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門前払いに会う

ここから、転生者メインで進みます

 制服を着た少女が学校の門の前に立って楽し気な笑みを浮かべていた。

小さなトランクだけで一泊旅行にでも行くような身軽さだが話題に上っていた編入生だ。

本当ならまだ編入日ではなく、二週間も先だが勝手に家を抜け出して学校にやって来た。


「ここが()の舞台ね。【トキメキ☆かくれんぼ~隠れたものを見つけ出せ~】の世界だって気づいたときには驚いたけどシークレットルートまでコンプリートした私なら逆ハーエンド激ムズも楽勝ね」


 トランクから真新しい手帳を取り出すと最初の方のページを読み出した。

細かい字でびっしりと書かれたそれは少女にとって学校生活を有意義に過ごすための必須アイテムだった。


「まさかシークレットルートを開くための最初の難関が編入日より早く学校に行くなんて誰も思わないもの。ゲームやり込んどいて本当に良かった」


 変わった子という表現では説明ができないほど言動が不可解だが本人のなかでは整合性が取れてしまっている。

編入日前に学校に来るというのは防犯の面からしても好ましくなかった。


「まずは守衛さんに挨拶っと」


 ゲームの世界であると信じており選択肢を間違えなければ必ず望みの通りに進むと思っている。

それは幸せなことなのかもしれない。

門を管理している守衛室へ向かい扉を叩いた。


「・・・はい」


「編入生のマリエルです!」


「編入生? 来月のはずだろ? 入学証明書は?」


「入学証明書? 届いていません」


 届いており父親であるゴンゴニルド伯爵が管理をして編入日に渡すつもりだったことを知らない。

編入日が決まっているのに前倒しで入ろうとする者もいないからマリエルの行動は異質だった。


「届いていない? 編入は来月だろう? 届いていないはずがない。帰って確認してみろ」


「でも・・・本当に届いていないんです」


「今まで一度だって入学証明書を持たない編入生に出会ったことはない。家に帰って確認をするように親に言ってくれ」


 扉を閉めて中に入ってこないように鍵までかけて門番は話を終わらせた。

門番として正しい仕事をしているがマリエルにとっては不服だった。


「えっ? どういうことよ。『仕方ないな』って言いながら理事長室に確認してくれるんじゃないの? 何か間違えたの?」


 書き綴った手帳を見返して何も間違ったことを言っていないことは確認できた。

それでも門番は学校の中に入れてくれないし、迎えも来ていない。


「門番のイベントが始まらないとシークレットルートに入れないじゃない」


 ゲームでも入学証明書は渡されないまま進むのでアイテムとして入手する方法を知る者もほとんどいない。

編入当日まで何度も父親と会話するというコマンドを選び続けると渡される幻のアイテムだった。

これがあれば最初からシークレットルートが発現しており比較的簡単にシークレットキャラに会える。

地道に頑張ってもシークレットルートに入れるからネットでもあまり出回らない情報だった。


「これじゃ逆ハーエンドイージーになっちゃう」


 逆ハーにも色々と種類があり比較的簡単に達成できるものがある。

さほど苦労することなく逆ハーを築くことができるから簡単なゲームと思われたがキャラの難易度が上がると攻略も難しくなった。


「確か誰とも出会わない場合は別のルートがあるんだっけ? やったことないけど」


 覚えている限りのことを書き出した手帳にもマリエルの疑問に答えることは書いていない。


「せっかく乙女ゲームに転生したのにモブで終わるなんて絶対嫌! 最低でも公爵夫人くらいにはなるんだから」


 このまま門番に言っても中には入れてもらえないし、何より問題児だとレッテルを貼られてしまえば王子たちに近づきにくくなると判断してマリエルは学校近くの宿に約束の日まで泊まることにした。

さすがに編入日なら入学証明書を持たなくても入れてもらえると考えてのことだった。


「そうと決まれば宿探しよ。確かイベントで使う宿が近くにあったはず」


 いくら小さいとはいえトランクを運ぶのは重労働だった。

誰かに手を貸してもらおうとするが人の気配もないから声もかけられない。

苦労して歩くと目的の宿が見えて来た。

トランクを運ぶ良いところのお嬢さんという風貌のマリエルを遠巻きに見る者はいても声をかけるような猛者はいなかった。

誰もが貴族の訳あり令嬢と関わり合いになって不興を買いたくはない。


「・・・・・・・・・えっ?」


「だから泊められないよ。帰っとくれ」


「どうしてよ!? 部屋なら空いてるんでしょ。鍵がたくさん壁にかかってるじゃない」


「鍵があろうとなかろうと関係ないね。うちは泊められない。他を当たっとくれ」


 部屋は空室なのに泊められないと一辺倒の女将に食い下がろうとするが相手にもしてくれない。

どれだけ言っても明確な答えはなく、マリエルは不機嫌さを隠すことなく募らせた。

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