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選択を間違う

 アンネワークが作ったカレーは評判になり学食のメニューになり、密かな人気だった。

パンの代わりに米になり、スプーンで食べられることで令嬢たちからの不満も解消される。

料理人たちの中では簡単に食べられる賄い食として伝わっていたので、作ることによる混乱はなかった。


「あのイベントは最終学年のときに起きるはずのものだったから油断したわ。でも大丈夫、挽回できる。この豊穣祭イベントでは嫉妬した悪役令嬢が人を使ってヒロインを襲わせる」


 外出用の制服というものがあり、動きやすさを重視した服になる。

マリエルはどうにかして班からはぐれることを考えていたが、要注意人物として申し送りがあるため監視は強い。


「何とかして一人にならないといけないのよね」


 色々な店に入ったりするが、入り口には先生がいるため、こっそり出ることは出来ない。

このまま学院に帰るとなると、イベント不成立となり好感度が下がる。

この班分けは婚約者がいる者といない者で分けられた。

いる者は、それぞれの婚約者と同じ班になり、アンネワークはフーリオンと同じ班だ。


 いない者は、男性だけ女性だけという班分けとなるため、出会いということは期待できない。

婚約者のいるロチャードやグリファンとは別の班になり、シークレットキャラのフーリオンにオーリエンも同様だ。


「そろそろパレードが始まるぞ」


 婚約者がいないことはマリエルと同じ条件だが、婚約者がいる男性に親しく近づいていることで同じ班の令嬢はマリエルの存在を無視していた。

マリエルもこれから一人にならないといけないので、親しく話しかけられたくないという思いから気にしていない。

身動きが取れなくなるほどに人が集まった頃にマリエルは班から離れて人気のない路地を探した。

土地勘がないため迷子のようにしか見えないが学院の制服を着ていることから誰も声をかけない。


「あっ、フーリオンとオーリエンが一緒にいる・・・どうしよ。あの二人とは会話できてないのよね。知り合わないと激ムズルートのニーリアンに会うためのイベントが起きないし」


 いつも一緒にいるアンネワークの姿がないことを確認したマリエルは話しかけることを選んだ。

王族だから頼ることができないという悩みに協調しながら、手助けを申し出ると会話ができるようになる。


「あの、どうかされたんですか?」


「君は?」


「あの、わたし、マリエルです」


「それで? 違う班の君が話しかける理由は?」


 機嫌の悪いフーリオンにめげることなく、マリエルは話しかけた。

それをオーリエンとジャクリーヌは冷めた目で見ている。

ウォルトルは婚約者がいないため別の班だ。


「あの、何か、お手伝いを」


「不要だ」


「でも、何か困っているようでしたので」


「だとしても君の手は不要だ。班に戻れ」


 これが同い年だとすれば手を借りたかもしれないが、マリエルは十五歳でフーリオンは軍経験も持つ二十歳だ。

対応の判断力からして違う。

マリエルはここで引けば良かったのだが、しつこく食い下がった。


「わ、私なら助けられるわ」


「・・・何を知っている? 言え!」


「えっ、あっ」


 手加減のない怒りを向けられてマリエルは息を飲んだ。

首を絞められて、このまま殺されるのだと覚悟したくらいだ。

それを止めたのはオーリエンだ。


「兄上、そのままだと彼女は死んでしまいますよ」


「ちっ」


「周りの店にはいないそうです」


 人ごみを利用して、逸れたマリエルがいるように、単純に人ごみで逸れてしまったのがアンネワークだ。

王族の警備のために配置されていた私服軍隊がアンネワークを探していた。

本来の業務は迷子探しではないが、フーリオンの視線で人を殺せそうな勢いに負けて近くの店を探している。


「なら次だ」


「君も自分の班の子を探した方がいい」


「わたくしが彼女と一緒に探しますわ」


「頼んだ。ジャクリーヌ」


 フーリオンにもオーリエンにも冷たくされたマリエルはジャクリーヌに手を引かれて、せっかく逸れた班に戻ることになった。

逸れたことによる教師からの評価は最低になり、応援の教師との二人体制の監視になる。

ジャクリーヌは一人になるよりも安全だと判断し、そのままマリエルたちの班に加わった。


「パレードが通りますわよ」


「興味ない」


「あまりフーリオン殿下を怒らせないでくださいね」


「はぁ? 何言ってんの?」


「お分かりにならないなら結構。ほら今年の豊穣の女神が通りますわよ」


 詳しく聞きたくても周りの歓声が大きくて話しかけることもままならない。

このまま学院に帰ってしまえば、マリエルの計画が狂ってしまう。

どうにかしようと考えているうちに人気が疎らな学院への帰り道に差し掛かった。

特に計画もなくマリエルは全力で走り出した。

ここで走るとは誰も思っておらず、マリエルは簡単に一人になることに成功した。

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