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女神と料理とその夜


 ◇




「ふふっ、美味しいわねこれ!」



 俺達は近場の洒落たレストランへ入り、俺はミートパスタを、女神はオムライスを頼んでその美味しさに舌鼓を打った。


 程よく茹で上がった柔らかな麺と、トマトの濃厚な旨味が詰まったソースがたまらない。



「あぁこりゃ旨いが……予想外だな。大人が全員寝てんのに子供が運営してるとは」



 大人がいない街で、開店している店があること事態驚きだ。


 

「え? あ、言われてみればそうね」


「言われてみればって、今気づいたのかよ」


「なによその眼ー。私だって見落とし位あるんだからね」



 ジトっとした目で、オムライスを口に運ぶ女神。


 そうして頬を抑え美味しそうに咀嚼した、表情がコロコロ変わる面白いやつだ。



「やばっホントおいしー! ……な、何見てんのよ、スケベ」


「いや。毎日楽しそうだなってな」


「意味によっては毎日ラギの呑むモノに塩入れてやる」


「毎日毎日俺を監視するのかよ……」


「はぁ!? そんな事一つも言ってないんですけど!? 思いあがるのもほどほどにして欲しいんですけど!!」


「だが俺を監視しない事には、嫌がらせは出来ないぞ?」


「ふん! それはやめよヤメ! そんな、毎日毎日俺を見てろなんて……」



 普段のだらしがない、享楽主義の面影はどこへやら。


 レーネはしおらしく視線を外して大人しく料理を口に運ぶ。



「そりゃ話の流れ上そう言っただけだ。そんくらい分かれよな、その緩い頭絞めてけ」


「緩くないですぅ、光の女神なんだから、頭には夢と希望と愛がつまってるんですぅ」


「もし詰まっててそれなら、多分それ汚れとかカビとかだから掃除しとけよ」


「私の事馬鹿にしすぎじゃない!?」


「まぁセフレ女神だし」


「うええええああああああ!! その冒涜的過ぎるの止めて! 違うから! セックスフレンドじゃないから!」


「じゃあなんだよ」


「……はっ、そうよ! セイント! 聖友達! 私って聖なる存在だし!」


「性友達?」


「ねぇ今絶対、性の方でゆった! 絶対言ったでしょ!」


「あはは、冷めるし早く食べようぜ」


「否定してよぉぉぉおおおおお!!! んもおおおおおお!!!」



 もしかしなくても、凄まじい営業妨害だった。


 くっそ五月蠅い。


 俺は異議を盛大に声上げて開ける口にパスタを突っ込んで黙らせた。

 


「…………」


「旨い飯食ったら素直に黙るとか。子供かお前は」


「……ゴクン。マナーだもん、口にモノ入れて喋る訳ないでしょ」



 なんだ、大人しくなったな。なぜか耳まで赤いが。


 まぁいい、俺も食い進めるとしよう。



「はい。コレ」


「あ? なんだ? 予備のフォーク? もっと欲しいのか?」


「ちがうっての。そのフォーク私が口つけちゃったし、はい、ぁあああああああ!!? 食べないでよ!?」


「食べるぞ!?」


「だって! それ、間接キス、キスよ!? はぁあああ!?」


「いや味変わらんだろ、誰が口付けても」


「そういう問題じゃなくて!」


 

