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乱入をする

 グリファンとの勉強会は順調だったが、ロチャードにはなかなか会えず作ったお菓子はグリファンに食べられていた。

相変わらずお菓子の材料は厨房から勝手に持ち出していたが貴族の機嫌を損ねたくない料理人たちの考えで黙認されていた。


「全然ロチャードに会えないのよね。グリファンにロチャードを紹介してとも言えないし、言ったら好感度下がるし」


 勉強会は図書館でしているから、図書館に通うことでイケメン司書とは顔見知り程度にはなったが会話はしていない。

マリエルが攻略対象と思っていないから発展は無いがゲームの中では最難関と言われているキャラクターだった。


「とにかく園遊会で好感度を上げないと、このままグリファンの好感度だけが上がってエンドとかあり得ないし」


 何度も顔を会わせるうちに制服を用意してもらったり部屋着のドレスを買って貰ったりしている。

マリエルは話さえ出来れば自分のことを好きになると確信していた。

記憶の中の時間軸とはずれているが園遊会にさえ出れば問題ないとマリエルは前向きに考えた。


「明日は園遊会だもの。気が抜けないわ」


 王族の方が見えるということでマリエルだけでなく、多くの貴族子息たちが浮き足立っていた。

直接、何か披露するわけではないが顔を覚えていただける数少ない機会だった。



***



 当日になったからと言って王族の方と廊下でばったりということもなく園遊会の観覧席に座ることになった。

途中で乱入しなければいけないから最前列を選んで座った。

そんなマリエルの態度に何か言いたそうな人は多いもの王族の目を気にして何も言わなかった。

歌や楽器の演奏を披露し王族の方から形ばかりのお褒めの言葉があるなか最後の演目として演劇部が出てきた。


 庶民だった少女が貴族の令嬢だったことが分かり、学園に編入するところから物語は始まる。


『ここが、今日から私が通う学園ね』


 物語は進み、少女が悪役令嬢に虐められるところが始まる。


『あーら、こんなところに庶民が迷い混んでいるわ』


『えぇそうですわね。ヒンリエッタ様のお目汚しになりますわ。ささ、どうぞこちらに』


『庶民をヒンリエッタ様が気にかける必要はございませんわ』


『待ってください!私は庶民ではありません。マルグレッド・ギーズです』


『・・・よろしくて? 私は貴女ごときに話しかけられるほど卑しい身分じゃありませんの。昨日今日貴族の仲間入りをしたところで、育ちの悪さを隠せるとお思いなのかしら?』


 悪役令嬢ヒンリエッタは嘲笑を浮かべ取り巻きは忍び笑いを堪えきれないようにと肩を震わせる。


『貴女がギーズ家に引き取られたということは知っていますよ。私が言っているのは育ちのことを言っているのです。それがお分かりにならないようですので忠告差し上げているのです』


『確かに生まれは庶民ですけど、マナーだって学んでるし所作だって』


『マナーを学ぶですって? 貴族の気品と言うものは生まれたときから体の内から滲み出てくるものです。わざわざ人様から学ばなければ理解できないというのは、ますます庶民ですわね』


『ヒンリエッタ様、王子とのお約束に遅れてしまいますよ』


『それはいけないわ。王子はお優しい方ですもの。勘違いをなさるのも無理はありませんけど、そのみすぼらしいペンダントを拾い届けてくださった程度で大概になさってくださいな。では、ご機嫌よう』


 舞台は変わって、王子が婚約破棄を言い渡す場面になった。

演劇部の者はアンネワークが科白を忘れないか、間違えないかと祈るように見守る中、始まった。


『こっ婚約破棄を申し付ける!』


 やや噛んだが出だしは順調だった。


『まぁ理由を伺ってもよろしくて?』


『それは私の心から愛するマルグレットを不当に虐めたからだ』


 体を回転させながら大げさな感情表現をしているうちにアンネワークは舞台から落ちた。

観覧席からは小さな悲鳴が上がるが想定済みの演劇部の者は何事もなかったかのように舞台にアンネワークを引き上げた。


『それは何かの間違いでございます。もう一度・・・』


『不敬だぞ! じじじ次期王の私が間違うはずない』


『もう一度、お調べくださいませ。このヒンリエッタには身に覚えのないことでございます』


 誰もがアンネワークが最後までやり遂げることを祈るなかマリエルは一人舞台に上がりアンネワークの科白を奪った。


『マルグレット嬢がきちんと証言している! 不当に虐められ身分を理由に助けてもらったお礼を言うために近づくことすらできないと。それでもまだ白を切る気か!』


 王子の科白を上手く改変し、王子の側近が言っているように取り繕った。

マリエルの乱入に誰もが驚き対応ができないなか、マリエルの独壇場は続いた。


『この学園は平等を謳い身分に囚われず学ぶことを信条としている! それを王子の婚約者である貴様が無下にした。婚約破棄を言い渡されたとしても申し開きもできないであろう。衛兵、その者をすぐに捕らえよ』


 劇を止めることもできずに仕方なく進行したが、見せ場を取られてアンネワークは目に涙を溜めて立ち尽くしていた。

一体、話の流れはどこに行ったのか分からないが、悪役令嬢が舞台から退出し幕が下りた。

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