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砂と騎士と胸キュン


【コレクション獲得】


神の慈愛ギフトピース


ランク:EX

種類:スキル

系統:回復型

属性:水

規模:単体~複数


どんな傷もたちどころに治せる回復スキル。

魔力由来ではなく精神由来であるスキルという特性上、水の女神の溢れんばかりの母性の現れである。

疲労回復にも効果があり、多人数対象では効果は薄れるものの、それでも十分な回復量。

ただし、再生では無く回復なので、切断された手足を結合すると言った技は工夫が必要。

獲得後は、大人数相手でも劣化しなくなり、メンタル面への回復も行えるようになった。


 ――――雷の女神という存在は、決して見過ごせるものでもない。

 それは俺が、神の能力である『神域』を蒐集しているからに他ならない。

 

 最強を決める大会。

 それは俺にとって、今までの事例から鑑みるに最も俺のというポテンシャルを活かした場所なのだろう。


 戦闘能力には自明の理がある。

 レーネも神域である『神の審判ジャッジメント』は、威力は堕ちるがどこでも使え、今までの戦闘から得た経験値である程度の実力の輩でも渡り合えるだろう。


 だが……それはあくまで『普通』の、大会での話だ。

 土の女神から渡された大会の内容は……圧倒的に俺に不向きだった……。


 

「……恐らく、俺はこの大会に一回戦すら戦えない可能性もある。だからこそ、お前を頼りたい」



 俺は街中で巡回中の、ある男に真摯に頼み込む。

 

 この大会じゃ俺は圧倒的に不利だ。

 だからこそ、有利に勝負を進められる『仲間』が必要だった。



「あぁ。そういう事なら、喜んで協力させてもらおう」


「本当か! ありがとう!」


「はは。君には『あの事件』でお世話になっている。俺でよければ力になるよ」



 そう言って、爽やかに伊達男は笑って見せた。


 騎士団長『キシム』。清潔感のある藍色の髪に教養を感じさせる所作、完璧である。

 この見るからにザ・イケメンが、今回の大会には欠かせない……いや、優勝すら狙える秘密兵器だ。 



「しかし……雷の女神様も随分と理解が掴めない催しをなされるのだな……」



 雷の女神の大会は、『自分を胸キュンさせられる者決定戦』という題目だった。

 つまりここでいう最強とは、最も自分の胸をキュンとさせるような者という事で。  

 

 いうならば『私を惚れさせろ』という事なのだろう。


 ……正直、戦闘経験は豊富にあっても恋愛経験は無い俺じゃ、この大会を勝ち抜ける自信は無い。



「お前は絶対に女にモテるだろう、それはもう見ただけで分かる。それを発揮してくれればいい」


「確かに街の娘達や貴族の御令嬢によく会食やパーティなどに好意的に誘われるが……しかし俺自身、そうなろうとしてそうなった訳ではないからな……」


「大丈夫だ自信を持て! お前ならやれる! 出来るってやれる気持ちの問題だ諦めるな! 最期まで全力でポジティブに行け!」


「わ、分かった。頑張ってみるとするよ」


「あぁ大いに頑張ってくれ。そして安心しろ、仲間はお前だけじゃない、強力な『助っ人』もいるからな」


「助っ人……?」






 ◇




 そして一週間後。

 俺達は、大会が開催される国へ足を踏み入れる。


 雷の女神が加護を与えている国、『ジキルシ』。

 主に武器や防具等の『鍛冶』が主な特産の、鉄と油と職人そして強豪な戦士の集う砂の国だ。 

 

 砂漠地帯にある国で、強い日光がさんさんと降り注いでいるのにも関わらず、カンカンと鳴り響く鉄を打つ音が絶え間なくBGMのように鳴っていた。


 俺と、キシムと、そしてもう一人の強力者は、その国の宿。その一室にて作戦会議を執り行った。



「大会は今日。ストレートで勝ち進めば3回の『審査』で、女神と直接戦える。つまりデートなりなんなりで『惚れさせる』権利が与えられる」


「ラギ殿、既にエントリーは済ませたのか?」


「当たり前だ。事前審査にも合格してたよ、一応俺とキシムの二人な。お前は何としても戦って勝ち抜き、女神とデートまでこぎつけてくれ。そして一瞬でもいい、俺の見てる前で『神域』を発動させるんだ」