 と、俺はここで漸く気づく。


 そうか、俺は鈍感だった……。



「すまん、俺が大丈夫でもお前が嫌だったか。ならそのフォークを…………何故俺に渡さない!?」


「まぁ? 私も? 驚いただけだし? ゆ、許してあげるから感謝なさい! 女神との間接とはいえキスなんて貴方にとっては初めてでしょうし?」


「いや、土の女神に一回やられたが……待て、そのフォークをどうして突き立てるように持つんだ、本来の使用用途とかけ離れる持ち方やめろ」


「馬鹿言うんじゃないわよ、フォークは人の仲間にちょっかいかけるビッチ女神を刺す為に作られたのよ」



 フォーク作った奴に謝って欲しい。



「あれは応急処置というか、仕方ない事だったんだ。それに不意打ちで俺も対処できようがなかった」


「……フン、なら仕方、なくないわ! ちょっとラギ! 上の口開けなさいよ!」


「下の口があるみたいに言うなよ!? ったく、ほら……もごっ!!?」



 俺の口に甘い卵の味とチキンライスの味が広がる。



「これで相互キスね。私のが上よ」



 レーネは満足そうだった。


 ……相互キスってなんだ? 女神って、どっか頭いかれてないと駄目な取り決めでもあるんだろうか。



「ふふっ。ありがたく思いなさい、こんな事するのラギだけなんだからね」



 ニッと、裏表なくレーネは微笑んだ。


 

「……あぁ、そうかよ」



 俺はとっさに目を逸らす。


 ……くそっ、一瞬だが……可愛いなんて思っちまった……不覚だ。

 客観的に可愛いと判断するんじゃなく、本音から出たというか、心の声というか……。



「死ね駄女神」


「なんで私罵倒された!?」



 あぁもう、飯がうめぇな!!!






 ◇




 その後。

 腹を満たした俺達は、夕方まで情報収集のついでに観光……まぁ散歩程度を楽しんだ。


 まぁ、無表情無感情の奴と一緒に居るよりかは、あちこちに反応して感情を顕わにする奴といた方が楽しいのは明白だった。

 

 その点に関しては、フレンドとしては申し分ない。仲間? ちょっと考えよう。 

 


「あ、ラギ師匠とレーネさん! おーい! こっちですよー!」



 何が言いたいのかと言えば。


 大したアクシデントもなく、つつがなく情報収集を終えたというのに。



「インナの姉御! あの方が姉御の頭領ですかい?」


「うんそうだよ!」


「姐さん方の元締めだァ! テメェら失礼を欠きゃぁ指詰めるぞオラァ!!」


「「「お勤めご苦労様です!!」」」



 目の前に頭を下げた子供たちの道が出来ていた。


 一体なにがあったんだよ。



「ねぇ、指詰めるのは駄目ですよ。次から頑張ろうねって言うに変えましょう」


「姐さん方の元締めだァ! テメェら失礼欠いても次から頑張るぞオラァ!!」


「「「ハイ!!」」」


「あ、それと、ちゃんと小学校で勉強するんだよ。将来の選択肢増えるから」


「聞いたなテメェら!! 明日から真面目に勉強するぞオラァ!!」


「「「ハイ!!」」」


「あ、弱い者いじめは駄目ですからね、困っている人がいたら助けましょう」


「聞いたなテメェら!! 俺達でこの都市良くしてくんだよオラァ!!」


「「「ハイ!!!」」」


「それでは解散!! 菊蘭の姉御! インナの姉御! 今日はありがとうございやした!!」


「「ありがとうございやした!!!」」


「ばいばーい! 気を付けて帰るんですよー! あ、お待たせしましたラギ師匠」


「ん? なんか固まってるね。おーい」



 どうしよう。


 どこから指摘しよう。



「あー……あの集団はなんだ? インナ」


「ここらへんの子供仕切ってた集団だね。なんかお腹減ってたらしかったから、お菓子買ってあげたら仲良くなったよ」


「『こんな俺達に優しくしてくれたのは姉御らが初めてです』って言ってましたね。私も特になにもやってないんですが」



 お菓子であそこまで忠誠心引き出させるとか、こいつらとんでもねぇな。



「ねぇ何か収穫はあったのかしら? 因みにこっちは全滅よ!」


「誇らしそうに言うんじゃねぇ」


「ええとですね、実はこっちも特になくて……親が子供の頃の夢とか子供になった夢見てるって話しか聞かなかったです」


「なるほど……中々難航しそうだな。他に、些細な事でもいいなにかあったか?」


「それなら、男の大人の夢は、圧倒的におねショタシチュが多かったって何か参考になるかな?」


「あ! 最後にショタが立場逆転するのと、あまあまシチュのままっていう派閥が出来ていたっていう情報は貴重だと思いますね! バブみの対象も年上かロリかで随分違っているようでした! 現場からは以上です!」


「そうだな、異常だな」






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