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試験を受ける

 勉強も基礎しかできていないから次の試験範囲の内容がまったく出来ていないマリエルは話しかけても突き放さない男爵令嬢の二人に狙いを絞った。


「私はどうしても上のクラスに行かないといけないの。だから勉強教えて」


「マリエルさん、どうしても勉強したいなら職員室に行って先生に習った方が良いと思います」


「それはダメなの。ほら時間が勿体ないでしょ」


 教わるという態度ではないがマリエルの熱意に負けてしぶしぶ教えることになった。

男爵家であっても教育についてはマリエルより上になるから十分に教師役を務めることができる。


「・・・ちょっと待ってどうしてそうなるのよ。レピカ」


「この数式は新しい公式を使う方が早く解けるのです」


「待って待ってどうしてこの化合物ができるの? チュニカ」


「これは反応温度によって結合率が変わるので今回は低温のため通常より結合率が下がることからこの化合物になりますの」


 マリエルが思いのほか理解力に乏しく教えるのに時間がかかるということに辟易していたが伯爵家ということから無下にもできずレピカとチュニカは黙って従っていた。

クラスメイトはレピカとチュニカに同情して気づかれないように手を差し伸べていた。


「これでクラス替え試験で上にいけるのよね?」


「今よりは行けると思いますけど、お約束はできませんわ」


「あとはマリエルさんの頑張り次第ですもの」


 試験が明日と目前に迫ってマリエルは不安になったのか何度も確認をする。

卒業さえできれば良いということで集められたクラスでもマリエルよりは学力は上だった。


「間違えたところを重点的にすれば問題ありませんわ」


「明日は試験ですので食堂も早く終わりますわ。今から行かれたらどうかしら?」


「そうね、そうするわ。ありがとう、レピカ、チュニカ」


 試験のためということで夜通し付き合わされたくない二人はマリエルに単独行動をさせることに成功した。

会話が聞こえなくなるまで見送ってから大きく息をついた。


「ふぅ、疲れましたわ」


「これでクラスが変わりましたら解放されますわね」


「お疲れでしたわね、レピカさん、チュニカさん」


「「メザリアさま、ごきげんよう」」


「お二人が尽くしていたこと忘れませんわ」


「わたくしも父であるスヴェニダ公爵に素晴らしい方であることを手紙に書いておきましょう」


 男爵家が公爵家と侯爵家から直接、目をかけてもらえることは無く、よくあって伯爵家までだ。

それが分かっているから一歩引いた態度で接してきたが、ここに来て上位貴族の庇護を得たことになる。


「それにしても上のクラスに行きたいだなんて分不相応にもほどがあることでしたわね」


「ゴンゴニルド伯爵家は爵位こそ上がってはおりませんが歴史のある家ですもの。卒業くらいはできるのでなくて?」


「ハーメイナ様が何もおっしゃらないなら、わたくしたちも口を噤むことも吝かではありませんが」


「わたくしたちは寛容なのですよ。子どもの不調法くらい笑って受け流してしまうのが一番です」


 ハーメイナは身分と血筋から他国へ嫁ぐことが決まっているが身の安全のために自国内でも伏せられている。

下手に優秀であると判断されて他家に打診されても困るため問題のある令嬢だと思わせるためにこのクラスにいた。


「上のクラスの方は彼女を受け入れないでしょうね」


「そうね、皆さん立場を重視される方ばかりですもの」


「あの様子ではすぐに学力が足りなくなって退学になりそうですわね」


 マリエルに教えていたのも同じクラスになったということと公にできない事情を抱える者同士という連帯感というのがあった。

本当に問題があるのなら成績がどれだけ上位でもこのクラスに留まることになる。

ハーメイナがいい例だ。


「それよりもお聞きになりまして? アンネワーク様が今度は主演を務められるそうよ」


「まぁ園遊会でご披露なさるのは初めてですわね」


「楽しみですわね」


「どんな役をなさるのかしら?」


「お芝居には情熱を傾けられた方だもの。きっと素晴らしい劇になると思うわ」


 アンネワークの話にすっかり移り、マリエルのことはすっかり忘れられてしまった。

伯爵令嬢で第二王子の婚約者というだけで取り扱いに困る存在だがフーリオンが手綱を握っているから通常クラスにいた。

試験だけで言えば満点を出すのだから当然上位クラスの在籍になる。

その言動が突拍子もないことになっていても今のところは仕方ないの一言で許されていた。

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