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追跡と拠点サーチ

「カナル、心当たりがあるのか?」


 お兄様の問いに、カナルが戸惑う。私を見るカナルに頷いてみせた。このままではフィリーオ兄様に伏せたまま話すことは難しい。


「……はい、ヴィラリゾートの執事をしているジンドゥル・ヒュームです」


「執事?」


「表向きは。ジンの本業は……政府系の諜報員をやっているようです」


「マズイな……、異種間掛け合わせ技術は軍事用生物兵器として転用できる。この情報が裏で国に入ったら、国家間のパワーバランスが崩れて厄介なことになりかねない。二人とも、すぐに追いかけるよ?」


 お兄様が隣の島に戻るルートへ歩き出した。私やカナルも後へ続く。


「兄さん、それならトレーラーに戻りましょう。ジンの皮下組織にマイクロ型の発信器を埋めたので、すぐにトレース開始できます」


 早足で進むフィリーオ兄様は歩むペースを落とさず、「なるほど、僕が調査している間、下に降りて行ったのはソイツと会うためか」と、気づいてほしくなかった指摘をした。

 歩きながら「あ……」と呟き、カナルが私を見たので、『バカですか?』と無声音で返しておいた。これで『お叱り増量』が決定だ。


「そのとき、二人で行動したんだろ?」


 お兄様の質問に、カナルが「はい」と、元気なく答える。


「それならいい。一人だけで行動すると、トラブルに巻き込まれたときの選択肢が限定されて少なくなるからね。対処しきれず行き詰まりやすくなる。いい判断だ」


「はい」


 落ち込んでいたカナルは、お兄様の言葉で少し元気になったようだった。



*****



 トレーラーに戻ると、カナルが急いで次々と機器のスイッチを入れて、ジンの発信器のモニタリングを開始した。


「海上を北上してますね」


 カナルがモニターの地図上を移動するマーカーを指した。


「カナルさん、『テスの家』の候補地を」


「あぁ、そうですね。先回りして取り返すってことですか?」


「はい」


「わかりました」


 カナルがモニターの地図上に候補地をマッピングした。


「北上ということは、南側エリア候補地はなくなりますね」


 カナルがそう言いながら、南側エリアの候補地を地図から除外した。


「東側エリアの候補地もないです。東側エリアに最短で入る地点を通過してますから」


「そうですね……すると候補地は、通称『ルッコラ最北の地』だけになります」


 私の意見にカナルも同意した。


「では、ココから『ルッコラ最北の地』までのルートをフィリーオ兄様のナビゲーターパネルに転送してください。お兄様のバイクで行きます」


 そう言って、私の背後にいるお兄様の方を見ると、頷いてくれた。


「え!? トレーラーではなく?」


「トレーラーは目立ちますし、カナルさんの移動調整日は今日までですよね?」


「……はい」


「取り返すのは、お兄様と私でやります。終わったら、再度合流しますので」


「わかりました」


 行動方針が決定した。お兄様と私はジンを追うため、急いで準備をし、バイクに乗りこんだ。

 しばらく海岸沿いのルートをカナルのトレーラーと並走し、東側ルートへ行く分岐点で別れた。

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