちが押し寄せる。大学生一年目、俺の人生これからどうなっていくのだろうか。
「はぁ」
そんな呼吸か、ため息かわからないものを吐き、youtubeを見ようとした、その時だった
「ねえ、そこどいてくれる?」
右を見たが誰もいない。
「え? あ、こっちよ」
左を見ると女性が立っていた。黒髪のショートカット、普通にかわいい。
「え?」
「だからそこにホウケモンがいるからどいてって言ってるの!」
一瞬で理解した、ホウケモンGOだ、大人気ゲームホウケモンを携帯アプリのGPSを利用してホウケモンを探すゲームだ、今、社会的なブームになっていて一瞬で理解できた。
「あぁ、すまん。」
横にスライドするように隣の席に移動すると間髪入れずにその女が座り込んできた。
「ありがと!」
いきなりそこをどけと言われたことや、その理由がゲームであることとかに、不快感や驚きを受けたわけではなく、俺が最初に感じたことは、
<この学校で見知らぬ人に自分から話しかける人がいたのか>
ということだった。確かに入学当初は向こう側から話しかけてくる人はパラパラといたが、みんな男だったし、二週間も経てばそんな人はいなくなっていた。しかもこの一か月間誰とも学校生活の中で会話をしていなかったのである。そんなことを考えていると
「ねぇ見て見て!ヒカンチュウ!可愛い!!ホウケモンゲットだぜ!」
目を大きく開きキラキラさせた黒い瞳に俺は吸い込まれるんではないかと思った。そして少し頬を紅潮させ興奮する彼女の表情。ヒカンチュウなんてどうでもいい。
「ずっとほしかったんだ~」
とスマートフォンをまじまじと見つめながら細いがなかなかの筋肉をつけた足をバタバタさせ嬉しそうに話す。
「よ、よかったね」
振り絞った一言だった。ずっと話してなった慣れなさと、いきなりで対応できてなく、めちゃめちゃ迫ってくるので、かなりキョドってしまった。これじゃあ理系の陰キャラと何一つ変わらない。
「ねぇ、あなた名前は?」
パタンとスマホをしまいながら視線を俺に向けてくる。
「え、菊宮 燐音、」
「私は竹内 茉優、どうして一人でこんなところにいるのキリンさん。」
いつの間にか講義室内には人がいなくなっていて俺と彼女、いや竹内さんだけになっている。
「キリン?」
「キくみやリンね でキリン。いいでしょ。 それより、ねぇもしかして・・・あなた友達いないの?・・・・」
ニヤニヤしながら聞いてくる。俺のことを小馬鹿にしたいのかそれとも単なる話題探しなのかはわからないが、一人でこの講義内にきた人間に言われたくない、正解だが。
「そういうあんたっ、あー、竹内さんはどうなんだか」
「まゆでいいわよ、私はここの景色が好きなだけよ。リフレッシュしたいときにこの講義室にお昼休みのとき来るのよ、今日は天気がいいから余計・・・ね。」
後ろを見ながら太陽に照らされ髪をなびかせ、目を細めながらそういう彼女はさっきのホウケモンのときに見せた表情とは違った嬉しそう顔をしながら外を眺めていた。
今日の朝の天気は通り雨だったのだろう、角席の後ろを見ると大学全体の景色が広がっていた。太陽による照り返しで大学全体がオレンジ色に光っていた。大嫌いな大学だが嫌いにはなれそうにない景色だ。横の彼女もオレンジ色に照らされ、目も光が反射しオレンジに近い色になっていて本当にこの世界のものか、わからないくらいきれいだった。
「この大学、講義棟なんかドラクエとかのラスボスが出てきそうな形してるじゃない?色んな姿持ってるから好きなのよね。」
「竹内はこの大学好きなのか?」
無意識に聞いていた、自分と照らし合わせていたのかもしれない。自分は嫌いだから
「んー・・・入学して二か月だからまだはっきりとは言えないけど、すき、なんだと思う、友達とか、楽しいし」
「そっか」
会って10分足らずだが、この女性に尊敬と憧れの感情を今の俺が抱かない理由は一つもなかった。この会話だけで俺の大学に求めていたものすべてをこの女性、茉優は持っているのではないかと思うほどであった。アニメ、ゲームでない大学生活。
「で、キリンさんは?」
「え?あぁ。なんていうか、その、大学スタート失敗したっていうか、友人関係とかそんなのがうまくいかなくって、人とかかわるのがめんどうくさくなって、今こんなん。俺はこの大学はっきり言って嫌い。」
最後は余計だったといってから気が付いた。余計なことばかり話してしまう。
まあ、ほんとにこの大学のことが嫌いだ、人も嫌いだ、でもそんな俺自身が一番嫌いだ。
「あー、やっぱりボッチなのね。」
どストレート!自分で言うのさえオブラートに包んだのに!!
