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お菓子を作る

 放課後になるとマリエルは攻略対象者たちがいる場所を巡るのを日課にしている。

シークレットキャラに会うのはもちろんだが、通常キャラの好感度も上げておく必要がある。


「確か裏庭の渇れた噴水でグリファンに会えるのよね」


 グリファン・カクノスは公爵家三男で、伯爵家に婿入りすることが決まっている。


「幼い頃から兄と比べられて劣等感を持っている。確か剣術の練習をしているところで誉めたら良いのよね」


 足音を立てないように探すと素振りをするグリファンを見つけた。


「・・・すごい」


 剣術と言えば剣道のイメージしかないマリエルにとって実践的な動きは素直に称賛に値した。


「誰だ!?」


「ごめんなさい、あんまりにも綺麗だから思わず」


「ふんっ兄たちに比べれば児戯に等しい」


「そうなんだね。でも私は綺麗だと思うけど」


 マリエルの言葉に満更でもないグリファンは剣を鞘に収めた。


「あっ練習の邪魔してごめんなさい」


「ちょうど休憩にしようと思ったところだから構わない」


「私はマリエルよ」


「グリファンだ。マリエルというと最近編入してきたので合ってるか?」


 生徒会会計であるからマリエルのことは知っていた。

この学校の学力からすればギリギリの頭脳だということも。


「えぇお父様にお願いをして通わせて貰っているの」


「いきなり貴族の生活は大変だっただろう」


「そうなの! あっ、そうなんです。言葉遣いもいつもと違うから慣れなくて」


「無理しなくて良い。覚えることが多いだろうからな。俺の前くらい楽にすると良い」


「ありがとう! グリファン」


 会話の弾み方に好感触を持ったマリエルはグリファンを皮切りに他の攻略対象者と会えるようにと考えていた。

そんな企みに気づくことなくグリファンはマリエルとまた会う約束をした。


「毎週この時間はここで練習をしているからまた来ると良い。話し相手くらいにはなれるだろうからな」


「ほんと! 嬉しい。それでね、授業で分からないところとか聞いても良い?」


「あぁ、それなら来週は勉強会にしよう」


「ごめんね」


「構わない」


 勉強会の約束までするとマリエルは適当に会話をして寮に帰った。

忘れないうちにマリエルはグリファンとの会話を書き留めてルートの進捗を調べた。


「勉強会の約束が出来たらオーケーなのよね。次は勉強会でロチャードと会えれば良いんだけど、こればっかりは会えて無いから分かんないのよね」


 図書館に通い詰めればシークレットキャラの司書に会うことが出来る。

このシークレットキャラに会う方法は図書館に通う以外目立ったイベントが無いので最難関と言われていた。


「図書館に通えばイケメン司書に会えるのよね。まぁ会えるだけで何も無いからシナリオミスだと思うけど」


 マリエルはシークレットルートをコンプリートしていると思っているが実際はまだある。

さらにバッドエンドもルートの数だけ存在する。


「まずは勉強会のために分からない問題を用意しないと」


 そのあとに理解をしないといけないから適度な難しさが必要だがマリエルには、判断がつかない。

仕方なく次の試験範囲から問題を選ぶ。


「勉強会のあとにはグリファンと仲良くなるためにお菓子を渡すのよね」


 寮の部屋には簡単なものなら作れるように台所がある。

貴族の子どもが立つことは無いから家から連れてきた世話役が作るためのものだ。

ゲームの中では作るというミニゲームだが現実では、そう上手くはいかない。

お菓子を作るための小麦粉すら無いのだから不可能だ。


「ちょっと! 小麦粉も砂糖も無ければ作れないじゃない」


 かろうじて見つけたのは茶葉だけだ。

事前に申告すれば材料は届けてくれるがマリエルにそんな知識はない。

お菓子を作ることしか頭にないマリエルは、食堂に向かい材料を分けたもらうことを考えた。

厨房では忙しく仕込みの最中だったが、マリエルはお構い無しに話しかけた。


「すみません! 小麦粉と砂糖と卵をください」


「邪魔だ、邪魔だ」


「あとにしてくれ」


 誰も相手にしてくれないことに腹を立てて勝手に欲しいものを探して籠に詰める。

本当は咎められる所業だが忙しさから誰も注意しない。

さらに言えば邪険にしていてもマリエルは貴族令嬢だ。

機嫌を損ねてクビになりたくはない。


「あっ、このドライフルーツ美味しそう」


 お菓子の材料としては十分なくらいの食材を詰めると機嫌よくマリエルは厨房を後にした。

失敗することなく綺麗に作られたクッキーはバスケットに詰められた。

お菓子を作るのは得意だったらしくリキュール浸けのパウンドケーキなど様々なものが出来上がった。

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