「分かった。……女性を、それも女神様を利用するのは心が痛むが……あの色町での事件を解決してくれたしな。精一杯やらせてもらうよ」


「頼りにしてるぜ、騎士団長!」



 俺はキシムと熱い握手を交わす。

 静かな、しかしやる気に満ちたその瞳には大いに期待している。


 ……全三回戦。その全てに勝つ確率は、高い。


 とはいいがたい。

 雷の女神に、求婚できるあわよくば嫁にさえできるというこのビックチャンス。


 数多の事前審査を乗り越えて、勝ち残った猛者の中から戦うのだ。

 並大抵の事ではいかないだろう。


 しかし…………それを見越さない俺ではない、こっちには『秘策』がある。



「ちょっと待て、おいラギ。この騎士団長は分かる、そしてお前がこの地にいるのも」


「あぁ。そうだな」


「だったら――――何で俺がここに来なきゃらなねぇんだよおおおおおおおおおお!!!!」



 そう言って協力者は吠えた。咆哮した。


 そんな事をしても、何も変わらないというのに。

 やれやれ……困った奴だ。



「いいか。キシムは大会参加、俺は女神の能力を複製、そして……『クーロン』お前は情報収集だ」  


「なら先ずはこの『踊り子』の服はやめろよもおおおおお!!!」



 金属類の飾りと、布の敷地面積を薄くし腰をパレオで隠した踊り子ルックな男。


 いやさ男の娘クーロンは恥ずかしそうに俺に涙目で訴える。

 

 

「仕方ないだろ、俺はお前の能力を利用したいし、何より土の女神から『男の娘の自覚を持たせる為踊り子でお願いします』って頼まれたんだから」


「なんだよ!? 男の娘の自覚って!? 踊り子の意味わかんねぇよ!!」


「俺に聞くなよクーロンちゃん」


「クーロンちゃん言うな!!」


「いいか。お前の使命は『情報収集』。街に出て雷の女神の趣味趣向や出来れば能力がどんなんかを探るんだ、後々優位に立つためにな」


「だったら普通の服でいいだろうがよぉ……」


「馬鹿言うんじゃねぇよ、古来よりエロい格好の方が男はひょいひょい口を割りやすいんだ」


「俺は男だ!! なんで男にターゲット層おいてんだよ!! ちげぇよなにもかも!!」


「男の娘は女の子よりの男の子だと菊蘭が言っていたぞ。大丈夫だ、自信を持て。なぁキシム」


「あぁ。まるで湖のほとりに住む麗しい水の精のようだ。自信を持ちたまえ」


「嬉しくねぇ……嬉しくねぇよ……くそっ、だがな見てろよお前ら! こんな作戦うまくいきっこねぇんだから!」


「やってみてからモノを言え。先ずはこの国のギルドや酒場に顔を出すといいだろう、それで全くうまくいかないのであれば普通の服にしてやる」


「ほ、本当だな!? その言葉忘れんなよ!」



 そう言うや否や、ドタドタと宿を出ていくクーロン。


 やる気があるのはいい事だ。

 ……最も、いくら男の娘とはいえ所詮は男。女装として注目はあつめるだろうが……効果は望めないだろう。


 正直、あんな服装の奴と一緒に居て変な噂が立つのは嫌だ。

 早急に何の成果も得られず帰り、普通の服を着させてやりたいものだな。



「それじゃ、俺達は会場に行くとするか」


「うん。共に頑張ろう」



 一国の王子のような爽やかな笑顔を浮かべたキシムを引き連れ、俺達も宿を出る。


 男三人のパーティだ。

 気遣いなくのびのびやらせてもらうとしよう。

 

 『秘策』もある事だし、今回は比較的楽に進むといいんだがな。


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