「そ、そうだよ、なんか一人のほうが落ち着くってくらいにまで落ちちゃったんだ。高校のころはこんなんじゃなかったのに。」
「ふーん」
興味なさげにつぶやく彼女の顔をみるとどこか悲しいそうな、怒っているような複雑な目をしていた。彼女の気に障ることを言ってしまっただろうか、でもそれが本当にこの学校に対して感じていることだった。
「私はね、大学に進学できてること自体が幸せだと思ってるわ、当たり前のことじゃないからね・・・・あ、そうだ!」
彼女は何か名案を思い付いたかのような表情で、こっちの顔を見る。髪がなびく、風が少し立ち少し香水のような、春の匂いがした。
「じゃあさ、そんなに暇なら私たちのサークルに入らない?」
「え!いいの!?」
思わず声が上ずってしまった。しかし、語弊がある、ボッチ=暇 ではない!暇だけど!
「困っている人を助けるのは、女性で、涙を流していて、かなりの努力をしているのにどうしようもなくて、それでもって美人であるっていうのが相場なんだけど、ちょうど人数も少ないから全然大丈夫よ。」
心の中でガッツポーズをしていた。可愛い彼女と仲良くなれるかもしれないし、もしかしたらこの地獄の大学生活に終止符を打つことができるかもしれない、しかも可愛いし、俺の真っ暗人生に一筋の光が流れ込んだとはこのことを言うのだろう。しかも可愛いし!
「なんのサークル?」
この時までは俺は正直期待の表情を浮かべていただろう、この時までは。
「マンガ・アニメ・ゲーム研究会サークルよ。」
俺だけ時間が止まったかのように思えた。え?なんて?マンガ・あにめ??
完全に引きつった表情をしている俺の隣で彼女は続ける。
続けて、夕日をバックにして俺に指さしながらキメ顔で
「略してマンアゲ研究会よ!!」
意味深すぎる!
完全に騙された、いや、彼女は騙すつもりなど少しもなかったのだろうけど。かわいい女の子二人にレシーブ、トスを柔らかくしてもらった後にイカツイ外国人にハンマーで真下にスマッシュをくらわされたかのような衝撃、完全に上げて、上げて、落とされた。高低差ありすぎて耳キーンなりそう。
微妙な表情をしている俺に気が付いたのか、気を使った表情で
「あ、研究会って言っても専門的なことをするわけではないのよ、ただただ、語り合う、それだけ」
そこだけ切り取ったらめちゃめちゃかっこいいかもしれないけど、内容は完全にメガネをかけたシャツインしたおデブの語り合いと変わらないんだよ!俺はそれが嫌だから、この学校が嫌いなんだ!(※個人の意見です)
「いや、俺はいいやタケマユ。」
引きつったままの表情で答えた。
「え!何でよ! てかッ。 え? タケマユ!?」
彼女は困った表情で急に立ち上がって訴えてきた、そんなに真剣な話だと思ってなかったので少し後ずさりながら、
「俺そういうの全然わからないんだ、っていうかどっちかっていうとオタク嫌いなんだ。」
「人間はみんなオタクよ」
「何!?」
即答だった。彼女の顔を見ると無表情でこちらを見ている、逆に怖い。
「まず初めにオタクの定義は決まってないのよ、お宅からオタク、もとはといえば二人称なのよ。そしてあなたは1度もアニメ、ゲーム、漫画を見たことはないの?」
「確かにあるけど、、、それは有名なみんなが知ってるものだよ。」
「典型的な自分がオタクでないと思い込んでいるオタクの鏡ね、今日帰ったら鏡で自分の顔を見て見なさい、おでこあたりに、オタクって書いてあると思うわ。有名無名は関係ないの。てか、そのくくりは逆に作品に失礼だわ、人気にならなかったものはオタクがむさぼってるみたいな表現はしないでほしいの。」
今まで感情豊かな彼女がずっと同じトーンでマシンガンでトークしてくる。なんかの翻訳機械みたいに。
いつ息継ぎしているのかわからないものすごい肺活量で、
「ん、え、でも茉優はそういう人たちを見て気持ち悪いって思わないのか?」
「気持ち悪い?あなた人間差別するのね、私悲しいわ、こんな人を助けるなんて、私の目も狂ってしまったものね、いい?アニメで女の子がかわいいっていうのは、あなたたちがアイドルをかわいいっていうのと同じレベルなのよ。それを何よ、俺たちはお前らとは違う、お前らは下だかというように、私たちを見て、だから理系は文系を嫌うのよ。私たち理系はコミュ症だから文系の人とは“話せない”の、だけど文系は違う、アニメが好きだからっていう理由だけで避けて、“話そうとしない“のよ。文系は先入観だけで理系を毛嫌いしてるの。そんなんされたら理系はどうしようもないじゃない。」
やばい、完全にスイッチを入れてしまったような気がする。しかし、茉優の言っていることは俺に向けているというよりは、違う何かに訴えているように見えた。
俺は、完全に彼女の怒りが収まるまで一つも反論できずにただただ、ハイ。とイエス。のみを言い続けた。てかそれしかできなかった。